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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

2001年7月30日

学校をやめた子どもが、次々と兵士に
<スリランカ>

ユニセフ事務局長キャロル・ベラミーの声明

 ユニセフは、スリランカの反政府組織「タミル・イーラム解放の虎」(LTTE)に対し、子どもたちを兵士として徴用しない約束を守るよう要求します。またスリランカ政府に対して、人道的活動への制限を緩め、紛争地域における深刻な教師不足の解決に向けて努力するよう求めます。

スリランカ国内の武力衝突は長期化しており、そのため子どもたちは多大な苦しみに直面し、その権利が大きく侵害されています。紛争が18年も続いているために、国内の若い世代は、当たり前の子ども時代を知らないまま成長しています。しかも悲しいことに、子どもたちをめぐる状況は悪化の一途をたどっています。

国連事務総長特別代表として子どもと武力紛争の問題を担当するオララ・オトゥヌ氏は1998年にスリランカを訪れて、政府とLTTEの双方から約束を取りつけ、子どもたちの状況が改善される希望が見えてきました。しかしそれから3年、期待できそうな徴候が時折見られるものの、全体的な状況は悪くなるいっぽうです。

子どもの兵士徴用

 スリランカで子どもの権利が侵害されている最も深刻な事例は、子どもが兵士として徴用されていることです。LTTEはやめると約束したにもかかわらず、今も徴用を続けています。オトゥヌ氏の訪問以後も、学校のなかや近隣で徴用活動が展開されるのを国連は確認しており、親からの苦情も多数寄せられています。最近の報告によると、最年少で12歳の子どもたちが徴用された例もあります。国連は数度にわたってLTTEに介入をしましたが、現在のところほとんど効果はありません。

ユニセフの事務局次長であるアンドレ・ロバーフロアは、2001年2月にスリランカ北部を訪れ、LTTE幹部に国連の憂慮を伝えました。LTTE側は当初の約束を再確認するとともに、国連が提案する追加的な対策を実施することに同意しました。それには、兵士徴用の最低年齢を広く告知する、学校のなかや近隣で徴用活動を行なわない、徴用された子どものこれまでの報告例をすべて調査する、17歳以下の兵士は解放するといった内容が含まれています。これらの対策の実行状況について、国連が組織的に監視することをLTTEも認め、ユニセフと国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)が学校の出席記録を調べて、休んでいる子どもを特定することが可能になりました。

学校をやめる子どもたち

ロバーフロア氏が重視したもうひとつの問題は、学校をやめる子どもたちが増えていることです。、訓練を積んだ教師不足が深刻になっていること、そして子どもが両親を助けて家計を支えなくてはならないことが最大の原因です。さらに心配なのは、教育に対する幻滅感が広がり、より良い未来を手にする手段と見なされなくなっていることです。

基礎教育はすべての子どもに認められた権利です。また、子どもを兵士に駆り出すことを阻止する役目も果たします。政府はユニセフの後援を受けて、学校に来なくなった子どもたちを確認し、学校に復帰させるための解決策を地域社会で探る全国キャンペーンを展開しています。ユニセフはこの活動を妨害しないようLTTEに申し入れ、同意を取りつけることに成功しました。ゆくえのわからない子どもが兵士になっている可能性もあるので、国連はLTTEに調査を依頼し、もしそういう子どもがいれば解放するよう求めています。LTTEがこうした約束をきちんと実行するのであれば、ユニセフは学校およびボランティア教師の技能向上に向けた追加支援を行なうと提案しています。

ロバーフロア氏は2月の訪問の際、LTTE支配下の地域でも、国内の他地域と同様に子どものための活動を展開できるよう、人道目的での立ち入りを容易にするよう求めました。さらにボランティア教師の活動を評価して彼らに訓練を施すこと、LTTE支配地域で国連スタッフが安全に活動できるよう配慮することを求めています。またユニセフは、現在国軍が駐留している学校の建物を明け渡すよう政府に要請しています。

すべての関係者が行動を

勇気づけられる徴候はいくつかあるものの、こうした問題に関して見るべき進展はまだありません。ユニセフはこれまで以上の熱意と、目に見える対応を求めています。

とくにユニセフがLTTEに強く望むのは、兵士の徴用に関してこれまでに同意した約束をすべて果たし、さらに、18歳未満の子どもを兵士に徴用することを禁じた子どもの権利条約選択議定書を遵守することです。ユニセフは政府に対しても、人道目的での活動に対する様々な制約を撤廃し、紛争の影響が深刻な地域での教師不足を解決すること、また学校の敷地から軍隊を撤退させることを求めています。 また海外在住のスリランカ人にも、子ども兵士の徴用と学校中退という2つの問題を根絶する方法を全面的に支持し、故国の状況を変えるよう働きかけてほしいと呼びかけています。

絶望を希望に置きかえる

スリランカの子どもたちは、長引く紛争のあおりをさまざまな面で受けており、子ども兵士や学校中退の問題はその一部に過ぎません。家を離れ、軍隊一色の環境で成長することは、子どもたちの心理面に強いストレスとなり、家族離散や絶望感、アルコール依存症、暴力、自殺といった問題を引きおこしています。収入を得る機会が乏しいため、家族は物乞いでかろうじて生活しているありさまで、自尊心や誇りを持てないことも子どもに悪影響を及ぼします。このような環境では、子どもは持てる可能性を発揮することができません。

大多数のスリランカ人、とくに子どもは平和を望んでいます。和平交渉の努力も最近は失速ぎみで、戦闘が再開されたために、人びとの希望はくじけそうになっています。ユニセフは当事者全員に、平和への思いを新たにして、スリランカのすべての子どもにとって最も大切な権利である平和を保障する努力を重ねるよう求めています。

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