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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

パレスチナ人の子どもと女性、東エルサレムで苦悩に立ち向かう

【2012年4月30日 パレスチナ自治区発】

© UNICEF/NYHQ2012-0306/Pirozzi
人口が密集した東エルサレムのパレスチナ人自治区・シルワンの路地を通る母娘。

シルワンの曲がりくねった細い道は、古風で絵のように美しい東エルサレムを代表する光景です。しかし、シルワンはパレスチナ人が最も密集して暮らす地区のひとつでもあり、貧困と暴力が日常生活の一部になっています。

「人々は、文字通り重なり合うようにして暮らしています。そのせいで、衝突や緊張が生み出されるのです」こう話すのは、アス・トゥリ女性センター長のアビール・ザヤドさんです。今日、アス・トゥリ女性センターはとても混雑しており、ソファとプラスチックの椅子に約30人の女性と子どもたちが座っています。

12歳のイマンちゃん(仮名)は、「家のなかも、地区も、学校も、たくさんの人で溢れているわ」と話します。「シルワンには図書館もないし、世界中の他の子どもたちみたいに、安心して遊べる場所なんてありません」

© UNICEF/NYHQ2012-0303/Pirozzi
東エルサレムのパレスチナ人自治区・シルワンの小道に立つ男の子。

子どもを持つ母親のひとり、ムナさん(仮名)は、この地区について次のように述べました。「シルワンでは、ゴミの収集は行われず、ネズミが家々を駆け回っています。雨が降れば、通りは水で溢れてプールのようになるんです。駐車場もありません。こんな崩れかけの通りを修復するためには、自分たち自身でお金を集め、取り組むしかありません。イスラエル当局は安全な場所をつくってはくれないし、学校の数も足りないので、多くの子どもたち(特に男の子たち)は、性的搾取や麻薬の危険にさらされた路上でたむろしてしまうのです」

ストレスや暴力で苦しむパレスチナ人の女性と子どもに社会心理的な支援を行う、現在16団体が所属するグループがあり、アス・トゥリ女性センターもそのひとつです。アス・トゥリ女性センターの職員は、ユニセフとパレスチナのYMCAの支援、また欧州委員会人道援助局(ECHO)からの資金提供を受け、人々のストレスの兆候を認識し、必要に応じて特別なサービスを提供したり、専門機関に照会したりできるよう、訓練を受けてきました。

「ここにいる全ての子どもたちは、貧困や親族間の対立、麻薬取引、パレスチナ人地区へのイスラエル人入植に起因した暴力などを体験しています」ある母親は、こう話しました。「イスラエル治安部隊は、麻薬の密売人や罪人を取り締まることをほとんどしないため、法と秩序が全般的に欠如しています。ほとんどの時間、彼らはただパトロールしているだけなのです」彼女は、こう不満をもらしました。

恐怖にさらされながら生きる
© UNICEF/NYHQ2012-0305/Pirozzi
シルワンの人々は、深刻な貧困と暴力の連鎖に苦しめられている。

(パレスチナ人への)立ち退き命令と一体となった(イスラエル人の)入植の進行は、シルワンの緊張を高めました。

「子どもたちは、ひとりで歩いて学校に行くのを怖がっています」ムナさんはこう話しました。ときには、嫌がらせを受けたり、襲われたりする子どもたちもいます。シルワンでは昨年、17歳のパレスチナ人の男の子が入植者に殺されました。また、他にも多くの子どもたちがこうした対立によって負傷しています。

さらに、シルワンでは、パレスチナ人がイスラエル当局から建築許可を得ることが非常に困難になってしまいました。深刻な住宅不足に直面し、多くの人々は建築許可なしに家を建てざるを得ず、非常にぜい弱な立場に立たされています。

「子どもたちのなかには、教科書の代わりにおもちゃや洋服を通学カバンに入れている子もいます」と、ザヤドさんは言います。「学校にいる間に、家が攻撃されたときのためを思ってそうしているのです。9歳の女の子は、(もしそうなったとしても)家族が冷たい雨に打たれなくてすむように、『わたしがテントを探してくるから心配しないでね』とお母さんに話したそうです」

アス・トゥリ女性センターでは、子どもたちとその親がこの不安定な現状に耐えて暮らしていけるよう、手助けしています。同時に、子どもたちが暴力から守られる権利を保有しているのだという理解を促すこともしています。

最後に、ザヤドさんは次のように話しました。「シルワン全体に、暴力の風潮が漂っています。親族同士で争うのと同じように、子どもたちも学校で争います。私が話したほとんどの若者たちが、妻を殴ったり、近所の人同士で争ったりするのは当たり前だと思っています。そのため、アス・トゥリ女性センターでは、暴力を使わずに問題解決する方法を教えているのです」

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