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日本ユニセフ協会

ストーリー

イエメン
栄養不良から回復したサナドちゃんの物語
ユニセフ支援が守る、子どもの笑顔と未来

2024年5月22日ラヒジュ(イエメン)

イブン・ハルドゥーン病院の栄養治療センターで、体重を測定する生後4カ月のサナドちゃん(イエメン、2023年3月7日撮影)

© UNICEF/UN0839134/Alaa Noman-YPN
イブン・ハルドゥーン病院の栄養治療センターで、体重を測定する生後4カ月のサナドちゃん(イエメン、2023年3月7日撮影)

「息子のためなら何でもします。母親なら誰でもそうするでしょう?」と話す、ラニームさん。

息子のサナドちゃんは、イエメンに何百万人といる子どもたちと同じように重度の急性栄養不良に苦しみ、生後4カ月のときの体重は3.5kgしかありませんでした。

「サナドがそんな状態になったのは、安価だけど栄養分がほとんど含まれない人工乳しか飲ませられなかったからだと、今では思います……。けれど、安全で質の良い赤ちゃん用粉ミルクを買う経済的な余裕がなく、私自身の病気のために母乳をあげることもできませんでした」(ラニームさん)

息子の命を助けて... 恐怖のなか病院へ

「サナドが嘔吐と下痢に苦しんでいると知った近所の人たちが、病院に連れて行くよう勧めてくれました」とラニームさんは振り返ります。

「極度の脱水症状で泣き続けるサナドを連れてバイクに飛び乗り、午前2時に保健施設に到着しましたが、深夜でその施設には誰もいませんでした。途方に暮れていると、警備の人がイブン・ハルドゥーン病院の栄養治療センターへ行くよう教えてくれたのです。幼い息子を失うかもしれないという不安と恐怖の中で、命を助けてもらえるならどこにでも行くつもりでした」。

栄養治療センターは状態が深刻なサナドちゃんを受け入れ、すぐに医師による治療が始まりました。「医師はサナドに抗生物質と貧血の薬を処方し、赤ちゃんのための特別な栄養治療食の食べさせ方を私に教えてくれました」(ラニームさん)

母親のラニームに抱かれながら、治療用ミルクを飲むサナドちゃん(イエメン、2023年3月7日撮影)

© UNICEF/UN0839122/Alaa Noman-YPN
ラニームさんに抱かれながら、治療用ミルクを飲むサナドちゃん(イエメン、2023年3月7日撮影)

 

イブン・ハルドゥーン病院の栄養治療センターで、サナドちゃんに飲ませる治療用ミルクを準備する様子(イエメン、2023年3月7日撮影)

© UNICEF/UN0839121/Alaa Noman-YPN
イブン・ハルドゥーン病院の栄養治療センターで、サナドちゃんに飲ませる治療用ミルクを準備する様子(イエメン、2023年3月7日撮影)

 

笑顔をみせるようになったサナドちゃん

すっかり体重も増え、笑顔をみせるようになった生後7カ月のサナドちゃん(イエメン、2023年5月17日撮影)

© UNICEF/UN0852954/Alaa Noman-YPN
笑顔をみせるようになった生後7カ月のサナドちゃん(イエメン、2023年5月17日撮影)

最初の治療から3カ月が経ち、自宅での治療に移ったサナドちゃんは、栄養治療食を食べて順調な回復をみせており、体重も増加しました。

「病院での治療が息子を救ってくれました。サナドの状態は、目に見えて良くなりました。今は声を上げて笑うようにもなりました。とても幸せで、医師たちには心から感謝しています」とラニームさんは笑顔を見せます。

イブン・ハルドゥーン病院は、ユニセフが支援する栄養治療センターが設置されている医療施設のひとつです。重度の急性栄養不良の子どもたちを治療するために必要な医療機器や医療物資がそろい、子どもたちとその家族のために、命を守る医療支援を無償で提供しています。

ユニセフの支援で、質の高い医療ケアを提供

自宅に戻り、病院の医師から教わった方法で、栄養治療食を食べさせる、母親のラニームさん(イエメン、2023年5月17日撮影)

© UNICEF/UN0852953/Alaa Noman-YPN
自宅に戻り、病院の医師から教わった方法で、栄養治療食を食べさせるラニームさん(イエメン、2023年5月17日撮影)

栄養不良に陥っている子どもは、免疫力の低下のために、感染症を含むさまざまな病気にかかりやすいことから、病院でも適切な診断と治療方針の決定が難しく、ときに誤診されることもあります。

ユニセフが支援する栄養治療センターでは、複雑な治療を提供できるように医師への研修や訓練を行なっています。そうした訓練を受けた医師が、子どもの詳細な検査を行ったうえで、適切なタイミングで治療用ミルクや栄養治療食、抗生物質などを処方しながら、徹底した治療を提供しています。

イブン・ハルドゥーン病院を含む各地の栄養治療センターで治療を受けた、重度の急性栄養不良子どもの90%以上が、回復していると報告されています。



紛争9年、未来を奪われ続ける子どもたち

イエメンで2015年から続く紛争は、経済を疲弊させ、多くの避難民と失業者、極度の貧困を生みました。戦闘から逃れるために、多くの人々が自宅を追われて避難せざるを得ず、貧困の中で栄養価の高い食料を手に入れることはほとんどできていません。イエメンでは現在、980万人の子どもを含む1,820万人が命を守る支援を必要としています。

あまりにも多くの子どもが、生きるために最低限必要な物を奪われ続けています。270万人以上の子どもが急性栄養不良に陥っており、5歳未満の子どもの49%が発育阻害や慢性的な栄養不良に苦しんでいるというデータが、脆弱な現状を最も明確に示しています。栄養不良は、子どもの長期的な身体的・認知的発達を損ない、子どもの持てる能力を最大限伸ばすことを妨げます。

ユニセフは、イエメンの人道的危機に対応し、栄養、保健、水と衛生、教育、保護サービスなど各分野の人道支援を継続しています。栄養分野においては、2024年中に、重度の急性栄養不良の子ども50万人以上に治療を提供することを目指しています。

困難な状況にある子どもたちが、生まれ持った権利を守られ、平和に健やかに成長できることを目指して活動するユニセフ。

その活動は皆さまのご支援によって支えられています。

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※最も支援が必要な子どもたちを支え、ユニセフの様々な活動に役立てられています。

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