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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

アルジェリア:過酷な環境の中、女の子を大切にする人々


【2010年6月24日 アルジェリア発】

© UNICEF Algeria/2010/Oulmi
授業を熱心に聞くマイモウナちゃん(10歳・写真右)。マイモウナちゃんは、生まれてからずっと、アルジェリアの首都アルジェから南西に約1,600キロ離れた場所に位置するサマラ難民キャンプで暮らしています。

「将来は、先生になりたいの」と、話すマイモウナちゃん(10歳)は、5年生の算数のクラスで、三角形の辺の長さを求める問題に悪戦苦闘しています。マイモウナちゃんは、友だちに少し助けてもらって、ようやく問題を解くことができました。

マイモウナちゃんと彼女のお姉さんは、首都アルジェから南西に約1,600キロ離れた場所にあるティンドーフ近くのサマラ避難キャンプに設置されている小学校に通っています。マイモウナちゃんは、この避難キャンプのことしか知りません。キャンプ以外の場所を知りません。マイモウナちゃんは、生まれてからずっと、このサマラ避難キャンプの中で暮らしているのです。

35歳に満たないサハラウイ難民は、全て、マイモウナちゃんと同じ状況に置かれています。1975年、サハラウイの人々は、アルジェリアの国境で起きた武力紛争によって、住む場所を追われました。この武力紛争は、サハラウイの人々が、スペインの植民地であったサハラの一部が、先祖から受け継いだ故郷であると主張したことに端を発しました。

正確な数は明らかになっていませんが、サハラウイ難民は推定15万人以上。その約80パーセントは、女性と子どもたちであると見られています。彼らの大多数は、世界で最も暑さが厳しい砂漠のひとつであるこの広大な不毛地帯に設置された避難キャンプの景色しか見たことがないのです。難民キャンプの環境は苛酷です。この季節、夜7時でも温度計は摂氏37度を示します。

「7月か8月まで待ってください。」サハラウイ難民の一人の人は、サマラ避難キャンプを訪問したユニセフのスタッフに、こう話しました。

過酷な住環境

今回キャンプをはじめて訪れたユニセフのスタッフは、訪問前、サハラウイの人々は、不満を口にしたり、支援を要求したりすることはないと聞かされていました。彼らが今置かれている状況に出口が見えないため、多くの人々は、テントや泥づくりの家に暮らしています。

「神の恩寵です。これ以上何も必要ありません。」 難民キャンプの多くの家庭で、こうした言葉を聞きました。

しかし、実際にこの厳しい状況を目のあたりにしたら、どうしてこのようなことが言えるのかと誰もが不思議に思うに違いありません。難民キャンプでは、電気は一日に2〜3時間しか供給されず、トイレもありません。物資らしい物資はほとんどなく、市場にも、ほとんど食糧がありません。このため、難民キャンプで暮らす人々は、ほとんどあらゆる物を人道支援に頼っているのです。

更なる支援を
© UNICEF Algeria/2010/Oulmi
首都アルジェのサマラ難民キャンプの小学校で、授業を受ける子どもたち。

ユニセフは、欧州連合とスペイン政府の財政的支援を受け、2004年から、ティンドーフ周辺の難民キャンプに対する支援を強化しました。現在、予防接種率の向上や、お母さんや子どもたちに新鮮な食糧が提供される家庭センターの設置、学校用品の入ったスクールキットの配布の他、教科書の印刷や、教員の研修など、多岐にわたる活動を展開しています。

こうした活動が行われているにもかかわらず、避難キャンプで暮らすサハラの子どもたちの3人にひとりは、必要な予防接種を受けていません。新鮮な食料の不足と、不定期な食事のために、女性の10人にひとりは貧血です。約半数の学年齢期にある子どもたちは、学校を中退。また、教育の質に関しても、改善すべき点が多く残されています。

ユニセフが、こうした格差に対処するためには、更なる支援が必要なことは明らかです。

難民キャンプで活動する地元の赤新月社のボウハビニ・イーヤ代表は、難民のニーズをよく理解しています。イーヤ代表は、この、世界から“忘れられた”難民たちへの更なる国際的な支援を求めています。

女の子であることの誇り
© UNICEF Algeria/2010/Oulmi
ティンドーフ近くのサマラ避難キャンプにある学校で、将来は先生になりたいと話すマイモウナちゃん(10歳)。

こうした困難な状況に直面しているサハラウイの人々。しかし、ニーヤ代表は、そんな中でも、このコミュニティが女の子に高い社会的地位を与えていることを、常に誇りに思っていると語ってくれました。

サハラ以南の他の地域で見られる女性性器切除(FGM/C)のような有害な社会的な慣習は、この地域にはありません。

「こうした慣習は、私たちのコミュニティとは相容れないものです。私達は、女性と女の子の身体的、精神的な完全性を尊重しています。」「この地域では、学校に通うのは男の子よりも女の子の方が多いのです。女の子の人数の方が多いので、これは自然なことです。全ての学校が、男女共学です。」(イーヤ代表)

マイモウナちゃんの学校の教室は、女の子と男の子で溢れ、皆楽しそうに、活発に算数の授業に参加しています。

内気なマイモウナちゃんですが、最後に、次のスペイン語の授業の準備をしているとき、大きな瞳を輝かせ、微笑みながら、話しかけてきてくれました。「一番好きな科目は、アラビア語なの。でも、バレーボールも好きよ」と、マイモウナちゃんが話すと、回りの友だちは、大きく頷きました。

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