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日本ユニセフ協会
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世界の子どもたち

西アフリカ・マリ
児童労働や早期婚
子ども時代を奪われた女の子たち

【2017年11月3日  マリ発】

ここは、西アフリカ・マリの金鉱。娘のダビーちゃんを背負いながら腰をかがめ、ヒョウタンで作った容器で川底の泥をすくい上げ、そっと選り分けているのは16歳のサイラさんです。「つらいことには慣れています」と彼女は言います。

金を探すために泥をかき集めるサイラさんの背中で、娘のダビーちゃんが眠っています。

©UNICEF/Eliane Luthi

金を探すために泥をかき集めるサイラさんの背中で、娘のダビーちゃんが眠っています。

14歳で結婚、母に

サイラさんが結婚したのはわずか14歳の時。その後、36歳の夫との間にすぐに子どもができました。この妊娠は、彼女にとってつらいものでした。妊娠が分かってから1カ月後、朝起きると、夫がいなくなっていることに気づいたのです。サイラさんの義父のウスマンさん(65歳)は、夫が赤道ギニアに働きに出たと教えてくれました。それ以来、サイラさんの夫からは何も連絡がない状態が続いています。

サイラさんは無事に出産し、赤ちゃんをダビーと名付けました。ダビーちゃんは病弱だと言います。

娘のダビーちゃんを抱えるサイラさん。14歳の時に結婚し、夫は仕事を探すためにマリを離れました。

©UNICEF/Eliane Luthi

娘のダビーちゃんを抱えるサイラさん。14歳の時に結婚し、夫は仕事を探すためにマリを離れました。

Kossaya村において、サイラさんのような境遇は珍しいものではありません。村の小学校管理委員会によると、女の子全員が18歳未満で結婚、あるいは結婚の約束を交わしています。幼い花嫁となった後、学校を修了する女の子はほとんどいません。

学校を辞めていく男の子も中にはいますが、貧困の問題、そして、伝統的な性別上の役割が根強いことから、娘たちの学校教育を続けさせるよう親たちを説得することは、とりわけ困難を伴います。また、娘を嫁に出せば、用意する食事が一人分減るうえ、家畜や家財といった結婚持参金(ダウリー)を受け取ることにもなります。

サイラさん一家の4人の子どものうち、今も学校に通っているのはたった1人の男の子です。残りの3人の女の子は全員、結婚あるいは労働に従事しています。

家事労働と金鉱での仕事

サイラさんがダビーちゃんを連れて金鉱に来るのは朝10時頃ですが、彼女の日々の労働は早朝から始まっています。まず、朝はたいてい日の出前に起床します。シャワーを浴びた後、家と中庭をほうきで掃除し、夫の家族に朝食を作ります。家事労働がすべて終わった後、ようやく彼女は仕事のために外に出ることができます。サイラさんと同じ場所で働く女の子も、家族が決めた20歳年上の男と結婚し、似たような境遇にあります。

金鉱での仕事に行く前に、サイラさんは早朝から家事労働もしています。

©UNICEF/Eliane Luthi

金鉱での仕事に行く前に、サイラさんは早朝から家事労働もしています。

サイラさんは、学校に通い続けられなかったことを、とても後悔しています。「私は学校が好きでした。学校はとてもいい所です」と彼女は残念そうに言います。サイラさんのかつての夢は、コミュニティ保健員になることでした。最寄りの保健センターは隣の村にしかありません。そのため、雨期になり道路が冠水してしまうと、センターまで行く手段がなく、家族は伝統医療や薬草に頼らなければならないのです。

サイラさんだけでなく、この地域に住む若い女の子たちは皆、同じような境遇に置かれています。

児童婚がもたらす影響

「早期婚には大きな問題があります」とKossayaにある小学校のサリフ・クーブ校長は説明します。「女の子たちは、とても幼くして嫁ぎます。時には、小学校2、3年生の子もいます。だから私は、各家庭を訪れ、両親に『娘たちには教育を受けさせなければならない』と説明しています。高校まで修了すべきだと理解してもらえるよう、取り組んでいます」

サリフ校長のように女子教育を推進しようとする人々は、途方もない課題と直面しています。マリでは、49%もの女の子が18歳になる前に結婚しています。多くの場合、結婚すると学校を辞めてしまうため、Kayas地域で初等教育を修了した女の子は12%しかいません。早期婚は、児童労働や幼い年齢での妊娠の問題とも直結しています。大部分にあたる89%の女の子はFGM(女性器切除)を受けています。

教育を受け続けられるように

サイラさんの父親は、村に高校があることを願っていました。たった1校でも高校があったなら、サイラさんの運命はおそらく違うものになっていたでしょう。しかし実際は、最寄りの高校に通うためには、隣町まで出なければなりませんでした。

ユニセフはKayesで、1万4,000以上もの教育キットを、退学のリスクにある子どもたちのもとへ届けています。また、学習机や椅子を備えたセンターをこの地域に60カ所設置し、サイラさんのような子どもたちが学校に戻る手助けをしています。翌年スムーズに公式な学校に戻れるよう、9か月間の特別プログラムが子どもたちのために準備されています。

しかし、こうした支援は決して十分ではありません。サイラさんのような子どもたちが、本当に子どもらしい日常を過ごせるようにすることは、私たちおとなの責任です。子どもらしい日常とは、金鉱で働くことではなく、学校生活をおくることなのです。

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