【2016年8月29日 中央アフリカ共和国発】
(c)UNICEF/Donaig Le Du |
推定1万人もの18歳以下で武装勢力に徴用された子どもたち。ユニセフ・中央アフリカ共和国事務所は、武装勢力による激しい内戦の中、子どもたちの解放とその後のケアを行っています。ユニセフ・中央アフリカ共和国事務所の小川亮子・子どもの保護専門官からの報告です。
中央アフリカ共和国では雨季にあたる8月。たくさんの雨が降った8月15日、バンギ北部のドン・ボスコと呼ばれるカトリック系職業訓練校に行ってきました。いまだ雨が降りやまない中、「参加者は集まるのだろうか…」と心配して向かったところ、雨をもろともせず、青い制服やお揃いのTシャツを来た生徒たちが次々と集まってきました。
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この職業訓練校は、紛争の際に武装勢力に徴用されていた、元子ども兵士たちが、地元の子どもに混ざって様々な実践的知識や技術を身に着け暮らしていけるよう、ユニセフとそのパートナー団体が協働して運営しています。8月15日は、6か月から1年に亘る職業訓練課程を履修していた約200人の子どもたちの修了式でした。
「自動車運転・修理」「ICT(情報通信技術)」「農業」「建築技術」「家具作り」「メカニック」「洋裁」と様々な課程を履修した生徒たちは、誇らしげにどういったことを学んできたのか、私たちユニセフスタッフに語ってくれました。「シンギラ!」(中央アフリカの言葉サンゴ語で「ありがとう」)と口々に言う子どもたちは、胸を張って嬉しそうに笑ってくれました。修了式で一人ひとりに配布された彼らがこれから使っていく物資(ミシン、シャベル、工具等)を誇らしげに掲げる子どもたちの大多数にとって、課程修了書は、これまでの人生で受け取ったことのない勲章のようなものなのだろうと感じました。
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ユニセフ・中央アフリカ共和国事務所は、2013年から続く武装勢力による全土の一般住民を巻き込んだ激しい内戦の中、武装勢力に使われていた子どもたちの解放とその後のケアを行ってきました。推定1万人もの18歳以下で武装勢力に徴用された子どもたち。自分の村を焼かれ、お父さん、お母さんを目の前で殺されるなどし、復讐を胸に自ら志願して武装勢力に入った子、誘拐されるなどして強制された子と、徴用の過程は様々です。彼らは兵士として小間使いやスパイとして戦闘や略奪に加担させられたり、女の子の場合は将校や兵士の「妻」として性的搾取を受けるなど、私たちが想像することすら難しい凄惨な暴力を目撃し、あるいは強制されてきました。多くがティーンエイジャーの世代の子どもたちは、解放された後も社会心理ケアや家族との再統合等の丁寧なケアを長期に亘り必要としています。更に学校に戻ったり経済的に自立する術を得ることができなければ、ストリートチルドレンになるなどしてまた搾取に晒されることになります。
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こういった子どもたちを支える勇気ある大人たちもいます。家族が殺害されてしまったり、行方がわからない子どもたちを、自らの家族に受け入れることを進んで申し出て、「ホストファミリー」となった家族を訪ねました。
自らもNGOで働き精力的に子どもたちに関わる女性は、中央アフリカ北西部のボゾウムから来た少年(当時16歳)を引き取ることに決めました。両親を武装組織セレカに殺害され、敵対するアンチ・バラカに入った少年は、組織内での争いや暴力に恐怖を覚え、命からがら逃げてきたところをユニセフの支援によってケアを受けることになりました。彼を家庭に受け入れた女性は、当初「元子ども兵士」を受け入れることに地域の人に批判されたこともあったと振り返ります。「でも、ご覧のとおり、この子は今までに何の問題も起こしたことがないですよ」と、女性は笑いました。洋裁コースを修了し、仕事道具のミシンを得た少年は、いつか小さな店を構えたいという夢を語ってくれました。
更に、武装勢力から解放され、職業訓練を受けた18歳になる女の子を受け入れたご夫婦のお話も聞きました。この家庭は自らも紛争の際に家を破壊され、大変な被害を受けました。今は旦那さんが退職をし、日々の生活費にも困る毎日ですが、それでも、家族を武装勢力に殺され、たった一人で取り残された女の子を放っておけなかったと言います。「子どもがひとりで泣くのを誰が放っておけるでしょうか?それは神の御心に背きます」。ICTのコースを修了した女の子は、自分にまた家族が出来て嬉しい、と小さな声で教えてくれました。そして、これから少しでも家庭に貢献できるようにしたいと少し恥ずかしそうに語ってくれました。
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(c)UNICEF/CAR/2016 |
小川さんは、民間企業に勤務後渡英して国際開発及び教育の修士を取得。在タジキスタン日本大使館ならびに外務省での緊急人道支援・開発事業担当を経て、2014年2月よりユニセフ・中央アフリカ共和国事務所で、子どもの保護専門官として勤務しています。
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