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日本ユニセフ協会
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世界の子どもたち

アフガニスタン
生まれてくる娘へ、お母さんからの手紙

【2021年5月7日  アフガニスタン発】

毎年5月、日本を含めた世界128カ国以上では、母の日が祝われます。

ユニセフ・アフガニスタン事務所の現地スタッフとして働くアリファ・オミッドさんは2児の男の子の母親。そしていま、お腹の中には3人目の赤ちゃんがいます。

女の子として生まれてくる赤ちゃんに、アリファさんが母として伝えたいメッセージを、手紙に込めました。

© UNICEF/Omid

アフガニスタン・ユニセフ事務所の現地スタッフとして働くアリファ・オミッドさん。

生まれてくる娘への手紙

わたしの愛する赤ちゃんへ。

まだ生まれていないあなただけど、その姿がどれほど可愛いか、私は知っています。黒い瞳、微笑む表情、ふわふわの茶色の髪、そして輝くハート。これまでずっと、私はあなたを授かることを夢見てきたのだから。

あなたを腕に抱いて、精一杯の愛情を注ぐ日が来ることを、指折り数えて待っています。お腹の中にいるあなたはまだ7カ月だけど、動いているのを感じます。「おてんば娘ね」と静かに微笑みながらね。

 

あなたがまだお腹の中にいなかった頃、あなたのお兄ちゃんたちの服を買いに市場に行ったとき、女の子のベビードレスを見つけたのよ。その場でしばらく立ち止まって、神さまにあなたを授けてください、って祈ったの。

そうして、どうしたと思う?そのベビードレスを買ったの。次に授かる子どもは、きっと女の子だと思ったから。ドレスを着て、アフガニスタンのお姫さまになったあなたを見るのが、待ち遠しくてしかたがないわ。

 

嬉しさと興奮の一方で、この国で女の子として生きていくあなたに、そしてあなたの将来に、不安を感じることもあります。

だけど、アフガニスタンの女の子たちが経験する悲しい話を聞くと、彼女たちがどれほど強いかということもわかります。だから怖がらないで。あなたもきっと強い人になるから。 

 

アフガニスタンは女の子にとって厳しい場所です。わずか2カ月前、私は女の子の赤ちゃんを出産したばかりの母親のことを知って、涙を流さずにはいられませんでした。

子どもの父親が、妻である母親を殺したというのです。産んだ子の性別が、女の子だったという理由で。

その父親は赤ちゃんを連れて逃げました。母親が受けた恐怖と苦しみは想像を絶するもので、本当にやりきれない気持ちになります。

医療設備のない自宅で出産することがどれほど大変なことか、私は知っています。そして、陣痛と出産に耐えた後、彼女は夫や親戚が祝福してくれるのを待っていたはず。けれど、彼女の夫は、祝福するどころか、その手で彼女を殺したのです。

赤ちゃんがどこにいるのか、生きているのか、誰にも分かりません。母乳を口にできず、赤ちゃんがどうやって生き延びられるのか、とても心配です。父親が赤ちゃんの世話をしているのか、あるいは、売ってしまったのかも分かりません。

 

© UNICEF/Omid

アリファ・オミッドさんの家族。2人の男の子たちも妹の誕生を心待ちにしている。

私たちの置かれた状況が、この家族とは違うことに、感謝しなければなりません。あなたのお父さんは、私があなたを愛するのと同じように、あなたのことを愛しています。そして、あなたの兄弟もあなたを愛しています。みんなで一緒に、あなたのことを守るからね。

 

あなたのお父さんと一緒に診療所にいって診てもらったとき、女医の先生が「男の子が欲しいですか?女の子ですか?」と私に聞いたの。

私が「女の子が欲しいです」と答えたら、先生は、「女の子を欲しがるお母さんは、あなたが初めてですよ」と言って、私の前に診察を受けていた妊婦の女性の話をしてくれました。遠方からはるばる来たその妊婦さんは、もし女の子を産んだら夫に捨てられ、夫は他の女性と結婚するだろう、と語ったそうです。

 

愛おしい赤ちゃん、私たちは、アフガニスタンで最も幸運な赤ちゃんと母親ね。

あなたに知ってもらいたいことがあります。それは、私の生きている時代が私の母の時代よりも恵まれているように、あなたが生きる時代は、私の時代よりも良くなるということです。

 

母は貧しい家庭で私を産んで、私たちには、家さえなかったの。

母が大学2年生のとき、あなたの叔父が生まれました。母は夢を叶えるために一生懸命努力していたけれど、授業に出続けることはできませんでした。自分の人生を犠牲にして私たちを育て、守ってくれたのです。

 

年月が経ち、私は母に感謝を伝える方法を思いついたの。

大学2年生になっていた私は、母が通っていた大学と高等教育省が発行した書類を探しまわって、1カ月かけてようやく見つけたの。そして、母が新たに私立の大学に入学できるよう、高等教育省から許可書を取り寄せました。

そして母の日、新しい大学の授業登録用紙をプレゼントとして手渡しました。母が、泣きながら笑っていた姿を、今も覚えています。

再び大学に通い始めた母は、わずか2年後に卒業証書を手にしました。私がどれほど母のことを誇りに思っているか、言葉では言い表せません。卒業の日、母は世界で最も幸せな女性でした。

 

だからね、赤ちゃん。

あなたのおばあちゃんは、あなたが希望を持ち、変化を信じていいという理由そのものなのよ。彼女のようなアフガニスタンの女性たちは、毎日、夢を実現するために困難に立ち向かっています。彼女たちは互いに力を合わせ、手を取り合って、一歩一歩前に進んでいます。

私がそうであったように、あなたもその伝統に加わってください。あなたと私はともに、より多くの女性たちが、自分たちの可能性に気づき未来を夢見られるよう、助けてあげられると思うのです。それが私の夢です。私が母の夢を実現したように、あなたも私の夢に命を吹き込んでくれるでしょう。

夜、あなたが体をくねらせて私を眠らせないようにするとき、私はそんな考えを巡らすの。

 

女性と男性が平等の権利を持つ未来のために、そして私が安心してあなたを学校に送り出せるような平和の実現のために、祈ります。あなたの健康と幸せを祈ります。そして何よりも、あなたが恐れず立ち向かい、勇気を持って行動することをいつも祈っています。

 

きっとそうなるはずよ。なぜって?

だってあなたはいずれ、私の肩の上に立つようになるから。*

ね、私の愛しい赤ちゃん。

 

愛を込めて。

あなたのお母さん、アリファ

 

* * *

 

* 補足:「巨人の肩の上に立つ(standing on the shoulders of Giants):先人の積み重ねた知識や知見を礎に、新たな発見が生まれ知が広がること」の比喩から

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