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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

パレスチナ自治区:ユニセフの「公平性戦略」−ある最前線からの報告

【2011年9月29日 東京発】

© UNICEF/2011/oPt/ Rula Halawani
ヨルダン川西岸C地区のヘブロンの丘の向かいに位置するドカイカ村。この村は、1949年にイスラエルと近隣諸国が締結した停戦協定で設定されたグリーンラインと呼ばれる境界線からわずか70メートルほどの場所に位置し、村人たちは、常に暴力や破壊の危険に晒されている。C地区全域がイスラエルによって統治されている。

ベドウィン族の人々が暮らすドカイカ村は、ヨルダン川西岸のイスラエルが統治するC地区に位置しています。この村は、1949年に設定されたグリーンラインと呼ばれる境界線からわずか70メートルの場所にあり、村の人々は、住居の取り壊しをはじめとする憂き目にいつ晒されてもおかしくない状況の中での生活を強いられています。

ただでさえ非常に貧しいこのドカイカ村の人々をさらに過酷な状況に追い込んでいるのは、この村がマオンとカルメルという二つのイスラエルの避難場所に非常に近い場所にあるということです。ドカイカ村の子どもたちは、常に嫌がらせや攻撃の恐怖におびえながら暮らしています。

基本的な社会インフラと言えるものが殆ど何もないドカイカ村ですが、村には、45人の子どもたちが通う小学校が1校だけあります。イスラエル市民行政局は、C地区に暮らしているパレスチナ人に、教育や保健、電力などの社会サービスをほとんど提供しておらず、こうした中で小学校があること自体、奇跡的な状況です。しかし、C地区にある他の多くの学校と同様、このドカイカ小学校も、いつ取り壊されでもおかしくない状況に置かれています。C地区のイスラエル市民行政局から正式な建設許可を得ることは、ほとんど不可能に近いことなのです。

大きな衝撃
© UNICEF/2011/oPt/ Rula Halawani
ドカイカの小学校で算数の授業を受ける6年生のラナ・ナジャデちゃん(12歳。ナジャデちゃんは、2011年1月12日、5年生の教室が破壊されるのを目撃した。

学校を存続させるために、ドカイカ村の人々は、イスラエルとパレスチナ自治区で、人権侵害の問題に取り組んでいる人権団体の一つ「Rabbis for Human Rights」から法的な支援を受けました。ドカイカ小学校の校長先生によると、この支援によって、昨年の10月、取り壊しの危機を脱することができました。しかし、その僅か数ヵ月後には、事前の予告も無く、その時教室に居合わせた15人の子どもたちの目の前で、増築されたばかりの新しい教室が取り壊されてしまいました。

ラナ・ナジャデちゃん(12歳)は、その時の恐ろしい経験を思い出しながら、次のように話してくれました。「兵士たちが教室を壊しに来て、とても怖かったです。」「すぐに6歳の弟のスレィマンのところに走っていったけど、弟は、泣いていました。」

こうした破壊行為は、これで終わりではありませんでした。その日、この校舎の他にも9つの住宅が破壊され、30人の子どもたちとその家族が住む場所を失いました。

教室は完全に破壊され、子どもたちは大きなショックを受けましたが、ドカイカ小学校の校長先生は、学校を続けることを決めました。「壊された教室の前で、子どもたちのために青空教室を開きました。」「とても厳しい状況でしたが、私たちは授業を続けることを決意したのです。」(校長先生談)

公平性の要

こうした先生方の強い意志を応援するため、ユニセフは、現地で活動するNGO、イスラム国際人道支援機構(Islamic Relief Worldwide)とともに、ドカイカ小学校の再建や子どもたちへのより良い教育環境を提供する支援を行いました。また、ユニセフは、キリスト教系のNGO(YMCA)や欧州委員会人道援助局(ECHO)とともに、トラウマ(精神的外傷)に苦しむ子どもたちのために、ダンスや演劇、遊びを通した心理社会的な支援を提供し、子どもたちが抱える“恐れ”や“怒り”の感情を緩和する支援も行っています。

「(子どもたちにとっての心のケアに必要なことは、)多くの場合、単に、安全な環境で子どもらしく遊んだり、楽しんだりするという機会を提供することで足りる話なのです。」「心理社会的な支援は、子どもたちが、安心感や日常の感覚を取り戻し、持って生まれた可能性を最大限生かして行くために重要なのです。」 ユニセフ現地事務所の副代表を務めるダグラス・G・ヒギンズはこう話します。

ユニセフからの支援を受けたのは、ドカイカの子どもたちがはじめてではありません。ユニセフは、ECHOとともに、2003年から日々紛争と暴力にさらされているパレスチナの子どもたちとその家族を支援するために活動してきました。この支援活動は、頻繁に自宅や学校が破壊されている地域に暮らす、ベドウィン族の幼い子どもたちや障害のある子どもたちも含めた全ての子どもたちに焦点が当てられています。

「ドカイカ村の子どもたちを見放してはなりません。」「教育は、平和と安全の基盤であり、公平性を具体化する要なのです。」(ヒギンズ ユニセフ特別副代表)

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