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公益財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

モロッコ:子どもたちを苦しめている刑法の改正を求める声

【2012年3月28日 モロッコ発】

© UNICEF/NYHQ2005-2278/Pirozzi
(モロッコ、2005年)。写真はイメージで本文とは関係ありません。

モロッコの古い港町ララシェに暮らしていたアミナ・フィラリさん(16歳)の訃報に、世界中が激しい憤りを感じています。

二重の悲劇に晒されたアミナさんは、自ら命を絶ちました。15歳の時にレイプされた彼女。その事実を周囲に打ち明けると、アミナさんは、その加害者と結婚させられてしまったのです。そして、結婚から5ヵ月。繰り返された暴力に耐えかねたアミナさんは、殺鼠剤を飲んで自殺しました。

この衝撃的な事件に、アミナさんの名誉と、全ての子どもたちの(同様の暴力からの)保護を求めた抗議運動が起こりました。

刑法条項の撤廃を求める声

アミナさんの事件は、この国の法制度が、性的暴力の被害や児童婚、搾取の犠牲になっている子どもたちの権利を守るどころか、むしろ強固に阻害する形で存在している問題を浮き彫りにしています。

モロッコの刑法475条では、レイプ加害者は、被害者と結婚すれば罪が免除されるとしています。この規定があったために、アミナさんは、加害者と結婚させられました。モロッコの一部の地域をはじめ世界の多くの地域では、たとえ、レイプや性暴力という形であっても、婚外交渉を持った女の子や女性は“不名誉な存在”とされ、彼女たちの家族は(家の)名誉を汚されたと感じるのです。この「加害者との結婚」は、こうした不名誉を払拭する方法として考えられています。

一方で、刑法475法は、全ての関係当事者が同意する場合のみ婚姻が成立するとしています。しかしながら、この問題に取り組んでいる人々は、レイプの被害者は、婚姻を受諾するように圧力をかけられる場合が多いと訴えます。モロッコでの婚姻可能年齢は18歳ですが、アミナさんの場合、レイプという“特別な事情”があったために、年齢の問題は“免除”されました。

現在、刑法475条の廃止の声が上がっています。ユニセフ・モロッコ事務所のマリカ・アティフィ子どもの保護担当部長は、過去数年間にわたり、ユニセフは、この問題に関して続けてきた取り組みを、次のように説明しています。「ユニセフや国連人口基金(UNFPA)の協力の下、法務省の主導で、法制度の比較研究が行われました。その報告書は、この条項は、罪を逃れようとするレイプ加害者にうまく使われて、彼らを助長し、子どもや女性の権利を守るのに好ましくない内容となっていると指摘しています。」

子どもの権利条約を具体的な形に

アミナさんの事件は、子どもの権利条約を、より具体的な形で施行する必要性も喚起しています。子どもの権利条約は、締約国に対し、子どもたちのあらゆる基本的人権を保障することを法的に求めた初めての国際法です。モロッコは、1993年に批准しています。

子どもの権利条約第19条は、「児童が父母、法的保護者又は児童を監護する他の者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力から児童を保護する」と定められています。また第34条は、「あらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から児童を保護する」ことを、締約国に求めています。さらに、子どもの権利条約は、全ての法的機関・行政当局に、子どもたちの権利を守り、子どもたちの声を聞くよう要求しています。アミナさんは、裁判所の審問の際、自由にありのままを話すことができたのでしょうか?

先に紹介した法務省の報告書は、性的暴行を受けた被害者の保護を強化する必要性を強調し、性的暴行の加害者に対する刑の強化を求めています。

「法務省で働く全ての法律専門家の知見がまとめられたこの報告書は、刑法の改正を提案しています。」ユニセフ・モロッコ事務所のM.アロイス・カムラギヤ代表はこう話しています。アミナさんの悲劇的な事件を受けて、モロッコ政府は、伝統的な慣習と子どもたちや女性の権利に対する国際的な公約との間にある“温度差”を縮めていく取り組みに着手しはじめています。

カムラギヤ代表は、こうした改善への取り組みには、関係するあらゆる人々を巻き込んで行われる必要があると指摘しました。また、未来の子どもたちを守るために、積極的な行動を促し有害な社会規範を変えてゆくための啓発・広報活動など、長期的な取り組みが必要不可欠だとも語っています。

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