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日本ユニセフ協会
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ユニセフ親善大使マズーン・メレハンさん
ユニセフハウス訪問
教育の大切さを訴える

【2019年4月8日  東京発】

2019年3月、ユニセフ親善大使のマズーン・メレハン大使がユニセフハウスを訪問し、シリア難民としての体験や教育活動家としての経験を語りました。

マズーン・メレハン ユニセフ親善大使
安全な暮らしが一変した日

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© 日本ユニセフ協会/2019

ユニセフハウスでスピーチをするマズーン・メレハン ユニセフ親善大使

シリアで私は、普通の子どもとして、普通の生活を送っていました。ここにいる皆さんと同じように、安全に暮らしていたのです。学校に通うこと、家族と暮らすこと、たまに親せきを訪ねること。こうしたことはすべて、私の人生において当たり前のことでした。

2011年、シリアで紛争が勃発し、それまでの生活が一変しました。普通の暮らしができなくなり、いつも恐怖に怯えなくてはなりませんでした。

2013年、私たちはシリアを離れて難民キャンプへ行くことを決意しました。正直言うと、この時が私の人生で最も辛い時でした。自分の国であるシリアを愛していたので、たとえ紛争が起こっていても、離れたくなんてありませんでした。でも、避難するよりほか選択肢はなかったのです。家、学校生活、友だち、すべてを置いてこなければなりませんでした。

シリアを離れるとき、気がかりだったのが、教育のことです。難民キャンプでも教育をうけられるかどうかが心配でした。

難民キャンプでの暮らし

難民となって最初に暮らしたのは、ヨルダンのザータリ難民キャンプです。ザータリ難民キャンプでの新しい暮らしは、大変なことがたくさんありました。住居となったのはとても小さなテントで、その中で、家族全員が食事をとり、就寝し、日中を過ごし、訪問客を迎え入れていました。人生のすべてを、小さなテントの中で送らなければなりませんでした。

キャンプにはとても多くの人々が暮らしていました。もちろん電気はなく、インターネットもありません。皆さんにとっては、電気やインターネットがない生活なんて想像するのは難しいかもしれません。本当に困難な生活でした。

そんな中でも、私の最大の関心事は、教育の事でした。教育を受けられなければ、人生において何も達成することができません。自立することもできません。他を助けることもできません。自分の国を支えることもできないのです。もし教育を受けられなくなれば、私の人生のすべてを失うことになる、と強く思っていました。そして、教育を受けることができれば、人生におけるすべての困難に立ち向かうことができる、とも。

だから私は、難民キャンプの中でも学校に通うことができないかどうか、模索しました。

私はとても幸運でした。通う学校を見つけることができたのです。ユニセフが支援する学校で、複数の団体が協力して運営していました。この機会は、素晴らしいものでした。このことが、私に希望を与えてくれて、ここから私は自分の人生を変えることができる、と気付かせてくれたのです。

教育の大切さを伝え続ける

私の人生だけではありません。他の子どもたちの人生も変えることができることにも気づきました。

難民キャンプで子どもたちを見かけたとき、特に、教育は人生において優先するものではないと考えている子どもたちに出会ったときに、私は説得を試みるようになりました。

教育の大切さを信じること。学校に行って教育をうけるという機会を活かすこと。知識がなくては、シリアを復興できず、何も成し遂げられないこと。夢も追いかけられず、未来に希望を見いだせないこと。

難民キャンプ内のテントからテントへと訪ね歩き、母親、父親、男の子、女の子に、そういったことを伝え続けたのです。「シリアを離れなければならなかったことについては、私に責任はない。けれども、学校に通う機会があったのに、行かなかったのならば、それは私の責任です」というメッセージを伝えました。

多くの子どもたちが、学校に通うようになりました。私のメッセージをみんなが聞いてくれて、受け入れてくれて、学校に通うようになってくれたことを、本当に嬉しく思いました。

逆境を乗り越えて

一方で、私のメッセージを聞き入れない人々もいました。「あなたには関係ないことだ」「学校に通わせることは良いことだと思うが、うちの子どもたちは結婚するから学校には行かせない」といったようなことを言う人々もいました。

けれども、こうした出来事は私のモチベーションとなり、私は教育の大切さを伝え続けました。人々の声は、“まだするべきことがある”という私へのメッセージだと思ったからです。

聞き入れてくれなくても、教育の大切さを分かってもらうために、伝え続けなくてはなりません。もし諦めたら、子どもたちは人生において何も成し遂げられないでしょう。だからこそ私たちは、気持ちを強く持ち、決して諦めてはいけないのです。

私たちがもつ権利、特に教育の権利は、みんなが心から望むものです。教育の権利を失っているのは、子どもたちのせいではありません。だからこそ私は、多くの子どもたちを助けるために、最善を尽くそうとしました。

置き去りにされている子どもたちのために

職業訓練を受けるナイジェリア難民の女の子たちを訪ねるマズーン・アルメレハンさん(チャド・ダルエスサラーム難民キャンプ)2017年4月19日撮影

© UNICEF/UN060350/Sokhin

職業訓練を受けるナイジェリア難民の女の子たちを訪ねるマズーン・メレハンさん(チャドのダルエスサラーム難民キャンプ) 2017年4月19日撮影

難民キャンプで3年間を暮らした後、私は家族とともに英国に移住する機会に恵まれました。現在は英国に住んでいますが、教育の大切さを伝えるために、声を上げ続けています。なぜなら、今なお置き去りにされている人々がいるからです。難民キャンプで今も暮らしている人々、それに、シリアだけでなく、学校に通えずに教育を受けられていないすべての子どもたちがいるからです。

だからこそ、私は、子どもたちを守り教育支援を行う機関であるユニセフに加わったのです。私は、ユニセフ親善大使として活動できることを誇りに思います。世界の人々に、多くの子どもたちが置かれている困難な状況がどんなものか伝えています。学校に通えない子どもたち、教育を受けられない子どもたち、普通の生活を送れていない子どもたちのことを。

いつか、すべての子どもが...

世界各地の子どもたちを訪問し、私の体験を伝えるという経験は素晴らしいものですが、同時にその責任も感じています。私は、世界の子どもたちに機会を提供する助けをするために最善を尽くします。そしていつか、すべての子どもたちが学校に通い、教育を受け、権利を享受できることを願っています。

子どもが危機に直面するということ、それは子ども自身のせいではありません。世界でおきている紛争に対して、子どもたちは大きな代償を払っています。私自身の場合をみても、紛争は私の人生に大きな影響を与えました。子どもたちは、自分たちを理解し、勇気づけ、一緒に取り組んでくれる人々を必要としています。

ひとりの声でも変化を起こすことはできるけど、私たちが一緒に声を上げれば、さらに大きな変化を生み出せます。私たちは、たくさんの子どもたちの人生を変えられるのです。

(2019年3月18日 ユニセフハウスにて)

* * *

国連ハイレベル会合で教育の大切さを訴えた、国連ピース・メッセンジャーでもあるマララ・ユスフザイさんと、ユニセフ親善大使のマズーン・メレハンさん。

© UNICEF/UN0124445/Nesbitt

2017年9月、国連ハイレベル会合で教育の大切さを訴えた、ユニセフ親善大使のマズーン・メレハンさん。国連ピース・メッセンジャーでもあるマララ・ユスフザイさんとともに。

シリアに生まれたマズーン・メレハンさんは、14歳の時に紛争によって隣国のヨルダンに逃れ、難民となりました。シリアからヨルダンに逃れるとき、メレハンさんが持っていた唯一の荷物は、学校の教科書でした。メレハンさんは、ヨルダンの難民キャンプで3年間を過ごし、その間に、教育の大切さを伝える活動を始めました。その後英国に第三国定住して、2017月6月、当時19歳のときに、難民として初めてのユニセフ親善大使に任命されました。

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