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日本ユニセフ協会
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COVID-19による影響
90%の国で必須保健サービスに混乱 保健・医療の労働力が不足

【2021年4月23日  ジュネーブ発】

世界保健機関(WHO)の第2回パルス調査で、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックから1年以上が経過しても、実質的な混乱が続いていることが明らかになりました。約90%の国が、依然として基本的な保健サービスに1つ以上の混乱が生じていると報告しており、2020年夏に実施された最初の調査から世界的に大きな変化は見られませんでした。しかし、国内では、中断の規模や程度は概して減少しています。2020年の各国の報告によると、平均して約半数の必須保健サービスが中断されていました。しかし、2021年の最初の3カ月間では、サービスの3分の1以上が中断していると報告されています。

混乱の克服

ユニセフと英国国際開発省(DFID)が支援するハルゲイサの栄養・保健センターで、はしかの予防接種を受ける子ども。(2021年2月撮影)

© UNICEF/UN0414894/Naftalin

ユニセフと英国国際開発省(DFID)が支援するハルゲイサの栄養・保健センターで、はしかの予防接種を受ける子ども。(2021年2月撮影)

各国は混乱を和らげるために努力してきました。多くの国では、サービス提供の変更について国民に知らせ、安全に保健・医療ケアを受けられるようアドバイスを提供するため、コミュニケーション活動を強化しています。また、緊急性の高い患者のニーズを特定し、より適切に対応するためにトリアージも行っています。

調査対象国の半数以上が、保健・医療の労働力を増やすためにスタッフを増員したこと、患者を他の医療施設に誘導したこと、在宅サービスの充実や治療薬の数カ月分の処方、遠隔医療の利用拡大など、代替的な医療提供方法に転換したことを挙げています。

続く中断の原因

ペタレ近くの学校で、栄養検査を受ける14歳のホセさん。(ベネズエラ、2020年10月撮影)

© UNICEF/UN0373977/Cabral

ペタレ近くの学校で、栄養検査を受ける14歳のホセさん。(ベネズエラ、2020年10月撮影)

各国はCOVID-19への対応において、他の健康問題に対するケアへのアクセスに悪影響を及ぼす可能性のある重要な決断をしなければならない状況が続いています。COVID-19への対応のためにスタッフを再配置したり、保健施設やサービスを一時的に閉鎖したりすることが続いています。

新しいスタッフを採用したとしても、66%の国が、最も多いサービスの中断の要因は保健・医療分野の労働力の問題であると引き続き報告しています。また、約3分の1の国でサプライチェーンが崩壊しており、必須医薬品や診断、安全で効果的なケアに必要な個人用防護具(PPE)を入手することに影響しています。

また半数以上の国で、患者が治療を受けようとしないことや、地域住民の不信感や感染への不安が原因で、サービスが中断していると報告しています。一方、43%の国が、サービス利用の中断の主な原因として財政的な問題を挙げています。

その結果、何百万人もの人々が重要な医療を受けられない状況が続いています。サービス面では、半数近くの国が、最も一般的な健康問題の予防と管理を目的とする日常的なプライマリ・ケアの提供に大きな影響があると報告しています。また、慢性的な症状に対する長期的なケア、リハビリテーション、終末期の緩和ケアなどの中断によって、特に高齢者や障がい者に深刻な影響を与えています。

命を救う必須保健サービス

東部にあるベルトアでHIVの検査を受けた15歳のマリヤムさん。(カメルーン、2021年2月撮影)

© UNICEF/UN0422722/Dejongh

東部にあるベルトアでHIVの検査を受けた15歳のマリヤムさん。(カメルーン、2021年2月撮影)

パンデミックの最も差し迫った間接的結果を反映して、約20%の国では、救命の可能性のある救急治療、重症者への対応、外科治療への介入が妨げられています。また、3分の2の国が選択的手術の中断を報告しており、パンデミックの長期化に伴って影響が拡大しています。

最も大きな影響を受けている保健・医療サービス(40%以上の国が中断を報告しているもの)は、精神・神経・薬物使用の障がい、顧みられない熱帯病、結核、HIV、B型・C型肝炎、がん検診、高血圧・糖尿病などのその他の非感染性疾患や、家族計画や避妊、緊急歯科治療、栄養不良などのためのサービスです。

4月24日からの世界予防接種週間と4月25日の世界マラリアデーに先立って実施された本調査では、これら2つの分野におけるサービスの中断への対応にも深刻な格差があることが明らかになりました。2020年と比較して、各国での取り組みにより医療施設での予防接種の中断と地域の中へのアウトリーチによる予防接種サービスの中断がそれぞれ約20%と30%削減されたにも関わらず、3分の1以上の国でいまだ予防接種サービスの中断が報告されています。これは、予防接種の普及率と摂取率を向上させるための新しい持続的なアプローチの必要性を浮き彫りにしています。

「COVID-19のパンデミックは、病気そのものの影響を超えて、世界的な保健問題に深刻な課題を与え続けています。子どもたちにとって、予防接種サービスの中断は深刻な結果をもたらします。COVID-19ワクチンの提供を拡大するにあたり、子どもたちへの必要不可欠な予防接種を犠牲にすることがないようにしなければなりません。今日のCOVID-19との闘いで、はしかやポリオ、その他のワクチンで予防可能な病気との闘いが損なわれるようなことがあってはなりません。予防接種の中断が長引けば、子どもたちの健康に長期的な影響を及ぼします。今、追いつかなくてはなりません」と、ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは述べました。

すべての人に総合的なケアを

ラホールでポリオの予防接種を受ける5歳の男の子。(パキスタン、2021年1月撮影)

© UNICEF/UN0399483/Bukhari

ラホールでポリオの予防接種を受ける5歳の男の子。(パキスタン、2021年1月撮影)

一方、40%近くの国が、1つ以上のマラリアへの対応も中断していると報告しています。2020年に比べて、マラリアの診断や治療の中断を報告する国が約10%減り、マラリア予防キャンペーン(防虫処理済みの蚊帳の配布、屋内での噴霧、季節的なマラリア化学予防など)の中断を報告する国が25~33%減るなど進展は見られますが、報告された中断のレベルは依然として大きく、早急に対処する必要があります。

WHOは、パンデミックの中にあっても、医療システムの負担の増加や、急速に変化する優先事項やニーズに対応できるよう、各国を支援していきます。さらに、COVID-19対策が、他の健康上の優先事項に取り組むための戦略とのバランスを保ち、最も弱い立場にある人々を含むすべての人が総合的なケアを受けられるよう、引き続き支援していくとしています。

 

* * *

 

追記:

カボ・デルガド州のNagua避難所で、マラリア予防のためのユニセフの蚊帳を受け取った親子。(モザンビーク、2020年11月撮影)

© UNICEF/UN0364842/Franc

カボ・デルガド州のNagua避難所で、マラリア予防のためのユニセフの蚊帳を受け取った親子。(モザンビーク、2020年11月撮影)

この調査は、様々な保健分野、サービス提供プラットフォームの63の中核的な保健サービスについて調査したものです。この調査は、WHOの6つの地域の216の国と地域に送られ、2021年1月から3月の間に、主に各国保健省から135件の回答を得ました(回答率63%)。回答は、調査提出前の3カ月間(ここでは主に2020年10月から2021年2月までの期間)の国の状況について言及しています。

今回の調査の目的は、COVID-19パンデミックが必要不可欠な医療サービスに与える影響と、各国が必要不可欠なサービスを維持するための戦略をどのように適応させているかについて、見通しと見解を得ることです。今回の調査は、WHOが2020年の第2・第3四半期に実施した、COVID-19パンデミックにおける必須保健サービスの継続性に関するパルス調査に続くものです。パルス調査には、報告の偏りや代表性などの限界がありますが、この取り組みの強みは、包括的で、情報を迅速に提供できることです。

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