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日本ユニセフ協会
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子どもに対する暴力をなくすために
SDGsターゲット16.2の達成を目指して
公開セミナー実施

【2017年10月11日  東京発】

9月1日、ユニセフハウスにおいて、子どもに対する暴力撤廃をテーマに、公開セミナーを開催。政府、国際的パートナーシップ、弁護士、市民社会の立場でこの問題に取り組んでこられた方々とともに議論しました。 公開セミナーの動画はこちら

子どもに対する暴力の撤廃は、誰にも否定できない課題

南博(みなみひろし)前日本政府国連代表部大使。

南博(みなみひろし)前日本政府国連代表部大使。

開会の挨拶に立った南博(みなみひろし)前日本政府国連代表部大使は、持続可能な開発目標(SDGs)の17のゴールのうち、平和的な社会に関するゴール16については最も議論があったが、その中のターゲット16.2の「子どもに対する暴力の撤廃」については、各国とも異論がなかったことを紹介し、この課題の重要性は誰にも否定できないということだろう、述べました。そして、将来世代のための目標であること、画一的なアプローチをやめようということ、“タコツボ的”発想ではなく総合的な取り組みが必要、という3つの意味において、16.2は、まさにSDGsの理念に非常にあてはまるものである、と強調しました。

また、シリアなどで物理的に暴力にさらされている子ども、難民となって教育の機会を奪われている子ども、また先進国では、ネット上の暴力や性的搾取、いじめなど、各国それぞれの状況で子どもに対する暴力の問題を抱える中、日本政府が長く主導してきた「人間の安全保障」の考え方も、子どもを中心におき、子どもを守りその能力を強化するという意味で、この課題に非常によくあてはまる、と述べました。

子どもは国の宝”

日本では、虐待の通報件数が毎年増加し、毎週ひとりの子どもが、虐待によって死亡している状況であるとしつつ、政府は子どもの貧困対策法や、児童福祉法・児童虐待防止法の改正など様々な対策をとっていること、また本年7月の国連ハイレベル政治フォーラムで岸田前外務大臣が、「子どもの貧困、子どもへの暴力、若年者の雇用への取り組みを実施していく」と述べたことを紹介。政府の取り組みとともに、民間セクター、市民社会、国際機関など様々な関係者との協力の重要性も強調しました。最後に南大使は、「子どもは国の宝」という言葉を引用し、日本でも世界でも、子どもはそのような扱いを受けるべき、いかなる子どもも取り残されてはならない、と挨拶を締めくくりました。

子どもへの暴力を“終わらせる”ためのグローバル・パートナーシップ

子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル・パートナーシップ(Global Partnership to End Violence against Children)のスーザン・ビッセル事務局長。

子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル・パートナーシップ(Global Partnership to End Violence against Children)のスーザン・ビッセル事務局長。

続いて、子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル・パートナーシップ(Global Partnership to End Violence against Children)のスーザン・ビッセル事務局長が、基調講演を行いました。同パートナーシップは、ユニセフや子ども関連の国際NGOが中心となり2016年に立ち上げられ、政府、国連機関、NGO、企業等が参加する枠組です。ビッセル事務局長はまず、子どもの2人にひとりが暴力を経験しているなど、世界の現状についてのデータを紹介し、子どもへの暴力がおきていない国はない、と指摘。多くの関係者がこの問題に取り組んできた中、SDGsに「子どもに対する暴力の撤廃」が明記されたことは、非常に喜ばしいこと、と述べました。そのSDGsに基づいて設置され、「社会を子どもたちにとって安全な場所にし、あらゆる場所で子どもに対する暴力を撤廃する」という使命を掲げる同パートナーシップ。“削減”でも“半減”でもなく、暴力を終わらせる、“撤廃(End)”という言葉を意図的に選んだ、と強調しました。

*ビッセル事務局長が講演の中で紹介しているビデオはこちらでご覧いただけます。

エキサイティングな戦略

子どもへの暴力撤廃のための政治的意思の醸成、行動の加速化、および協力体制の強化を目指すグローバル・パートナーシップは、「INSPIRE」という戦略を掲げます。英語で、実施と法の執行(I)、暴力を容認する規範や価値の見直し(N)、学校、スポーツ、遊びの場等の安全な環境(S)、親へのサポート(P)、所得の支援(I)、暴力を経験した子どもへの対応とサポート(R)、教育(E)の頭文字をとった「INSPIRE」は、これまでの関係機関の取り組みの中から、その有効性が実証されているものをパッケージにまとめたもので、ビッセル事務局長は“エキサイティングな”内容と表しました。そして、その内容は決して新しいものではなく、日本でもすでに行われているはず、とも述べました。

日本への期待

また、南大使の発言にも言及しつつ、各国がこの課題に取り組むにあたっては、それぞれの国の状況に合わせたアプローチと、様々な関係者が参加する横断的な取り組みが必要であると指摘。グローバル・パートナーシップが設けている、子どもへの暴力の問題に積極的に取り組むことにコミットしている“パスファインダー”国として、経済状況も地理的にも多様な13カ国が手を挙げていること、その他にも日本を含む複数の国々と、継続的な議論を続けていることを説明しました。

また、同パートナーシップが管理する信託基金は、ネット上の暴力、家庭・学校や地域社会等日常生活における暴力、紛争や緊急事態における暴力の撤廃の3つの優先分野で各国の取り組みの強化に使いたいとし、すでに64カ国での活動に資金を提供していることを紹介。最後に、来年2月にストックホルムで開催が予定されている「子どもへの暴力撤廃のためのソリューション・サミット」では、すでに成果を上げている取り組みを共有し、各国の対応の加速化につなげることをめざしている、日本にも是非この取り組みに参加してほしい、と述べました。

人権問題としての「子どもに対する暴力」

子どもの権利委員会委員を務める弁護士の大谷美紀子(おおたにみきこ)氏。

子どもの権利委員会委員を務める弁護士の大谷美紀子(おおたにみきこ)氏。

子どもの権利委員会委員を務める弁護士の大谷美紀子(おおたにみきこ)氏は、最初に、虐待、体罰、いじめ、児童買春・児童ポルノ等は、国際社会では“子どもに対する暴力”であって“子どもの人権問題である”ととらえられているのに対し、日本ではそのような視点が不十分で、個々の社会問題としてとらえられていることを指摘。日本でもこれらを「子どもに対する暴力」と位置付け、子どもの人権問題として総合的に取り組む必要があることを訴えました。その理由として大谷氏が挙げた一つ目は、子どもに対する暴力をなくすことは、平和で非暴力な社会を築くために不可欠な大前提であるということ。

2つ目は、子どもに対する暴力は、国連を中心に国際社会が取り組んでいる重要な課題であり、日本も積極的に参加すべきであること。数ある国際人権条約の中で「暴力」そのものを人権問題としてとらえ、条約に規定したのは、子どもの権利条約が最初であったこと、その後子どもの権利委員会における議論、独立専門家による調査研究、事務総長特別代表ポストの創設等、国連を中心に取り組みが進められてきたこと等を紹介し、グローバルな取り組みに日本が積極的に参加することは、日本における取り組みをより効果的に進めることと、グローバルな取り組みの推進との両方につながるものであると訴えました。

データが要、そして総合的取り組みを 

さらに、子どもに対する暴力をなくすための取り組みにおいて、政策を立て、計画を実施し、その効果を測定するすべての要になるのはデータであるものの、ユニセフ・イノチェンティ研究所の『レポートカード14』でも指摘されているように、国際的支援を受けてデータ収集が進められてきた途上国に比べて、かえって先進国の方が暴力に関するデータが不足していると述べ、データ整備の必要性を指摘しました。

最後に大谷氏は、子どもの権利委員会、国連機関、NGO等による子どもに対する暴力に関する取り組みを、効果的に連動させる仕組みを提供するものとして、「グローバル・パートナーシップ」への期待を寄せ、あらゆる関係者がパートナーとして取り組んでいくことは、国内においてもよいモデルになるとして、関係省庁、NGO、研究者、法律・医療・社会福祉・児童心理等の専門職、企業等が協力して、総合的・包括的に取り組みを進めることが重要である、と述べました。

市民社会による取り組み 

ワールド・ビジョン・ジャパンのアドボカシー・シニアアドバイザー柴田哲子(しばたのりこ)氏。

ワールド・ビジョン・ジャパンのアドボカシー・シニアアドバイザー柴田哲子(しばたのりこ)氏。

続いて登壇したワールド・ビジョン・ジャパンのアドボカシー・シニアアドバイザー柴田哲子(しばたのりこ)氏は、アドボカシーとは、問題の根本的な原因に対して声を上げていくこと、と述べ、SDGs採択に向けた議論のプロセスに市民社会が参画し、子どもに対する暴力の撤廃がSDGsに含められたことを紹介。日本においても、政府のSDGs実施指針に子どもに対する暴力撤廃に関連する課題が含められたこと、また、市民社会として働きかけを行った結果、本年7月の国連ハイレベル政治フォーラムにおいて、岸田前外務大臣が、子どもの貧困や暴力への対策等を強力に実施する、と述べたことなどを説明しました。

また、関連の事例として、子どもに対する暴力撤廃のためのODAに関する政策提言書、暴力撤廃のための重要なパートナーであるビジネスセクターについての政策提言書、子どもに対する暴力撤廃に関するグローバルキャンペーンについても紹介。最後に、子どもに対する暴力をなくすために私たちにできることとして、まずは知ること、そして伝えること、その上で協力すること、の3点を挙げ、2030年に子どもに対する暴力がなくなっていることを目指して取り組んでいきたいと述べました。

質疑応答では、日本における子どもに対する暴力で最も大きな問題は何か、との問いに、どれがいちばん問題であるとの答えはないが、暴力としてまた人権問題として認識されていないことが問題(大谷氏)、報告されない暴力が問題(ビッセル氏)等の、示唆に富んだ回答が示されました。その他にも、子どもへの暴力の定義、ビジネスセクターが関与する事例等について会場から質問が出され、この問題への関心の高さがうかがえました。

一人ひとりの心を見直す

日本ユニセフ協会専務理事の早水研。

日本ユニセフ協会専務理事の早水研。

最後に挨拶した日本ユニセフ協会専務理事の早水研は、ユニセフの報告書から「おとなの約3割が子どもへの体罰は必要だと考えている」等の調査結果を紹介し、暴力の問題は人々の心の中に要因があり、ターゲット16.2の実現のためには、一人ひとりの心の中にそういった考えがないか確認することが重要であると述べました。そして、1996年の第1回「子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」における日本への批判をきっかけにスタートした、同協会のアドボカシー活動を紹介。児童ポルノ禁止法の成立(1999年)、単純所持の禁止を含む法改正(2014年)に向けた活動の中でも、人びとの意識改革が重要であった、と説明しました。

さらに、子どもの権利条約に基づき、子どもへの暴力がゆるされないこと、とのコンセンサスは簡単に作れるだろうとし、市民社会にはそれを世の中、政治に訴え、法改正に結びつけ、法執行を見守る役割が求められている、と強調。この日のセミナーが、日本社会に残る課題について考えるきっかけになることに期待を示し、今後とも皆さまと協力して子どもに対する暴力をゼロにするために取り組んでいきたい、と述べました。

 

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