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日本ユニセフ協会
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子どもに関する年次統計
ユニセフ『世界子供白書2016』発表
2030年までに6,900万人の乳幼児が命を落とすと指摘

【2016年6月28日  ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)が本日発表した『世界子供白書2016』は、世界が最も厳しい状況に置かれる子どもたちの窮状にもっと関心を向けなければ、次のような状況が引き起こされると指摘しています。

『現在の傾向に基づくと、持続可能な開発目標(SDGs)の到達年である2030年までに、6,900万人の5歳未満子どもたちが予防可能な原因のために亡くなり、1億6,700万人の子どもたちが貧困下で暮らし、7億5,000万人の子どもたちが児童婚をする』

『世界子供白書2016』発表

世界子供白書2016 THE STATE OF THE WORLD'S CHILDREN 2016

『THE STATE OF THE WORLD'S CHILDREN 2016』(世界子供白書2016 英語版)

ユニセフの年次の基幹報告書である『世界子供白書』は、ドナーが、ビジネス界が、国際組織が、子どもたちの必要とする支援の努力を強めなければ、世界で最も貧しい子どもたちが直面するであろう悲劇を描写しています。

「何百万人もの子どもたちの人生に公平な機会を提供できないということは、彼ら自身の将来を危うくするだけでなく、世代を超えて繰り返される不利な立場の連鎖の継続に油を注ぐことになるからです。それは彼らの社会の将来を危うくするのです」と、ユニセフ事務局長のアンソニー・レークは述べました。「私たちには、こうした子どもたちに今投資をするのか、あるいは、私たちの世界がより不公平で分断されたままにしておくのかの選択があるのです」

前進の一方、不公平や格差も

食事をする親子。5歳の男の子(右端)は栄養不良と診断された。母親は基本的な食糧を手に入れることができていない。(バングラデシュ)

© UNICEF/UN016328/Gilbertson VII Photo

食事をする親子。5歳の男の子(右端)は栄養不良と診断された。母親は基本的な食糧を手に入れることができていない。(バングラデシュ)

本白書は、子どもたちの就学や、貧困からの脱却など、子どもたちの生活を支える大きな進歩があったことを記しています。5歳未満児死亡率は、世界的には1990年から半分以下となり、129カ国で男女が同等に学校に通うようになりました。また、世界の極度の貧困に苦しむ人の数は1990年代の半数程度に減少しています。

一方で、本白書は、この進歩は平等でも公正でもないとも指摘しています。最も貧しい子どもたちは、最も裕福な子どもたちと比較すると5歳の誕生日を迎えずに亡くなる可能性は2倍に上り、さらには慢性的な栄養不良に陥りやすい状況です。南アジアやサハラ以南のアフリカの大半では、教育を受けていない母親のもとに生まれた子どもたちは、中等教育を修了した母親のもとに生まれた子どもに比べると5歳未満で亡くなる可能性は3倍に上ります。そして、最も貧しい世帯の女の子は、最も裕福な世帯の女の子と比較すると、幼くして結婚する割合は2倍になります。

厳しい状況に置かれるサハラ以南のアフリカ

仕事をしているため学校に通うことができない国内避難民の男の子。(ナイジェリア)

© UNICEF/UN016294/Gilbertson VII Photo

仕事をしているため学校に通うことができない国内避難民の男の子。(ナイジェリア)

サハラ以南のアフリカほど、厳しい状況の地域は他にはありません。その地域では少なくとも2億4,700万人、あるいは3人に2人が多元的な貧困の中で暮らし、生存や成長に必要なものをはく奪されています。人口の中で最も貧しい5分の1の層の20歳~24歳の若者をみると、60%が4年以下しか学校に通っていません。この傾向が継続すると、2030年までにサハラ以南のアフリカは以下のようになると同白書は予測しています。

  • 2030年までに、予防可能な原因で5歳の誕生日を迎える前に亡くなる子ども6,900万人の約半分がこの地域に暮らす。
  • 小学校に通えない小学校就学年齢の子ども6,000万人の、半分以上がこの地域にいる。
  • 極度の貧困の中で暮らす子どもの10人中9人が、この地域の子どもである。

学校を終えても、読み書きができない子どもも

教育は、子どもたちに公平な機会を与えるのに重要な役割を果たしていますが、2011年以降、学校に行ってない子どもの数は増加しており、学校に通っている子どもの相当な割合が学習していません。

今日、1億2,400万人の子どもたちが小学校や中学校に行っておらず、学校を終えたほぼ5人に2人は読んだり、書いたり、簡単な算数をすることができません。

子どもへの投資が、国や地域の長期的な利点に

小学校に通う、障がいのある3年生の女の子(セルビア)。

© UNICEF/UN016256/Gilbertson VII Photo

小学校に通う、障がいのある3年生の女の子(セルビア)。

本白書では、最も脆弱な子どもたちへの投資が、直ちにおよび長期的に利点を生み出すことを証明しています。例えば、現金給付は、子どもたちが学校に長く通うことや、次のレベルの教育課程への進学に役立っていることが示されています。平均すると、子どもが教育を受ける期間が1年延びるごとに、彼らがおとなになってからの収入が約10パーセント増加します。また、国の若者による学校教育履修期間の平均が1年長くなるごとに、その国の貧困率は9パーセント低下します。

不公平は、避けられないものではなく、克服できないものでもない、と同白書は訴えます。最も脆弱な子どもたちに関するより正確で有益なデータや、子どもたちが直面する問題に対する総合的な解決策、以前からある問題を是正する革新的な方法、もっと平等な投資、コミュニティの参加促進などの対策が、子どもたちに公平な機会を与える助けとなるのです。

 

※世界子供白書2016の日本語版は、本年8月末に当協会より発行予定です。

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