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日本ユニセフ協会
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子どもたちとともに成長する「まち」
5年目の「子どものまち・いしのまき」
福祉サービスの資金を確保するには?
今年は警察や裁判所も登場

【2016年10月2日  石巻発】

第5回「子どものまち・いしのまき」が、今年も、石卷市の橋通り周辺の商店街を舞台に開催されました。子どもたちが考え、やりたいことを実現するまち「子どものまち」。日本ユニセフ協会は、2012年の第1回からこの取り組みをサポートしています。

直前まで予想されていた雨天が嘘のように晴れ渡った10月最初の週末、石巻の子どもたちは、思い思いのお店を出店し、憧れの職業を経験し、売り上げや仕事を通じて得た給料でお買い物をしたり、様々な遊びを経験したりと、「やりたい!」ことを思いきり楽しみました。遠足や運動会などの秋の行事が目白押しだった週末でしたが、それでも2日間で、のべ1,300人もの方々が参加しました。

成長を続ける「子どものまち」

5年目を迎えた「子どものまち・いしのまき」 天候にも恵まれ、2日間でのべ1,300人が参加しました。

© 日本ユニセフ協会

5年目を迎えた「子どものまち・いしのまき」 天候にも恵まれ、2日間でのべ1,300人が参加しました。

「子どものまち」は、2日間だけの“お祭り”ではありません。子どもたちは、ほぼ通年にわたってその準備に取り組みます。このプロセスも、日本ユニセフ協会が「子どもにやさしい復興計画」というテーマの元で、東北3県で様々な形で支援してきた活動の重要な側面の一つです

子どもたちは、今年、例年より早い3月に第一回子ども会議を開催。毎年参加している子も多く、前年の反省はもちろん、全国各地で開催されている他の「子どものまち」の研究にも取り組むなど、子どもたちの新しい発想で、まちの仕組みもどんどん変わってきています。例えば、今年はじめて、「税金」の仕組みが導入されました。各店舗が1日の売り上げを銀行に預ける前に、一定の税金を納める仕組みです。「子どもカジノ」や「銀行強盗」などの案が出され同席したおとなを慌てさせましたが、子どもたちは「警察官」や「裁判所」の開設のアイディアも出し、最終的に全てのアイディアが導入されることが決められました。

そして当日。カジノと銀行の間でトラブルが発生し裁判が行われたり、カジノの存在に苦言するおとなに対応したりと、子どもたちは、おとなの世界で実際に起きているような“現実”に直面。さらに、小さな年齢の子どもたちを預かって一緒に遊ぶ「子ども園」では、公共サービスであるがゆえに“売上げ”が発生しないため、子どもたちはその運営に頭を悩ませました。税金を使って運営する案も出ましたが、最終的には「マキー募金活動」が展開され、全店舗の中でも上位の“売上げ”を得る結果になりました。「職業体験で得た給料で物を買う」というとてもシンプルな形でスタートした取り組みですが、5年を経て、子どもたち自身が悩み葛藤し、時におとなの助けを借りて様々な工夫をしながら、子どもたち自身のイニシアティブでより複雑な仕組みが導入され、実際の社会を反映させた「まち」が作られるようになっています。

地域に根差した取り組みに

子どもたちは「ハローワーク」でお仕事を探します。給与や買い物に使われる「子どものまち」の通貨は、カラフルな色に塗られた石。「マキー」と呼ばれます。石巻(いしのまき)だから「石のマキー」・・・ということだそうです。

© 日本ユニセフ協会

子どもたちは「ハローワーク」でお仕事を探します。給与や買い物に使われる「子どものまち」の通貨は、カラフルな色に塗られた石。「マキー」と呼ばれます。石巻(いしのまき)だから「石のマキー」・・・ということだそうです。

運営に関わる「おとな」にも変化が生まれています。5年前、子どもたちのおじいさん、おばあさんにあたる地元の人たちで震災後に組織された「子どものための石巻市民会議」のもと、当時石巻に拠点を置いていた多くの支援団体の協力によりはじまった「子どものまち・いしのまき」。その後、支援団体の多くが活動を終了する中、昨年は、石巻市内で「遊び場」事業を展開する団体「プレーワーカーズ」のプレーリーダーが事務局を担い、そして今年は、2013年に石巻市中心部に開設された児童館「石巻市子どもセンターらいつ」の職員の方々も加わり、地元で働く若い方々が実行委員会の中心的な役割を担われるようになりました。また、第1回「子どものまち・いしのまき」に参加し、仙台や石巻で大学生活を送るようになった“子どもたち”も、運営のサポートとして参加し始めています。

6年目に向けて

「子どものまち」には、今年も、おとなが企画した「おとなブース」が登場。日本ユニセフ協会と宮城県ユニセフ協会は、仙台空港の国際線税関検査室場に置いている募金箱から回収した諸外国のコインを国ごとに仕分けをするお仕事を“出店”しました。普段は、宮城県ユニセフ協会の方々や協力企業の方々などがボランティアでやってくださっている作業です。参加してくれた子どもたちは、初めて見るたくさんの外国コインを珍しげに眺めながら、熱心に仕分け作業に取り組んでくれました。

© 日本ユニセフ協会

「子どものまち」には、今年も、おとなが企画した「おとなブース」が登場。日本ユニセフ協会と宮城県ユニセフ協会は、仙台空港の国際線税関検査室場に置いている募金箱から回収した諸外国のコインを国ごとに仕分けをするお仕事を“出店”しました。普段は、宮城県ユニセフ協会の方々や協力企業の方々などがボランティアでやってくださっている作業です。参加してくれた子どもたちは、初めて見るたくさんの外国コインを珍しげに眺めながら、熱心に仕分け作業に取り組んでくれました。

本年末で東日本大震災緊急復興支援活動を終了する日本ユニセフ協会にとって、「子どものまち・いしのまき」へのサポートも今年が最後になりました。この5年間に蓄積された経験を来年以降の取り組みに活かせるよう、今回参加された方々を対象にしたアンケートも実施しました。その一部をご紹介します。

"子どもたちが「やりたい!」と目を輝かせてお仕事をしに来る様子はとても嬉しい反面、もしかしたら普段「やりたい!」ことが思い切りできない場面もあるかもしれないことを考えると、「子どものまち・いしのまき」という子どもたちが作り、子どもたちが思いっきりやりたいことができる環境があることはとても意味のあることだと思う"(学生ボランティア)

"全国に「子どものまち」はたくさん開催されていて、たくさんの形があるが、石巻では、おとなを排除していないカタチ。だからこそ、親子で体験できる場もたくさんあるが、反面、どこまで子どもたちに任せ、おとながどうかかわるかのバランスがとても難しい。これからも考えていく必要があると思う"(実行委員会メンバー)

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