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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

中国:ソーシャルメディアを通じて、母乳育児を支援

【2012年5月4日 中国・北京発】

© UNICEF China/2011/Liu
医師と看護師の助けを借りながら、生まれたばかりの赤ちゃんに母乳を与える母親。雲南省にて。

福建省出身のシャオユ・スーさんは、生まれたばかりの娘を母乳だけで育てたいと両親への説得を試みましたが、両親に猛反対されました。しかし、スーさんは今、娘の人生最初の6ヵ月間を母乳だけで育てることができたことを、とても誇りに思っています。

「友人や家族から、娘に他の食べ物を与えるよう何度も説得させられました」「自分の信念を強く持っていなければ、すぐに他人に影響されて、母乳育児を諦めてしまうことでしょう」と、スーさんは語ります。

幸せなことに、母乳育児を支持する人々のブログやツイッターのようなミニブログ、オンライン・フォーラムを通して、スーさんは、同じ考えを持つ母親になったばかりの女性たちと知り合うことができました。

「私は、ユニセフ中国事務所のウェイボー(中国版ツイッター)ページの“ファン”です。母乳育児や子どものケアについて、このページで共有されている情報から多くのことを学びました」

完全母乳育児への障壁

© UNICEF China/2011/Fan
完全母乳育児啓発のために、四川省を訪れたユニセフ中国事務所のジリアン・メルソップ代表(左)と、中国のユニセフ親善大使ヤン・ランさん(中央)。

母乳の効果は証明されているものの、中国の生後6ヵ月間の完全母乳育児の実施率は、約28%に過ぎません。母乳に対する伝統的な考えや誤解、母乳育児を実践する母親たちに適応した公共施設・設備の不足、3ヵ月という短い産休期間、粉ミルク製品の激しいマーケティング活動など、さまざまな要因が完全母乳育児の妨げとなっているのです。

スーさんは、「母乳育児実践への一番の障壁となっているのは、伝統的な考えだと思う」と言います。「私の両親も夫の両親も、母乳だけでは栄養不足だと思い込み、他の物も与えるよう強く求めてきました。それと同時に、病院やメディアなど、私たちの周りでは粉ミルク製品の宣伝が溢れています。看護師さんでさえ、娘が生まれた直後から粉ミルクを与えるように言ったんです」

ソーシャルメディアの力を借りて

© UNICEF
生後6ヶ月間の完全母乳育児の重要性を伝える、ユニセフ中国事務所のミニブログページ。

ユニセフは、他の物では代用が効かない、完全母乳育児がもたらす長期的な恩恵に関する社会の意識を高めようと、大々的なソーシャルメディア・キャンペーンを行っています。前述したウェイボーのユニセフ中国事務所のページでは、2010年夏以来、110万人以上の“ファン”を獲得しています。

このページで、ユニセフは、様々なイベントの生中継や、専門家とのウェブ上での会話(チャット)をはじめとする多くの双方向コミュニケーションプログラムを通じ、人々に、母乳育児とその効果について、実践的な知識を提供してきました。

「前の世代の人々が母乳育児について誤った考えや偏見を持っていたために、多くの若い母親たちは、母乳育児の大切さをあまり理解していません。ソーシャルメディアは、そんな母親たちに母乳育児に関する様々な“真実”を知ってもらう良い手段になっています」こう話すのは、上海出身のヤニャン・シャオさんです。

生後8ヵ月の子どもの母親でもある彼女は、ユニセフのミニブログを注意深く読み、その内容を友人や家族と共有するようにしています。

「ミニブログを通じて、母乳育児についての知識だけでなく、他の国の子どもたちが置かれている状況についても学ぶことができました。これは、とても良い取り組みだと思います」

このようにして、オンライン上でも現実の世界でも、母乳育児とその理解の促進は、着実に進んでいます。

こうした中、中国のユニセフ親善大使で、中国人民政治協商会議(CPPCC)のメンバーでもあるヤン・ランさんは、母乳育児を実践する母親へのさらなる支援と職場設備の充実、そして粉ミルク製品のマーケティング活動の規制を求める決議案を、3月の中国人民政治協商会議に提出しました。

ランさんはまた、1千万人以上のフォロワーがいる彼女自身のミニブログにも、この決議案を投稿。この投稿が引き金となり、母乳育児の効果について何万人もの人々がコメントしたり、他人のコメントを自らのページに転送したりと、活発な議論・交流が展開されました。

「新生児が体験する“初めての味”は、母乳にしよう!」

生後18ヵ月の子どもを持ち、北京で暮らすジャンクン・アンさんは、次のように語ります。「ユニセフのミニブログを読むまで、母乳に(赤ちゃんを感染症から守る)抗体やリンパ球が含まれているなんて知りませんでした」「母乳育児について議論しているオンライン・フォーラムやブログがたくさんあるし、ユニセフ発信の情報が、他の人々によって転送されているのをよく見ますよ」

実際のところ、母乳は粉ミルク以上の恩恵をもたらします。母乳で育てられた新生児は、そうでない新生児と比べ、血圧、コレステロール値、肥満率が低いのです。また、母乳育児は母親の乳癌や卵巣癌のリスクを軽減し、妊娠・出産後の回復を促します。反対に、粉ミルクは高価なうえ、不適切に調合された場合など、かえって(新生児に)危険な場合もあります。このため、ユニセフと世界保健機関(WHO)は、生後6ヵ月間の完全母乳育児を推奨しています。

「母乳だけで育てられた子どもたちは、かしこくて健康です。こうした子どもたちと母親たちには、生涯に渡って重要な恩恵がもたらされることでしょう。ですから、私たちは、母乳育児の支援と粉ミルクのマーケティング規制に、更に力を入れて取り組んでいかなければなりません」。「新生児が体験する“はじめての味”は、母乳が一番です」(ヤン・ランさん)

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