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日本ユニセフ協会

ストーリー

ブルンジ
勢いを増し、繰り返される洪水
気候変動の影響を受ける、避難民の家族

2022年1月28日ブルンジ

ブルンジのブジュンブラ空港の郊外にある避難民キャンプには、強い日差しが降り注いでいます。朝の時間帯、ほとんどの住民は、熱がこもったテント内から暑さを逃れるように、外に出ています。水汲み用の容器を手に重い足取りでゆっくりと歩く人、防水シートで作った日よけの下でトマトやナスを売る人もいます。

通称ソベルと呼ばれる地域にあるこの避難民キャンプには、6,400人以上が暮らしています。以前は国有農地でしたが、現在はブルンジ国内で最大規模の避難民受け入れ場所になっています。洪水の被害がここ2年間続いたことから、住民たちが避難しているのです。

村を飲み込む洪水、何度も家を失う家族

「私の家は、洪水によって3度も全壊しました」とブジュンブラの入り口にある村、ガトゥンバからキャンプに逃れてきたマリー・バニャギルブサさん(49歳)が語ります。テントの外で木製の椅子に座っているマリーさんの周りには、9人いる子どものうち7人が集まっています。「洪水があると、毎回水が引くまで学校に避難して、その後戻って再び家を建てました」。

避難民キャンプ内のテントで暮らす、マリー・バニャギルブサさんと子どもたち

© UNICEF Burundi/2021/Hamburger
避難民キャンプ内のテントで暮らす、マリー・バニャギルブサさんと子どもたち

タンガニーカ湖に流れるルジジ川の三角州に位置するガトゥンバで暮らす人々にとって、洪水は目新しいことではありません。しかし、今回の洪水は以前とは規模が違いました。気候変動の影響によって、湖の水位は過去最高の高さを更新し続けています。2020年3月のある夜、湖からあふれた水が村を襲い、家、道路、市場、学校などを飲み込み、5万人が被災しました。

「洪水による家屋倒壊は3度目ですが、今回は水が引かず、別の場所に避難をしなければなりませんでした」とマリーさんは振り返ります。他に行くところがないので、子どもたちと一緒に近くの避難民キャンプに身を寄せましたが、窮状はそれだけでは終わりませんでした。翌年2021年の春、増水したルジジ川から流れ出した水が避難民キャンプを襲い、避難民の人々は再び住む場所を失うことになったのです。そうして一家はソベルに逃れてきました。

避難民キャンプに「子どもにやさしい空間」

政府はソベルの一帯を避難場所に指定し、人道支援活動の中心拠点としました。ユニセフとパートナーは、2021年の年間を通じて、この避難民キャンプの住民に物資や医薬品を配布し、水やトイレへのアクセスを提供し、心理社会的サポートを行ってきました。

ユニセフ・ブルンジ事務所のダン・ロノ子どもの保護チーフは、「子どもたちのニーズに応えるため、『子どもにやさしい空間』も設置しています」と話します。屋内外での身体を使った遊びやスポーツ、心のケア、非公式の教育、そして、何よりも重要なこととして、子どもたちが友達と楽しく過ごせる場所を「子どもにやさしい空間」は提供します。

「子どもたちが子どもらしく過ごせる場所です。子どもたちだけでなく、女性や女の子のためのフォーカス・グループや意識向上キャンペーンの場としても活用されており、コミュニティ全体に利益をもたらしています」とダン・ロノは「子どもにやさしい空間」が避難民の家族の生活に良い影響をもたらしていると語ります。

ブルンジのソベルにある難民キャンプの一角で、女性の健康について話し合うフォーカス・グループに参加する女の子たち。

© UNICEF Burundi/2021/Hamburger
ブルンジのソベルにある難民キャンプの一角で、女性の健康について話し合うフォーカス・グループに参加する女の子たち。

 

© UNICEF Burundi/2021/Hamburger

 

ユニセフはまた、何千人もの避難民の子どもたちが学習を中断されることのないように、学校に通えるようにしました。マリーさんの15歳の息子、エマニュエルくんは「学校を休んだのは、ここソベルに到着してすぐの1週間だけ。来週、夏休みが終われば、また学校に行く予定です」といいます。

人道支援における懸命の努力は続いていますが、子どもたちの切実なニーズの多くは今も満たされていません。「着る服や食べものが十分にあればと思います」と言いながら、エマニュエルくんが、ファスナーを開けて家族で暮らすテントの中を見せてくれました。毛布1枚と水容器2個、そしてその日の家族の食事以外は、ほとんど何もない状態です。

「テントでの生活は厳しいです。日中は暑くて息苦しく、夜はとても寒いのです」と母親のマリーさんは話します。エマニュエルくんは、「僕の願いはただ1つ。家族がもっと良い環境で暮らせるようになること」と静かに語ります。

家族と共有しているテントの中に座っているエマニュエルくん(15歳)。そばにあるのは、家族が唯一持っている毛布。母親のマリーさんは、「テントでの生活は大変です。日中は暑くて息苦しく、夜はとても寒いのです」

© UNICEF Burundi/2021/Hamburger
家族と共有しているテントの中に座っているエマニュエルくん(15歳)。そばにあるのは、家族が唯一持っている毛布。

 

20リットルの水が入った容器を運ぶマリーさん。

© UNICEF Burundi/2021/Hamburger
20リットルの水が入った容器を運ぶマリーさん。

 

川の水位が上昇する雨季

避難民キャンプに暮らす家族が心配していることは、川の水位がさらに高くなる可能性があると推測されている雨季です。

「皆、心配しています。気候変動の影響の中で、次の雨がどのくらい強くなるのかを予測することはできません。避難している子どもたちや家族は、暴風雨で負傷したり、避難する場所を失い再び避難しなければならないといったリスクに直面しています」(ロノ子どもの保護チーフ)。

ブルンジの現在そして未来に、大きな影を落としている気候危機。危機下ではいつもそうですが、最大の代償を払うのは、最も苦しい立場に置かれている子どもたちと家族です。ブルンジは、温暖化の影響から人々を守る手段をほとんど持っていません。今のところ、政府はソベルの避難民をより高い場所に再定住させようとしていますが、世界で最も人口密度の高い国々の一つであるブルンジで、空いている土地を見つけることは気が遠くなるほど難しい課題です。

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

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