メニューをスキップ
日本ユニセフ協会
HOME > ニュースバックナンバー2019年 >

ユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」
映画『少女は夜明けに夢をみる』
試写会・トークイベントを開催しました

【2019年12月25日  東京発】

日本ユニセフ協会は10月29日(火)、映画『少女は夜明けに夢をみる』の試写会を東京都港区のユニセフハウスで開催しました。

©日本ユニセフ協会/2019

上映後のトークイベントの様子

子どもの権利条約が国連で採択されてから30年を迎える今年、日本ユニセフ協会は「子ども」を主題にした映画13作品を5月から12月にかけて連続上映する、ユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」と題したイベントを開催しました。第10回目となる10月29日は、「女の子・女性の権利」という視点から、イランの少女更生施設を舞台に、強盗、殺人、薬物といった罪に問われた少女たちに光をあてたドキュメンタリー『少女は夜明けに夢をみる』を上映しました。

本編上映前に、監督からのビデオメッセージを上映しました。また、上映後には、日本ユニセフ協会の林が聞き手となり、本作を配給されたノンデライコ代表の大澤一生さんより、映画や監督についてお話を伺いました。以下は、お話しいただいた内容の要約です。

 

少女たちの声にならない声を伝えたい

本作は、イランの10代の少女たちの更生施設を捉えたドキュメンタリーです。メヘルダード・オスコウイ監督に、先日来日いただきましたが、その際の監督のことばで印象に残ったものを一つ紹介したいと思います。

「少女たちの声にならない声を伝えるために、映画を作りました。この作品の少女たちの痛みは、おそらく世界共通、人類共通の痛みだと思います」

 

――作品では、オスコウイ監督も「声」としてひとりの登場人物になっていましたね。監督と少女たちの信頼関係がどのように築かれたのか、気になった方も多いのではないでしょうか。

©日本ユニセフ協会/2019

大澤一生さん

作中で監督の声が聞こえたりと、監督の存在感がありました。男性監督が、10代の少女たちの思いをここまで引き出せたのはなぜでしょうか。それはまず、監督自身も、人生を終わらせたいと思うような経験があったからこそ、少女たちの思いを聞くことができたということです。監督はまた、背景に家族からの虐待や、性被害がある少女たちに対し、自分自身のことや家族のことを話したそうです。自分自身のつらい経験を全て話したうえで、撮影に臨んだそうです。

 

――インタビューによると、監督は少女たちにこう話したそうですね。「私はあなたたちを撮影しにきたわけではありません。あなたたちと一緒に映画を作ろうと思ってやって来ました。ですから、あなたたちは、自由に何をしていてもいいですよ」と。

実際映画では、少女たちが撮影用のマイクに向かって話し出したり、彼女たち同士でインタビューをしてみたりと、積極的に映画の制作に関わってくる場面がありました。

 

「この子たちは私たちの国にもいる」

――監督は先月来日されていたと伺いましたが、どのような方なのでしょうか。

話し方がとても穏やかな方で、感情の機微を捉えられる方なんだと思います。先日来日した際、監督がファンであるという小津安二郎監督のお墓参りも一緒に行ってきました。

 

――小津監督の作品のファンである理由として「人間の内面性、魂を描くから」と監督はインタビューに答えていましたが、この作品も、同様の意味で少女たちの内面性を描いていますよね。

© Oskouei Film Production

『少女は夜明けに夢をみる』作中画像

「遠い国の物語だけれども、だんだん身近に感じてくる。こういう映画を作りたい」と監督は話していました。実際に、この映画は世界130カ国で上映されているそうなのですが、どの国で上映された時も、共通して聞こえてきた感想があったそうです:

「この子たちは私たちの国にもいる」

私は2017年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で初めて観ましたが、その時「この子たちを知っている(日本にもいる)」と実感しました。

 

――少女たちのその後について監督は知っているのでしょうか。

少女たちと関わるのは施設の中だけにしてほしいという制限の下、施設から本作の撮影許可が下りましたが、少女たちの何人かが、その後施設を通して監督に連絡してきたそうです。その中のひとりであるソマイエは、今大学に通っていて、監督とも交流が続いているそうです。父親を殺してしまったという過去を持つ彼女が、今こうして人生を進めていることに、少し希望が持てると思いました。監督の次回作は成人女性の更生施設に関するドキュメンタリーなのですが、ここでも彼女が出演しています。

最後に、この監督のことばを皆さんに伝えたいと思います。

「この施設にいる子たちは、声を上げたくても上げられない。そうした声を届けたいと思って作った。ぜひ彼女たちの声を、たくさんの人たちに届ける力になってほしい」

 

***

 

ご参加いただいた皆さまからも、多くのお声を頂戴しました。

・「自分の子どもは4人いて、1番下の子が唯一の女の子で16歳です。同じぐらいの女の子達の内容でショッキングな内容ではありましたが、見終えた今はこの中に娘が混じっていてもおかしくないと思えました」

・「胸が詰まる映画でした。家族からの虐待、性虐待、貧困、親の薬中毒、施設を出ても生きて幸せになれる希望はない、でも、映画の中の少女達を見ていると不思議と絶望感は感じなかった。少女達の中に「本当は生きたい」「本当は幸せになりたい」という思いがあることを少女たちの笑顔を見て感じました。父親を殺した少女が今は施設を出て、映画監督の力を借りて大学に進学したという話を聞きこの施設にいる全ての少女達の教育の道が開けてくると良いと思います」

・「男尊女卑の文化圏の少女達の可哀想なドキュメント、重いテーマと思っていましたが、10代の少女らしい元気な姿などもとらえていて、生き生きと描写しているのに救われる思いです。オスコウイ監督のエピソードを大澤さんご自身が語られるのもこの作品の理解を助けてくれました。少女一人ひとりが、絶望したり、歌ったり、赤ちゃんをあやしたりしながら時には「死にたい」と言いつつも、「生きたい」という感情がほとばしるのに心打たれました。何があっても生きようという姿に希望を感じます」

***

 

◇ユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」とは…

子どもの権利条約が採択されてから30年を迎えるにあたり、「子ども」を主題とした作品を5月~12月にかけて毎月連続で上映する日本ユニセフ協会主催の映画上映会です。「子どもたちの世界」を基調テーマに、「そもそも子どもとは?」「それでも生きていく子どもたち」「子どもを取り巻く世界」「女の子・女性の権利」という4つの視点から選んだドキュメンタリーとフィクション計13作品を上映しました。

※過去の上映報告についてはこちら

 

◇ 映画『少女は夜明けに夢をみる』

11月2日より、全国順次公開

監督:メヘルダード・オスコウイ

配給:ノンデライコ

2016年 / 76分/ イラン

映画公式ホームページはこちらから

シェアする


トップページへ先頭に戻る