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日本ユニセフ協会
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ジェンダーに基づく暴力
女性3人に1人が身体的暴力の被害 必要なのは鍵、光、安全な住居

【2018年12月27日  東京発】

2018年は、世界において、女性と女の子への暴力に対する意識が高まった年でした。今年のノーベル平和賞を受賞したコンゴ民主共和国のドニ・ムクウェゲ医師とイラクのナディア・ムラド氏は、いずれも、紛争地域での女性に対する暴力を終わらせるために取り組んでいる活動家です。

女性3人に1人が身体的暴力の被害

Patience Dramuke (not real names), 15 years is a single mother of a 3 years old daughter and a victim of sexual violence mother. She is a potential beneficiary of the David Beckham fund that aims to increase girls' attendance in secondary school.

© UNICEF/UN0207370/Sibiloni

性的暴力を受け、母親になったウガンダの15歳の女の子。(2018年4月撮影)

ムクウェゲ医師の活動するコンゴ民主共和国では、希少金属など資源を巡る紛争が20年以上にわたって続いています。複数の武装勢力による活動が継続するとともに、性的暴力が意図的な紛争手段として利用されています。同国東部では、1996年以降、女性の3人に2人が性的暴力の被害に遭っているとも言われています。

イラクのクルド民族少数派ヤジディ教徒のムラド氏。2014年、「イスラム国」(IS)はイラク北西部のシンジャル山岳地帯の村々で暮らすヤジディ教徒を襲撃。7,000人以上の女性と子どもが戦闘員に捕らえられ、強制結婚や強姦、人身売買などの被害を受け、現在も、約3,000人の女性の安否が依然として不明のままだと言われています。

コンゴ民主共和国およびイラクで生じた女性への暴力は、氷山の一角に過ぎません。世界では、女性の3人に1人が身体的・性的暴力の被害者となり、 15-19歳の女の子1,500万人以上が強姦の被害に遭っています。

ジェンダーに基づく暴力の現状とユニセフの取り組み

ボコ・ハラムによる性的暴力を受け、1歳半の娘の母親となったナイジェリアの15歳の女の子。(2017年7月撮影)

© UNICEF/UN0118457/Sokhin

ボコ・ハラムによる性的暴力を受け、1歳半の娘の母親となったナイジェリアの15歳の女の子。(2017年7月撮影)

鍵。光。安全な住居。この3つは、緊急時において、女の子や女性への暴力の発生を防ぐことのできる手段です。脆弱性やストレスが高まる環境下で、安心という感覚をつくり出すことができます。

女性や女の子への暴力は、人種、宗教、文化、階級や国に関係なく起こります。世界では、女性の3人に1人が身体的・性的暴力の被害者となり、 15-19歳の女の子1,500万人以上が強姦の被害に遭っています。紛争や避難によって、この問題は深刻化する一方です。女の子や女性は支援を受ける手段や家を失い、安全でない環境下で新しい役割を与えられる中で、性的暴力、パートナー間暴力、児童婚、女性性器切除(FGM)や虐待を含む、ジェンダーに基づく暴力 (Gender Based Violence: GBV)に晒されるリスクが高まります。

緊急時において女の子と女性の安全を守るために、ユニセフがパートナーとともに実施している取り組みは以下の通りです:

1.女の子と女性の声を届ける最も重要なこと。女性と女の子はすべての取り組み・支援の中心でなければならない。 

2.専門家への照会

女性・ユース団体の意見を求め、ベストプラクティス及び根拠に基づいてプログラムを開発する。また、ジェンダーに基づく暴力を終わらせる上で中心的な役割を発揮できる男性や男の子にも、参加を促す。

 

3.暗闇をなくす

キャンプ内におけるすべての住居、トイレ、給水所や小道に電灯を設置し、性的暴力のリスクを下げる。

 

4.女性専用の安全な空間を確保

緊急時においては、大部分の公共スペースが男性や男の子で占められる。女性や女の子には、安全と感じられる場所が必要であり、女性や女の子がジェンダーに基づく暴力について秘密を保持した上で報告でき、情報を得られ、サポートを受けられ、ソーシャルネットワークを形成でき、自信を回復する機会を持てるようにする。

 

5.安全な場所をどこでも作れるように

最も弱い立場にある女性、結婚している若者、若年の母親、障がいを持った女性と女の子が、サービスを受けられる環境を整える。

 

6.ケースマネジメントのために、信頼できるパートナーシップを築く

ケースマネジメントによって、ジェンダーに基づく暴力の被害者にとって不可欠な支援を提供し、そのニーズを判断し、回復に向けた計画を作成する。

 

7.前線で活動する保健員に対する研修

保健員は、被害者を中心に据えたコミュニケーション・スキル及び強姦の臨床管理を含む、ジェンダーに基づく暴力の被害者をサポートするための研修を受ける。

 

8.鍵つきトイレの整備

すべてのトイレには、女性や女の子の安全を守るための鍵が必要であるとともに、男女別のトイレを整備する。

 

9.パートナーシップの拡大

市民社会のみならず、政府、ドナーや民間企業を巻き込み、新たな協働の方法を探り、規模を拡大する。これには、公的資金や民間資金などを組み合わせて、社会的課題に取り組むためのブレンドファイナンス(blended finance)の方法が含まれる。

 

10.安全な住居を建てる

女性や女の子は、薄い壁や、隣のテントとの距離の近さにより、住居におけるプライバシーを確保できないことが多い。住居は、女性や女の子が安全を守れる基準に沿って建てる。

 

11.衛生キットの供給

女性や女の子には、プライバシーと尊厳をもって生理を管理する権利がある。女性が考案した衛生キットには、生理用品、石けん、笛や電灯が含まれ、これは安全を守り、学校やその他の活動への参加を可能にするためのものである。

 

12.照会システムの構築

照会システムは、命を守り、秘密を保持した上での保健ケア、心理社会ケアなどのサポートを受ける手段を得、回復への道筋を確保するために必要である。

 

13.年齢に応じたリプロダクティブ・ヘルスのサービスを提供

性的暴行、HIVや性的感染症検査、その他の保健サービスを、若者に優しく受けやすい形式で提供する。

 

14.ライフスキル研修の提供

ライフスキル研修を通して、女性や思春期の少女が新しいものを生み出すリーダーとなり、市民活動に参加したり、ジェンダーに基づく暴力のリスクを減らすためのスキルを身に付けることができる。

 

15.緊急用の現金

女性や女の子の命が危険に晒されている場合、緊急用の現金によって、一時的な滞在先を確保し、命を守ることができる。

 

16.水と衛生活動における女性

水と衛生活動への女性と女の子の参加によって、安全やプライバシーへの不安やサービス改善策について意見を求めることができる。

 

* * *

世界で活動する人道支援機関として、ユニセフは、ジェンダーに基づく暴力を防止し、且つ終わらせることを目指し、緊急時と平常時双方において、リスクを減らし、被害者の命を守るためのサービスを提供しています。

ユニセフは、2017年、53カ国の女性と女の子360万人に支援を届けました。しかし、この問題の規模に対応するには、いまだ長い道のりが残されています。

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