メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

パキスタン:宗教的指導者が誤解を払拭

【2012年4月20日 パキスタン発】

今年4月21日(土)から28日(土)は、「世界予防接種週間」です。ユニセフは、世界の子どもたちの命を守る予防接種の重要性を訴え、世界中で予防接種キャンペーンを展開してきました。ユニセフは、世界の最も貧しい国々のために予防接種のワクチンを支援し続けています。

© UNICEF Pakistan/2012/Zaidi
コミュニティの人々に、子どもたちにポリオの予防接種を受けさせることの重要性を話す宗教的指導者(イマーム)のマウラナ・モハメド・アシムさん。

パキスタン北部カイバル・パクトゥンクワ州にあるいくつかのコミュニティでは、イスラム教の指導者(イマーム)の説法によって、ポリオワクチンについてのあらゆる誤解が払拭されています。

宗教的指導者は、命を守る予防接種は、医学的にも、社会的にも、そして宗教的にも害のないものであることをあらためて説いているのです。

「イマームがコミュニティを訪問するのはとても良いことです」ペシャワール郊外にあるパクハ・グラムにあるモスクと学校の代表を務める宗教的指導者(イマーム)のマウラナ・モハメド・アシムさんはこう話し、さらに続けました。

「もしこの国がこの取り組みの恩恵を享受し、政府とパートナーがポリオ根絶に多くの資金を投じれば、病気の拡散をコントロールし、ポリオは根絶され、子どもたちは生涯続く可能性のある身体的な影響に苦しむことはなくなるのです。このキャンペーンに協力しないなんてことができるでしょうか」

ポリオ感染件数の増加

パキスタンは、いまだにポリオが流行している3ヵ国のうちのひとつで、世界のポリオの感染症例数の約30パーセントを占めています。2010年、144件だった症例数は、2011年は198件に上昇。2012年がスタートしてからも、すでに15件確認されています。

しかしながら、1年に推定20万件もの感染症例を確認していた1990年代初期からみれば著しく減少しています。政府と、ポリオ根絶のためのパートナー組織の努力により、2005年、27件まで減少しました。

しかし、ここ数年にかけて、ポリオの症例数は急激に上昇し始めています。

この状況に対し、2011年、パキスタン政府は、ポリオ根絶のための国家緊急行動計画(NEAP)をスタート。ユニセフは、世界保健機関(WHO)や政府、多くのパートナーと共にポリオ根絶のための新たなアプローチを実施しています。そして、この活動の一環として、宗教的指導者の協力を得て、ポリオ予防接種の効果と重要性がコミュニティに伝えられているのです。

宗教的指導者の役割

カイバル・パクトゥンクワ州の多くの地域では、信仰や所属する政党が、人々の考えに影響を及ぼしています。地元モスクのイマーム(宗教的指導者)は、宗教的、文化的知識の中心と考えられており、意見の分かれる問題についての意見を求められる存在です。

宗教的指導者(イマーム)のアシムさんは、この地域のグループや個人の間に流れているポリオワクチンについての誤解を十分に承知しています。

彼は、こうした誤解を払拭し、「予防接種の日」キャンペーンを支援するべく、金曜日礼拝で、全ての5歳未満児にポリオの予防接種を行う重要性を訴えました。

「金曜礼拝や集まりといった大きな慣習に支えられている中で、人々に現在の見識を伝えようと努力しています」

パジャガイ・マウラナの近隣地域協議会の中で、イアブダル・カリムさんはスラム系の学校マドラッサ・エ・イスラミア学校の代表を務めています。カリムさんはポリオ根絶キャンペーンを熱心に支援しているひとりです。子どもたちの予防接種の実施を家族に促すための重要な役割を果たしています。

こうしたペシャワール内や周辺の宗教的指導者の努力が、大きな役割を果たしてきました。

© UNICEF Pakistan/2012/Zaidi
パキスタン・ファキルカレにある基礎保健所で子どもの診断をするノオル・カーン医師。

パジャガイにあるファキルカレでは、女性保健員(LHW)が主導するポリオワクチン接種チームが、一軒一軒家を回って子どもたちに予防接種を行っています。多くの家庭で、子どもたちに予防接種を受けさせようと一生懸命でした。予防接種が済んだかどうかを確認するために、ワクチンを投与された子どもの手にはインクで印がつけられました。女性保健員たちは、住所や名前、子どもたちの数を記録し、全ての家庭の子どもたちに予防接種を行っていきました。また、予防接種を受けた子どもたちの数を記録しやすいように、予防接種が終了した家のドアにはチョークで印がつけられています。

「女性保健員が活動し始めた当初は、たくさんの障害に直面していました」ファキルカレにある基礎保健所のノオル・カーン医師はこう話しました。「しかし、保健スタッフやユニセフ、WHO,宗教的指導者たちのおかげで、今は、人々の反応が変わったのです。」

ユニセフは主導的な役割を果たし続け、宗教的指導者を巻き込みながらポリオの知識を人々に広め、予防するべく活動しています。また、宗教省と協力して、ユニセフとパートナーは、全国のあらゆる流派の宗教学者たちからポリオを根絶するためのサポートを得られるよう説明会を実施しています。

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る