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公益財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

インド:
住民の力で、屋外排泄ゼロを達成

【2014年2月27日 ガドリ、ジャールカンド(インド)発】

住民の参加が成功への鍵
© UNIEF India/2014
住民の参加が成功への鍵

インド北東部に位置するジャールカンド州のガドリ地区。他の地域に暮らす6億2,000万人のインド人同様、わずか数カ月前まで、この地区の人々は屋外で排泄をし、不衛生な環境に起因する感染症に苦しんでいました。

ジャールカンド州はインドの中でも屋外排泄の割合が最も高い地域のひとつで、農村部においてトイレのある家庭はわずか7.7%。栄養不良に苦しむ子どもの割合もインドで2番目に多く、子どもの二人にひとりが栄養不良という状態でした。

こうした状況を一変させたのが、ユニセフやジャールカンド州政府の支援を受けたガドリ村の村長のサニカ・オラオンさんと、スニタ・オラオンさんをはじめとするボランティアたちの力でした。彼らのたゆまぬ努力が、州で初となるガドリ村の「屋外排泄ゼロ」宣言を可能にしたのです。

インドが「屋外排泄ゼロ」の国を目指す中で、大切な一歩です。

ガドリ地区では、わずか数カ月前まで、人々は屋外で排泄をし、不衛生な状態から発生する感染症に苦しんでいました。その損失は、毎年、ジャールカンド州のGDPの4〜5%も占めていたのです。

新たな挑戦

数年前まではほとんどの住民が屋外で排泄をしていたガドリ村の住民にとって、屋外排泄がゼロになることなど想像もつかないことでした。人々は、不衛生な環境と屋外排泄、感染症の関係性すら知ることもなかったのです。

「かつて、州の衛生キャンペーンの一環としてトイレが建設されましたが、それが失敗してからというもの、人々はプロジェクトに疑問を抱き、なかなか信じようとはしませんでした」過去を振り返り、ボランティアのオラオンさんは語り、「70の家庭にトイレを設置するというのは容易なことではありませんでした。こうしたアイデアを実施し、変化を起こすには、人々は確信を持たなければならないのです」 と続けました。

オラオンさんや地域の他の人々が求めていた変化は、ユニセフのパートナーNGOであるAction for Community Empowerment(コミュニティ・エンパワーメントのための活動:ACE)のメンバーによってもたらされました。このNGOの行っているキャンペーンは、オラオンさんを十分に納得させるものだったのです。

このNGOはまず調査を行い、地元のボランティアや公務員を通じて、下痢やマラリア、妊産婦の健康状況の不良、貧血、子どもの栄養不良と排泄物による汚染との関連性を説明しました。

長く根付いた問題を理解するにつれ、住民たちの態度は少しずつ変化の兆しを見せ始め、行動の変化へとつながっていったのです。

屋外排泄ゼロを目指す村の夢が現実に

人々がイメージをしやすいトイレの模型
© UNIEF India/2014
人々がイメージをしやすいトイレの模型

オラオンさんは、住民450人とともに衛生プロジェクトを行うことの是非について話し合い、トイレを設置との合意がなされました。

合意後、オラオンさんは、すべての家庭にトイレを設置した場合の費用が、総額490,000ルピー(約82万円)になることを算出しました。

住民の参加が成功の鍵

女性ワーカーの一人であるスニタ・オレインさんは、住民レベルでの動機づけやモニタリングは、プロジェクトを継続する上で不可欠だと語ります。

「私たちはここに住んでいるからこそ、トイレがないために起きている問題を理解できます。尊厳の問題だけではありません。私たちは、トイレのないことが健康や生産性にどれだけ影響するかを説明し続けたのです」(スニタ・オレインさん)

「屋外排泄ゼロを達成した後、村に水道を引く事業も申請しました」と語るスニタさんは、村の衛生委員会の会計係も務めています。

回転基金制度が成功をもたらす

こうしたプロジェクトを開始するにあたって、プロジェクトを進めるNGOは、人々を手引きし、動機づけをする上で重要な役割があります。第一にコミュニティ全体を動員し、第二に衛生改善に必要な資金を調達することです。

このプロジェクトの重要な成功要因となったものが、回転基金制度でした。コミュニティは村長からの支援を受け、村全体にトイレを建設するために必要な資金を計算しました。その後、屋外排泄ゼロを達成するため、回転基金からの支援に加え、住民たちも資金を出し合い、資材を調達したのです。

共に働くことが成果へとつながる

トイレを設置する住民たち
© UNIEF India/2014
トイレを設置する住民たち

「トイレが近くにあるおかげで、たくさんの時間が持てるようになりました」と話すディワンティ・オラインさん(36)の言葉に、行動と態度の変化が集約されています。

「トイレをもっと早く作るべきでした。そうしたら生活はもっと楽だったでしょう。今は、他人の目を気にして暗がりに行く必要もないのでとても安全ですし、何より、誰かに見られるのではないかという恐れもなくなりました。本当に便利なものです」と、ディワンティさんの友人のジャンパさんは笑います。

ガドリ村の生活の質も、見違えるほどに改善されました。水と衛生の管理局も、村に水道管を設置することに同意。村中の各家庭に水道水をもたらします。

こうしたガドリ村の成功談が広まるにつれ、プロジェクトに興味を持つ自治体も増えてきました。最近屋外排泄ゼロ宣言が成されたハアー村のシブニ・バックタインさん(55)も誇らしげに「用を足すのに、もう茂みまでいかなくても良いなんてうれしいですね」と語りました。

これから半年の間に、ジャールカンド州では、20以上の村が屋外排泄ゼロを宣言する見込みです。

■参考情報
国連ミレニアム開発目標(MDGs)では、改善されたトイレが使えない人の割合を、1990年時点の51%から達成期限である2015年までに25%に削減することが掲げられています。しかし、1990年以降、およそ19億人の人がトイレを使えるようになったにもかかわらず、2011年時点でトイレが使える人の割合は64%であり、残り39%(約25億人)はトイレが使えません。
現状の取り組みのままではこの目標の達成は厳しく、新たに5億人への支援が必要と指摘されています。

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