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日本ユニセフ協会
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モーリタニア
ユニセフが支援するマリ難民キャンプで
心に響いた子どもたちの声 岡本啓史・教育担当官(JPO)の報告

【2019年2月27日  モーリタニアイスラム共和国発】

日本から約1万3,000km離れた、西アフリカのモーリタニア。2018年5月より、ユニセフ・モーリタニア事務所にJPOで派遣され、難民支援などに携わっている岡本啓史・教育担当官より、活動レポートが届きましたので、ご紹介します。

日本から遥か離れたモーリタニア(約13,000km)

日本とモーリタニアとは約1万3,000km離れています

日本から遠く離れた国、モーリタニア

モーリタニアという国を聞いたことがありますか?あまり聞いたことがないという人も多いかと思います。日本から遥か彼方の西アフリカにある開発途上国の一つです。

モーリタニアを意外と身近に感じる日本のスーパー

日本のスーパーで売られているモーリタニア産の真だこ。意外と身近です

モーリタニアのものを食べたことがありますか?おそらく多くの人に該当するかと思います。というのも、日本に輸入されるタコの約40%はこの国から来ています。

モーリタニアという国は日本人にとってあまり馴染みがありません。今回の記事では、同国の紹介や抱える問題、ユニセフの活動、そして難民キャンプの子どもたちの声を少しだけご紹介したいと思います。

モーリタニアについて

モーリタニア(正式にはモーリタニア・イスラム共和国)は、大西洋、セネガル、マリ、アルジェリアなどと国境を接する国で、国土の90%以上がサハラ砂漠に覆われた国です(とにかく砂、砂、砂だらけです)。公用語であるアラビア語やフランス語、その他の民族言語(Pulaar、Soninke、Wolof等)が広く使用されており、人口(約403万人[1])の多くは首都のヌアクショットに住んでいます(2039年迄には総人口は2倍に増加するといわれています)。

急速な都市化によって教育や保健、その他の社会保障制度などが圧迫され、子どもの権利や生活保障に影響を及ぼしています。また、同国は近年著しい経済成長を遂げ、これには日本の支援(タコやイカなどの海産物の輸入や開発支援、人道支援等)も大きく絡んでいます。ただ残念なことに、経済成長で得た利益は社会制度に均等に分配されないか、国の予算に十分に反映されていません。

焦点を女子に絞るだけでも色々な課題が見えてきます。例えば、人口増加により、これまで以上の女子の早期結婚のリスクが高まるとされています(2015年時点では、20-24歳の女性の35%以上が18歳になる前に結婚しており、15-19歳の15%以上が、15歳までに結婚しています)。早期結婚の原因は様々であり、貧困、十分な教育を受けていないこと(15-19歳の女子の42%以上が読み書きができない)や、文化や宗教的な背景等とされています。早期結婚は、早期妊娠や妊産婦死亡にもつながるとされています(妊産婦死亡率に関しては妊産婦10万人中の死亡数582と、世界でも182か国中162と、最も深刻な国の一つ)。15-19歳の過半数の女子(約63%[2])は女性性器切除(Female Genital Mutilation –FGM)を経ており、母性死亡につながる原因の一つともされています。

2つの人道支援ニーズ

難民キャンプの景色(約55,000人の難民が住む)

難民キャンプの景色(約55,000人の難民が住む)

上記で述べたことは、モーリタニアが直面する課題の一部にすぎません。現在、マリ難民支援と、干ばつによる子どもの栄養不良といった2つの人道支援が必要な状況にあり、これらはすでに脆弱な状態にある同国の子どもや女性に更なる打撃を与えているとされます。

マリ難民支援に関しては、2012年初めに勃発したマリ北部での紛争により、モーリタニアは数万人の難民を受け入れてきました。2019年1月時点では5万5,000人のマリ難民(うち子どもは3万1,000人以上)がモーリタニアの難民キャンプ「M’Berra(エムベラ)」で暮らしており、サヘル地域の中で最も多くマリ難民を受け入れている国の一つとなっています。マリ難民の流入は続き、最も脆弱な層が住むといわれている受け入れコミュニティの人口をも上回りました。また、難民とともに、マリからモーリタニアへ大規模な家畜の移動も起こっていることから、餌となる草地への負担も問題となっています。こうした草地は、頻繁に起こる干ばつ(近年では2017年と2018年)でさらなる被害を受け、受入コミュニティの生計までも脅かされるようになりました。

難民キャンプ訪問と子どもの声

私の業務のひとつが、難民キャンプにおける教育支援(マリのカリキュラムに沿った公式教育、識字クラスや職業訓練などの非公式教育)であるため、首都ヌアクショットから約1,400km離れた難民キャンプを訪問し、子どもたちと話をする機会がありました。

日本の支援を受けている難民キャンプM’berra

日本の支援を受けている難民キャンプM’berra

 難民キャンプで出会った子どもたちに、共通の質問をしました:「将来何になりたいですか?」

今回は難民キャンプ4か所で得られた回答をご紹介したいと思います。

(1) 識字クラスに通う男の子

識字クラスの少年

識字クラスに通う男の子

「読み書きができるようになって、良い人生を歩みたい。(具体的には?という問いに対して)先生になって、他の子どもたちに色々なことを教えたい。ここ(難民キャンプ)の生活は厳しいけど、諦めたくない。」

(2) 識字クラスに通う女の子

識字クラスの青年女子

識字クラスに通う女の子

「正直、将来何になりたいかはまだはっきりしていないけれど、家族を経済的にサポートしたい。そのためにも、読み書きや他のスキルを学ぶ必要があると思う。」

(3) サッカーをする難民の男の子たち

サッカーをする難民の男の子

サッカーをする難民の男の子たち

「メッシのようなプロのサッカー選手になりたい。そのためには、今のボールは数年使っていてボロボロになってきているので新しいサッカーボールが必要。メッシに必ずなるよ。メッシ!メッシ!メッシーーー!(私がその場所を離れる際、ひたすらメッシと叫んでいた子どもたち)。」

(4) 難民キャンプで暮らす若者たち

難民キャンプで暮らす若者たち

難民キャンプで暮らす若者たち

「俺たちは歌やダンスをするヒップホッパーになりたい。でもここではそういった学びや表現の機会に恵まれない。それでも何とか頑張りたい。」

心に響いた声を胸に、子どもたちの未来を支えていく

難民キャンプからの帰り道、彼ら彼女らの声が頭から離れませんでした。その時ふと、ネルソン・マンデラの名言を思い出しました。

「あなたが相手の理解する言葉で話したら、それは相手の頭に届く。あなたが相手の母国語で話したら、それは相手の心に響く。」

(If you talk to a man in a language he understands, that goes to his head. If you talk to him in his language, that goes to his heart)

今回ばかりは、母国語ではない言葉でコミュニケーションをとったにもかかわらず、彼ら彼女らの声は自分の心に十分響きました。世界中で、国を追われた人々の難民生活は平均26年間続く[3]という悲しい事実にもかかわらず、難民キャンプの子どもたちは諦めずに一生懸命生き抜こうとしています。ユニセフは今後も子どもたちの将来の可能性を広げるためのサポートを続けていきます。

 

難民キャンプM’berraの子どもたちと

難民キャンプM’berraの子どもたちと

モーリタニアの深刻で複雑な人道危機に対応し、子どもたちが、保健、栄養、水と衛生、保護、教育の支援を必要としています。7万7,000人以上の子どもたちに必要最低限のサービスを確保するため、ユニセフは2019年の活動資金として約1,050万米ドルを必要としています。

[データ出典]

[1] World Bank, 2016

[2] MICS, 2015

[3] UNHCR, Global Trends: Forced Displacement in 2015, 20 June 2016

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岡本啓史さんは、教師や教員養成トレーナーをしながら国際教育学の修士を取得後、UNESCOチリ・ラテンアメリカ・カリブ海地域教育局、在チリ日本大使館ならびにセーブ・ザ・チルドレンでの緊急人道支援・開発事業担当などを経て、2018年5月より、ユニセフ・モーリタニア国事務所で、JPO(教育担当官)として勤務しています。


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