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日本ユニセフ協会
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ネパール大地震からまもなく1年
幼い命と母親の希望をつないだ支援
妊産婦と赤ちゃんが安心して過ごせるように

【2016年4月4日  ネパール発】

ネパールを襲った大地震後にヌワコット郡で緊急支援活動を行い、現在はシンドゥーパルチョーク郡で支援活動にあたっているユニセフ・ネパール事務所のアビラシャ・グラン保健担当官による報告です。

* * *

偶然の再会

ユニセフが支援する避難所でアユシュくんを抱くグラン保健担当官と、母親のアヌジャさん。

© NEPHA

ユニセフが支援する避難所でアユシュくんを抱くグラン保健担当官と、母親のアヌジャさん。

私たちは日々たくさんの人と出会い、なかには、もう二度と会う機会が訪れないのだろうと感じることもあります。しかし、偶然の再会もあるのです。私はこの冬、ネパールのヌワコット郡にあるユニセフが支援する妊産婦のための避難所を訪れたとき、ある母親と思いもよらぬ再会を果たしました。

避難所を訪問するときはいつも、そこに身を寄せる人たちの健康状態や避難所の環境を確かめるため、避難している人たちと言葉を交わすようにしています。私は咳が止まらない様子の子どもを連れた一人の母親に話しかけました。その母親は、ここが2カ所目の避難所だと言います。この施設で十分に支援を受けられているかと尋ねると、母親は「この避難所に来ることができなかったら、息子は命を失っていたことでしょう」と即座に答えました。とても嬉しい言葉でした。私は彼女の話にじっと耳を傾けました。

小さな命を守った、緊急搬送の決断

母親の話を聞いているうちに、私はこの女性が、5カ月以上前に電話で話をしたアヌジャ・タマングさんだと気が付きました。

アヌジャさんはプライマリ・ヘルスケア・センターで男の子を出産した後、避難所に身を寄せていました。ある朝、その避難所の管理を担当している同僚から私に、1本の電話が入りました。肺炎の症状や黄疸がみられ、異常な泣き方をしている生後4日の赤ちゃんがいる、と知らせる電話でした。深刻な状態でした。

その上、母親のアヌジャさんは深い悲しみの中で気力も落ち、息子が回復するという希望すら失っていました。プライマリ・ヘルスケア・センターの医師の助言を受け、私たちはすぐに子どもと母親を、設備がより整った首都カトマンズの病院へ搬送することを決断しました。

ユニセフ・ネパール事務所に報告し、パートナー団体のスタッフに必要な手配を依頼しました。ユニセフはパートナー団体を通して交通費や滞在費などをサポートし、数時間以内に子どもと母親はカトマンズの病院に搬送されました。

2日後、私はカトマンズの病院に入院しているアヌジャさんに電話をかけました。アヌジャさんと実際に会話をするのは、これが初めてでした。母子ともに回復に向かっていることが分かり安心したと同時に、とても嬉しかったです。カトマンズに母親と子どもを緊急搬送するという決断と行動が適切だったと、証明されたのです。

そして今年の冬、目の前にいる女性がアヌジャさんだということが分かり、驚きと共に、その後が気がかりだったアヌジャさんとアユシュくんと直接会うことができ、とても嬉しく思いました。私はアユシュくんを腕に抱き、この小さな命が失われることがないよう懸命に力を尽くしたパートナー団体のスタッフに、感謝の気持ちを伝えました。

アヌジャさんは、ユニセフに心から感謝していると話します。「私と夫、息子をカトマンズの病院に連れてきてくれました。息子は7日間入院し、私は大学病院に9日間入院しました。私たちが一生働いても決して賄うことができない費用を支援してくださり、本当に感謝しています」

最も弱い立場に置かれた子どもと家族のために

ユニセフが支援する母親のための避難所で、受け取った家族用の衛生キットを見せる母親。

© UNICEF/NEPA2015-00056/Karki

ユニセフが支援する母親のための避難所で、家族用の衛生キットを受け取った母親たち。(ネパール)

深刻な状態のアユシュくんを連れて避難所に身を寄せていた時、アヌジャさんはもはや希望を失っていました。なぜなら、既に一度、赤ちゃんを失った経験があるからです。

アヌジャさんは16歳で日雇い労働者の夫と結婚しました。決して経済的に裕福だったわけではありませんが、幸せに暮らしていました。そして2014年8月にカトマンズの産科病院で男の赤ちゃんを出産しました。しかし病院から家に戻った後、赤ちゃんは高熱を出し、残念ながら2週間も経たずして命を落としてしまいました。それ以降、この経験がアヌジャさんの心に暗い影を落としています。

翌年、アヌジャさんは再び子どもを授かりました。そしてネパールをマグニチュード7.8の大地震が襲ったときは、妊娠後期でした。280万人の人々の生活に大きな影響を与えたこの地震で、アヌジャさんの自宅も破壊され、薄い防水シートで覆われた仮設の家での生活を強いられていました。

妊産婦健診のためにプライマリ・ヘルスケア・センターの近くを訪れた際に、アヌジャさんは、ユニセフが支援する、地震の影響を受けた女性や子どもたちのための緊急避難所について、知ったといいます。この避難所は妊産婦や新生児、5歳未満の子どもたちに安全でやさしい空間を提供するため、地震から1カ月後に設置され、24時間体制で訓練を受けた保健員が支援を行っています。

アヌジャさんは子どもを失いたくないという一心で、この避難所に身を寄せることに決めました。アユシュくんの病状が深刻になるにつれて希望を失いかけていたアヌジャさんでしたが、カトマンズの病院で必要とされる最善のケアを受けることができ、再び希望を取り戻しました。

私は、この日支援現場を後にするとき、ユニセフの子どもや母親を支える活動の一端を担えていることを、とても誇りに感じました。ネパールのこの小さな町で行われている活動と同じように、ユニセフは世界中で、子どもや母親に希望を与えているのですから。

 


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