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日本ユニセフ協会
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パレスチナ・ガザ地区
精神的な苦しみを抱える子ども
心理社会的支援で回復へ

【2016年10月21日  ガザ(パレスチナ)発】

パレスチナ紛争下に生きてきたアーメッドさん(17歳)は、幼い頃から働くことを強いられ、精神的な苦しみを抱えてきました。ユニセフが支援するファミリーセンターに通うことで、ようやく回復への一歩を踏み出すことができました。

幼少からのトラウマ

ガザ地区にあるファミリーセンターで、グループ・カウンセリングに参加する子どもたち。

© UNICEF State of Palestine/2016/El Baba

ガザ地区にあるファミリーセンターで、グループ・カウンセリングに参加する子どもたち。

アーメッドさんは、幼少期のほとんどを恐怖の中で過ごしました。ガザ地区で育ち、2009年以降の3回の武力衝突、10年近く続く封鎖を経験しています。

両親との関係も上手くいっているとは言えません。父親に小さい頃から働くよう強要され、アーメッドさんが10歳のときには、離婚して離ればなれに暮らしていた母親と一緒に住むよう言われました。アーメッドさんは、現在も母親と義理の父親と一緒に暮らしていますが、多くの不安を抱えています。

このような苦しみを抱えているのは、アーメッドさんだけではありません。パレスチナの情勢は、ガザで暮らす子どもたちに多大な犠牲を強いています。ガザ地区の失業率は43%と世界中で最も高い地域の一つで、1,900万人いるガザ地区住民の40%が貧困ライン以下の暮らしを送っています。さらに、人口のおよそ80%が人道支援物資を頼りに生きています。

幼い年齢の子どもたちに、労働や結婚をさせて、困難な状況に対処しようとする家庭も少なくありません。1歳から14歳の子どもの95%が、自分の家族から肉体的、精神的苦痛を受けた経験があり、女の子の29%が18歳未満で結婚しています。

子どもたちは、性的虐待や暴力を日常的に受ける弱い立場にあり、さらには、生きるために最低限必要な食事や住居さえもままなりません。

心に負った深い傷を癒すには

ユニセフは、ガザ地区で最も弱い立場にある子どもたちに必要な支援を届けるため、28のコミュニティ・ファミリーセンターと協力し、子どもたちへの精神的支援や、子どもの保護活動を行っています。

センターには子どもの保護カウンセラーが常駐し、一人ひとりか抱える問題に沿って対応しています。また、社会心理的支援、ライフスキル教育、両親に対する積極的な子育ての啓発、子どもたちが直面する問題に自ら対処するための支援も提供しています。

「子どもたちは、センターでカウンセリングを受けます。そして、両親からの虐待、暴力、搾取、育児放棄が疑われる、大きな不安感や孤独感を抱えている子どもには、踏み込んだ調査を行うことで、その原因を把握するよう努めています」と、ガザ地区で活動するユニセフの子どもの保護専門官、サファ・ナサールは言います。「そうして初めて、子ども一人を守るために必要なケース・プランを準備することができるのです」

それぞれのファミリーセンターに子どもの保護コミュニティ委員会を設置し、家族と教育関係者も巻き込んでいます。地元住民の子どもの保護に対する理解は不可欠です。

行動計画と情報管理システム

グループ・カウンセリングのアクティビティを楽しむ子どもたち。

© UNICEF State of Palestine/2016/El Baba

グループ・カウンセリングのアクティビティを楽しむ子どもたち。

ユニセフの重要な活動の一つが、持続的な手段で虐待の解決を導くことです。ガザ地区では、性的虐待の事例に対して裁判所での法的処置を取らずに解決しようとしたり、家庭内暴力を宗教などに基づいて正当化しようとする人々もいます。

ユニセフは、このような事例にも手順を踏んで取り組めるよう、パートナーとともに活動しています。5つの省庁と国内・国際団体が協力して、子どもを保護するための行動計画を策定し、合意に至りました。子どもの保護や性別に起因する暴力に対応する際の作業手順を示したケース・マネジメントには、虐待に直面する子どもが一人も取り残されないよう、その手順と照会先の情報などがまとめられています。

社会開発省に所属する10人を含む、80人以上の子ども保護カウンセラーがトレーニングを受けています。このことは、子どもに対する暴力が起きた際の対応を早めるとともに、作業の負担を軽減することにもつながっています。

新しく導入された情報管理システムは、ガザ地区で起こる虐待事例を追跡し、子どもの保護に関する統計データを蓄積しています。このシステムはまた、当局が特に深刻なケースに対処したり、現場で活動する団体が最も弱い立場にいる子どもたちのニーズを把握したりすることにも、役立っています。

変化の兆し

アーメッドさんの母親は、息子のニーズを理解しようと、コミュニティ・ファミリーセンターが主催した、子どもの保護に関するセッションに参加しました。そして、アーメッドさんが利用できるサポートがあることを知り、保護官に相談しました。

保護官は、アーメッドさんが精神的に苦しんでいることに気づき、個別のカウンセリング・セッションの手続きを取りました。アーメッドさんはすぐに、必要とする支援を提供してくれる、特別な団体に照会されました。それらの支援を受けたことで、アーメッドさんは少しずつ快方に向かい、母親や家族と信頼できる関係を築けるようになりました。

「初めてセンターに来たときは、とても恥ずかしかったです。でも今は、セッションに通うのが楽しみで、自分らしくいられる場所になりました」とアーメッドさんは言います。「ここに来ると、自分の話を聞いて心配してくれる人がいて、問題にどう向き合うべきかアドバイスをもらえます。自分のためを思ってくれる人がいると分かるのです」

アーメッドさんの母親も、息子の変化に気づきました。

「アーメッドが、私たちとコミュニケーションを取るようになりました。これは、とても良いことです」と話します。「兄弟に対して優しく接するようになりました。義理の父親とも良い関係性を築き始めています」

アーメッドさんは、最近、よく眠れるようになったと言います。以前に感じていた切迫感はもうありません。「悪夢を見なくなりました。人生で初めて、友達ができました」


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