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日本ユニセフ協会
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イスラム教とコプト正教
子どもへの暴力に関する共同文書を発表
「子どもの保護は共同の責任」
児童婚や子ども兵士など、11の暴力に対して言及

【2016年5月9日  カイロ(エジプト)発】

ユニセフ(国連児童基金)の協力のもと、エジプトのアル=アズハル大学とコプト正教会は、暴力や有害な慣行からの子どもの保護に関して、イスラム教およびキリスト教の宗教学者が各宗教の観点をもとに述べた、3つの出版物を発表しました。

イスラム教とコプト正教による共同文書

式典の様子。

© UNICEF /2016/Peter Salama

式典の様子。

エジプトの2大信仰の宗教的指導者たちが一致団結し、共同出版物「Peace. Love. Tolerance. Key Messages from Islam and Christianity on Protecting Children from Violence and Harmful Practices(平和、愛、寛容:子どもたちを暴力や有害な慣行から守るためのイスラム教とキリスト教からの重要なメッセージ)」を発表しました。これは子どもへの暴力の問題に関する初の共同文書であり、子どもへの暴力の防止と終焉のための手引きを、両親や養育者、教員、宗教指導者に示しています。

出版物の中では、エジプト国内や地域、世界中で子どもたちが直面している11の暴力や有害な慣行(子どもの強制的な結婚、女性性器切除(FGM)、子どもたちの間での偏見、児童労働、子どもへの性的虐待、家庭内ケアの欠如や住む家のない子ども、子どもへの家庭内暴力、学校や教育機関での暴力、武力紛争下に暮らす子ども、子どもの人身売買、テレビやインターネットでの子どもに対する暴力)について言及されています。

最新のデータによると、世界の2歳~14歳の子どものうち、10人に6人が体罰を経験しています。これは、子ども10億人近くにあたります。エジプトでは、同年齢グループの78%の子どもたちが養育者からの体罰に晒されています。

子どもへの暴力をなくすために

式典の様子。

© UNICEF MENA/2016

式典の様子。

「子どもの権利を実現することは、イスラム法の重要な柱の一つです。これは、宗教や魂、心、私たちの子孫、繁栄を守ることに関わる問題です。子どもの権利は、私たちの子孫を守るために存在するものです」(アル=アズハル大学のグランド・イマーム、アーマッド・アル・テイブ師)

「子どもたちは人類への贈り物です。かつて『罪を犯しても神の赦しを受けられると言いますが、証拠はあるのでしょうか?』と尋ねられた賢人は、こう答えました。『神はお赦しくださります。その証拠に、神は私たちのもとに、毎日何百万人もの子どもを授けてくださるではないですか』と。子どもたちは私たちの生活にとって、花のような存在です。子どもたちを愛し、大切にし、子どもたちが必要とするものを理解しなくてはいけません」(コプト正教会アレクサンドリア教皇タワドロス2世聖下)

「イスラム教は慈悲の宗教です。子どもたちは人生のすべての段階において、大切に扱わなくてはいけません。ワフク省は、これらの出版物に書かれた重要なメッセージを届けるために他組織に加わる、若い世代の優秀な指導者たちを通して、効果的に取り組みを進めていきます」(ワフク省大臣、モフタール・ゴマア氏)

「これらの出版物によって届けられるメッセージは、イスラム法の正しい見解を伝え、子どもに対する暴力や有害な慣行に関する誤解を正すためにも非常に重要です」(International Islamic Centre for Population Studies and Research (IICPSR)、ガマル・アボウ・エル・セロール代表)

「子ども時代はすべての人の成長にとって、すばらしい豊かな時間です。子どもや社会を守るために、養育者や関係のある宗教・社会団体のすべての人々に、これらの出版物のメッセージを伝えることが非常に重要です」(Bishop of Public, Ecumenical and Social Services (BLESS)、H.G.ヨリオス氏)

すべての宗教や文化、社会で子どもの権利を守る

爆撃のトラウマを負い、診断のため、母親と共に診療所を訪れた男の子。

© UNICEF/UNI196760/Mahyoob

爆撃でトラウマを負った男の子。建物の大半が被害を受けたタイズでは、子どもが安全や日常の感覚を失っている。(イエメン)

「この地域で暮らす子どもたちは、前例にない程の暴力を経験しています。この共同イニシアチブは、この極めて重要な時期に発表されます。ユニセフは、地域内で活動する他の宗教団体もこのイニシアチブを支持し、すべての形態の子どもへの暴力をなくすために、共に取り組みを進められることを望んでいます」(ユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表のピーター・サラマ)

「これらの出版物は、子どもへの暴力がない世界の重要性を、再提示しています。ユニセフは、エジプトのコミュニティにこれらのメッセージを届けていくため、取り組んでいきます。そうすることで、すべての子どもたちが健康的な環境で暮らし、彼らの持つ可能性を最大限に引き出すことができます」(ユニセフ・エジプト事務所代表ブルーノ・メイズ)

共同宣言には、すべての宗教や文化、社会で子どもの権利が守られるべきであるということ、そして、子どもたちの健やかな発育や幸せのために、それぞれが重要な責任と役割を担っていることが明記されました。宣言には、すべての暴力や有害な慣行からの子どもの保護は共同の責任であるということも明記されており、発表に立ち会ったすべての参加者が署名しました。

 

■発表された出版物について

  1. 「The Islamic perspective on protecting children from violence and harmful practices(暴力や有害な慣行からの子どもの保護に関するイスラム教の見解)」/The International Islamic Centre for Population Studies and Research (IICPSR)著
  2. 「The Christian perspective on protecting children from violence and harmful practices(暴力や有害な慣行からの子どもの保護に関するキリスト教の見解)」/The Bishopric of Public, Ecumenical and Social Services (BLESS)著
  3. 「 Love. Tolerance. Key Messages from Islam and Christianity on Protecting Children from Violence and Harmful Practices(平和、愛、寛容-子どもたちを暴力や有害な慣行から守るためのイスラム教とキリスト教からの重要なメッセージ)」/イスラム教とコプト正教の専門家による共同文書。幅広いグループの人々に子どもの権利を守る主要なメッセージを伝えるために共同出版された。
  • 出版物は、宗教学者や宗教指導者、子どもの保護とケアの責任者(特に両親)の使用を目的に制作されました。
  • 出版物の発行は「暴力や有害な慣行からの子どもの保護のための宗教指導者イニシアチブ」の一環として実施されました。暴力や有害な慣行から子どもを守るための宗教指導者によるイニシアチブの幕開けとなります。
  • 出版物に込められた子どもの暴力をなくすためのメッセージについて認識を高めるために行われる、国家規模のマルチメディア・キャンペーンと共に、エジプトでは今後数カ月で数多くの取り組みが開始されます。
  • エジプトの数多くの行政区域で、イスラム教とキリスト教の指導者約850人が、子どもへの暴力への対応に関する研修を受けます。

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