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日本ユニセフ協会
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イエメン:「限りない情熱が、私の原動力」 すべての子どもに安全な水を届けたい
アルハジョマール専門官のストーリー

【2019年8月26日  イエメン発】

「赤ちゃんをお風呂に入れたいので、小さなプラスチックのタライをいただけますか?」

一人の女性が、私の耳元で控えめにささやきました。2018年6月、イエメンの紛争が悪化する中でのことです。

ホデイダの家を追われた避難民の女性でした。私は彼女の腕の中にいる生後1カ月の赤ちゃんを見つめました。とてもか弱く、穏やかで美しい顔つきの女の子でした。

赤ちゃんの体を洗えるよう、タライを提供すると、私は母親に約束をしました。

水は、生活や平和そのもの

私はイエメン国内にあるユニセフのサヌア事務所の「水と衛生専門官」として、この母親のように紛争から逃れてきた家族や、コレラの大流行などの公衆衛生危機への緊急対応を担当しています。

状況を注意深く見守りながら、必要な対応が取られているかの確認、プログラムの策定と実施、政府やNGOなどのパートナー団体との調整などを行い、他の分野(保健、栄養、教育、子どもの保護、啓発活動)に携わるスタッフとも協力して活動しています。

故郷のシリアを離れ、ユニセフ・イエメンで水と衛生専門官として活動するメイソンさん。

© UNICEF/Yemen/2019/Alhajomar

故郷のシリアを離れ、ユニセフ・イエメンで水と衛生専門官として活動するアルハジョマール専門官。

安全な水を手に入れられない、子どもと女性たち

初めてイエメンに来たとき、女性と子どもたちがきれいな水を手に入れるのにとても苦労していることを知りました。給水車がやってくる場所まで長い距離を歩いたうえ、手持ちの容器に水を汲むのにも長い時間待たなければなりませんでした。井戸から水を汲むことができない状況を目にして、とても悲しくなりました。

水は、生活や平和そのものであり、決して武器として利用されるべきではないと、ずっと信じてきました。どうすれば困っている家族がきれいな水にアクセスでき、尊厳を取り戻すことができるのかを考え始めました。

パートナー団体との協議を重ね、井戸に給水タンクをつなげて、蛇口も備えた貯水所を設置したところ、この支援が大きな変化を生み、この地域のすべての子どもと家族が、安全で簡単に水を手に入れられるようになりました。

この仕事の一番良いところは、支援を必要としている人たちに直接関われることです。各家庭を訪問し、困っていることを聞き、解決に向けて話し合ったりしています。

強い想いで、人道支援の仕事に

 私はシリア出身で、土木技師としてシリアでキャリアをスタートしました。シリア危機により首都アレッポでの戦闘が激しくなったとき、ユニセフの人道支援の仕事に応募することを決めました。

スナイパーがいる危険な地域を通り、他の街まで面接しに行かなくてはならなくても、この仕事こそが自分が本当に携わりたいことだと分かっていたので、躊躇することはありませんでした。何も私を止めることはできませんでした。ただ、隣にいた男性が銃撃されて、全速力で逃げたことは一生忘れることができないでしょう。とてもショックな経験でした。それでも、私の決心は揺らぎませんでした。

そして、ユニセフの水と衛生専門官になったのです。

サヌア事務所の5人の水と衛生チームメンバーのうち、女性はメイソンさんだけ。

© UNICEF/Yemen/2019/Alhajomar

サヌア事務所の5人の水と衛生チームメンバーのうち、女性はアルハジョマール専門官だけ。

人々のために、戦闘のなかで迫撃砲や流れ弾を避けながら働くことは、非常に恐怖もありましたが、厳しい状況でもシリアのために何かができることが嬉しく、誇りを持っていました。そうした日々の仕事を積み重ねるなかで、現地事務所から功績を認められ表彰も受けました。

シリアからイエメンへ、限りない情熱を胸に

2018年2月、シリアからイエメンの事務所に移りました。人生の分岐点となる決断でしたが、戦争で荒廃したアレッポで7年間暮らした経験が後押ししてくれました。

現在、水と衛生チームに所属する5人のメンバーの中で、女性は私だけです。女性の私がこのような厳しい仕事をしていると、他の人からたくさん質問されたり意見されたりします。

「女性では緊急時の仕事をまっとうできない」とか「男の仕事だ」とか「合理的になり、心じゃなく頭で判断して仕事をしなさい」といったことです。

でも今となっては、そうした言葉を笑顔で振り返ることができます。他人はいつも私の決心を変えようと説得を試みますが、より多くの子どもたちや女性を助けたいという限りない情熱が、私の原動力となり、現在の私に繋がっているのです。

水を汲むために給水車を待つ子どもたちとメイソンさん。

© UNICEF/Yemen/2019/Alhajomar

水を汲むために給水車を待つ子どもたちとアルハジョマール専門官。

イエメンでは、安全確保のため国連の敷地内にあるアパートの部屋を同僚とシェアしていて、不安定な治安情勢により移動は限られています。普段から自炊していますが、アレッポの家で母親が作ってくれるご飯を懐かしく思うときもあります。

女性だからできることも

仕事を始めたとき、今の自分の姿を想像することはできませんでした。女性の土木技師として働きキャリアを積んでいく中で、男性と一緒に仕事をしてきましたが、男性の上司や同僚と一緒に働くうえで困ったことはありません。

女性であることが、人々を支援するこの仕事に役立つこともあります。女性たちと関係を築き、よりよく関わっていくために、各家庭を訪問していますが、これはイエメンの文化においては、同じ女性である私だからできることです。

「私の夢は、下痢が原因で亡くなってしまう子どもや、汚染された水を飲まなければならない子どもがいなくなり、すべての子どもが自分の権利を手にすることです」

© UNICEF/Yemen/2019/Alhajomar

「私の夢は、下痢が原因で亡くなってしまう子どもや、汚染された水を飲まなければならない子どもがいなくなり、すべての子どもが自分の権利を手にすることです」(アルハジョマール専門官)

女性へのアドバイス、自分自身の夢

他の女性に何かアドバイスするとすれば、自尊心を高く持ち続けること。自分の真の可能性を信じて、常に一歩前に踏み出し、恐れに立ち向かうこと。あなた自身が人生を切り開いていく存在として、仕事や役割に忠実であること。自分の目標に集中し、不可能なことはないと自分自身に言い聞かること。火花のような情熱を失わず、心を込めて仕事をし、女性であることを喜び、母親、姉妹、娘としての自分の感情を決して隠すことなくいることで、いつか、他の人からお手本にされる人になれると思います。

イエメンでの私の夢は、下痢が原因で亡くなってしまう子どもや、汚染された水を飲まなければならない子どもがいなくなり、特に水と衛生に関わることにおいて、すべての子どもが自分の権利を手にすることです。

そのために、今日も懸命に努力をしています。

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空爆によって破壊された家の前に座るイエメンの子どもたち。(2019年7月撮影)

© UNICEF/UNI220712/Romenzi

空爆によって破壊された家の前に座るイエメンの子どもたち。(2019年7月撮影)

この記事を執筆したメイスーン・アルハジョマール専門官が活動するイエメンでは、2015年3月に激化した紛争が今なお続いており、現在、世界でも例を見ないほど大規模かつ深刻な人道危機となっています。国内の子どものほぼ全員にあたる1,230万人の子どもたちが、命と安全を脅かされています。

ユニセフは、子どもを守ることを使命とした国連機関として、混乱する紛争地にあっても、幼い命の確保を最優先に救援活動を続けています。

 


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