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日本ユニセフ協会
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世界の子どもたち

ブルンジ 
刑務所に収容されていた子どもたち
再教育センターで社会復帰の道へ

【2016年7月28日  ルモンジュ(ブルンジ)発】

ブルンジでは刑事告発された子どもたちは、刑務所に送られ、おとなと一緒に収容されます。刑務所での経験は、子どもたちにとって恐ろしく、トラウマとなる可能性もあります。しかし、再教育センターの設立により、若者は安全な環境で、カウンセリングや教育の機会、そして進行中の裁判に関する司法サービスを受けられるようになりました。

刑務所で過ごした恐怖と空腹の日々

自分でペイントしたドラムを手にするイブさん(仮名)。おとな用の刑務所で2年間過ごしたが、今は、ルモンジュ再教育センターでドラム奏者たちのリーダーを務める。

© UNICEF Burundi/2016/Haro

自分でペイントしたドラムを手にするイブさん(仮名)。おとな用の刑務所で2年間過ごしたが、今は、ルモンジュ再教育センターでドラム奏者たちのリーダーを務める。

「昔は、王様のためにドラムを叩いていました。ドラムはブルンジを代表する文化です」とイブさん(17歳)は言います。ドラム奏者たちを率いて新しい曲を演奏するイブさんの姿からは、かつて彼が2年以上にもわたり、ブルンジ最大で最も混雑したムピムバ(Mpimba)刑務所で過ごしたとは、誰も想像できません。孤児のイブさんは、本人の意思に反して、性的暴力の罪の疑いをかけられ収容されました。刑務所では、おとなと一緒に過ごす恐怖を味わい、常に空腹状態に置かれてきました。

「毎日米と数グラムの豆しか与えられませんでした」刑務所での日々を思い出すと、イブさんは恐怖で身震いしてしまいます。彼はルモンジュ再教育センターで生活を送る、裁判の過程にある子どもの一人です。湖畔の町ルモンジュの郊外に位置するこのセンターは、ブルンジのおとなの刑務所に収容されていた15歳から17歳の若者を受け入れています。ルモンジュ再教育センターは、ブルンジ東部のルイジ(Ruyigi)にある姉妹センターとともに、ブルンジでユニセフが行う司法分野での活動において、重要な位置を占めています。この活動は、子どもたちがおとなと同じ刑務所に決して送られないようにすることを、目的としています。

子どもたちにセカンド・チャンスを

ルモンジュ再教育センター。刑務所に収容されていた15歳から17歳の若者を受け入れている。

© UNICEF Burundi/2016/Haro

ルモンジュ再教育センター。刑務所に収容されていた15歳から17歳の若者を受け入れている。

「刑務所とは、本質的には処罰のためにあります。しかし、未成年が罪を犯したからといって、社会から拒絶されることがあってはなりません。これらの再教育センターは、罪に問われた子どもたちにセカンド・チャンスを提供しています。再び教育の機会を提供し、社会に戻れるように支援しています」と、ユニセフの子どもの保護専門官アリン・キカ・ニヨンクルは語ります。

2つのセンターは2015年に社会政治的危機が発生する2日前に開設され、ブルンジの11の刑務所に収容されていたすべての男の子はこの二つのセンターに移管されました。このことは、子どもの権利の実現に向けた重要かつ画期的な道標となりました。

しかし、危機と政治不安の影響で多くの人々が逮捕され、センターは新たな重要な任務を負うこととなりました。

2015年4月以降、300人以上の子どもたちが、「武装勢力への参加」や「デモへの関与」などの危機に関連した犯罪容疑で逮捕および拘留され、その多くがおとな用の刑務所に送られました。

ユニセフが、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)やNGOなどのパートナー団体と協力し、継続的なアドボカシー活動を展開したことで、100人以上の子どもたちが釈放され、安全が確保され、家族の待つ家に戻ることができました。他の子どもたちも、再教育センターで保護され、裁判所の決定を待っています。2016年6月だけでも、ユニセフとパートナー団体は60人の男の子を刑務所から釈放し、一時的保護施設に移すことができました。

意志を高く保つ

ブルンジの伝統的なボードゲームのウルブグゾで遊ぶシリルさん(仮名)。センターでの暮らしは心地よいが、自宅に戻ることを夢見ている。

© UNICEF Burundi/2016/Haro

ブルンジの伝統的なボードゲームのウルブグゾで遊ぶシリルさん(仮名)。センターでの暮らしは心地よいが、自宅に戻ることを夢見ている。

ルモンジュ・センターには、大きな窓とスポーツや遊びのための広く解放的な空間があり、逮捕や拘留のトラウマを抱える子どもたちに、明るく心地よい環境を提供しています。子どもたちは、午前中はカウンセリングを受けたり、掃除などをして過ごし、午後はサッカーやバレーで遊びます。数週間後には職業訓練も始まります。ここで暮らす子どもたちは、自分に関わる裁判に関して、法的サービスを利用することもできます。

イブさんは現在、ドラムを演奏するグループのリーダーとして、大好きな2つの曲を歌いながら演奏しています。一曲はブルンジの美しさについての曲で、もうひとつはヴィヴィアンという名前の若い女性についての曲です。「私たちはこの施設にいる子どもたちみんなが楽しくなれるよう、ドラムを演奏しています」とイブさんは語りました。

「ブルンジ、ブルンジ、君は子牛のように美しい」ドラム奏者たちが、声を合わせて歌います。

イブさんのセンターでの新しい人生は、刑務所での経験から遠くかけ離れています。「今では、まともなベッドで寝て、十分に食べることができます。食べ物はキャッサバだけではなく、いろんなものがあります。」

シリルさん(16歳)もイブさんと同じ気持ちです。シリルさんは、ムサガ(Musaga)で家事使用人として働いていましたが、雇用主に未払いの給与を要求したところ、重い罪に問われ逮捕されました。

「ここはまるで自分の家のようです。友達もいるし、ゲームで遊ぶことも、勉強もできます」とシリアさんは微笑みながら語ります。

イブさん同様、シリルさんもブルンジの伝統を楽しんでいます。ウルブグゾ(urbuguzo)というブルンジの伝統的なボードゲームを、物心ついた時から遊んでいます。

「私の夢はギテガ(Gitega)の自宅に戻り、両親の農作業を手伝うことです。そして、第二の専門的職業も身に着けたいです」とシリル君は語りました。

イノベーションを学ぶ

デジタル・キオスクでパソコンの画面に見入る男の子。子どもたちはICTや数学について学ぶことができる。

© UNICEF Burundi/2016/Haro

デジタル・キオスクでパソコンの画面に見入る男の子。子どもたちはICTや数学について学ぶことができる。

拘留を経験した子どもたちの多くは、長い期間、学ぶ機会から遠ざけられてきました。ルモンジュ・センターには“デジタル・キオスク”と呼ばれる、子どもたちが利用できる太陽光発電のパソコン設備があり、インターネット回線なしでも、ICTや数学、識字について学ぶことができます。

子どもたちの多くは、自宅に戻るとコミュニティから疎外され、差別を受けることがよくあります。2015年11月に設置されたデジタル・キオスクは、子どもたちに、さらなる学びの機会を与え、好奇心を刺激し、将来の雇用の可能性を広げています。

運営を開始して1年が経ち、センターの効果は表れています。ルモンジュ・センターは拘留や法的問題を経験した221人の子どもたちを支援してきました。そのうちの多くの子どもたちは、逮捕や拘留時におとなから虐待を受けています。これまでの再犯ケースはわずか2件です。

「このセンターの子どもたちの将来はとても明るい」と開設時からセンター長を務めるジーン・ニヨンガボさんは話します。

「ここでは、自由を感じることができます。僕はいつか技術者になりたいです」と、ブルンジの旗を自分でペイントしたドラムの横に立って、イブさんは語ります。

 

※文章中の子どもたちの名前は仮名です。

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