HOME > 世界の子どもたち > 緊急支援情報 > アフガニスタン 2004/10/12
財団法人日本ユニセフ協会




ユニセフ
アフガニスタン復興支援情報

〜飲料水の確保が急務〜

安全な水の不足が深刻に

アフガニスタンの子どもたちはいま、不安定な情勢や続く暴力のみならず、水不足による危機にもさらされています。
現在、アフガニスタンの多くの地域で、ひどい干ばつに直面しています。降雨量、降雪量が平均値をはるかに下回る事態は今年で6年目となり、慢性的な水不足に苦しむアフガニスタンの人々の生活をさらに悪化させています。全国33州のうち、少なくとも17州が危機的な状況に陥り国内避難民を生み出しています。カンダハールとヘルマン州からだけでも、4,000人近い人々が逃げ出しています。しかし、親類を頼って移動している人を含めると、避難民の数はもっと多くなるはずです。
2004年9月に、アフガニスタンの子どもと女性の状況に関する新たなデータが発表されました。特筆すべき指標は、以下のとおりです。

  • アフガニスタンに生まれた子ども9人に1人は、1歳の誕生日を迎えることなく亡くなっている
  • 子どもの6人に1人は、5歳未満で亡くなっている
  • 15歳以上のアフガニスタン人の非識字率は71%にのぼる。
  • 就学年齢の女の子の60%は、学校に通っていない。
  • 出産の90%は自宅で行われ、同じく約90%が、訓練を受けた助産師の介助を受けられない。
  • 5歳未満の子どものおよそ30%が下痢性の疾病の影響を受けているが、治療は限られており、下痢になった子どもの半分は適切な水分の補給を受けられない
  • 5歳未満の子どもの5人に1人は、呼吸器系の感染症に苦しんでいるが、そのうち3/4は病院や保健施設で治療を受けることができない。
  • アフガニスタンの家庭の60%は、安全な水を得る給水場所を持たず、1/3の家庭にはトイレがない。
  • 小学生の7%は、収入を得るために働いている
  • 子どもの6%は、両親と一緒に暮らすことが出来ない

データは、例えば女の子の就学などここ数年のいくつかの前進も示していますが、妊産婦死亡率の削減、水やトイレへのアクセスの確保、汚れた水による疾病の予防、特に危険な状態にある子どもたちの保護などに関して、引き続き努力が必要であることも示しています。

ユニセフの活動

干ばつに苦しむ人々への給水:
干ばつの被害に対する緊急支援として、ユニセフはすでに給水タンカーや浄水剤、折畳式貯水タンクなどの給水資材を北部のいくつかの地域に提供しました。これまでに、避難民や帰還者が多く住む地域の44,100人を対象に252ヶ所の給水所を設置しました。

●すべての学校に給水設備とトイレを設置
ユニセフは、すべての学校に安全な飲料水とトイレを支給するために、引き続き教育省を支援しています。2004年は、合計566校に安全な飲料水を支給し、280,000人の子どもたちがその恩恵を受けています。また502校にトイレを設置し、250,000人の子どもがトイレを使用できるようにすると同時に、363人の教師に対して公衆衛生教育を行いました。

●洪水被災地への緊急支援
2004年8月中旬、アフガニスタンの12の州が洪水に襲われました。およそ5,700世帯が被害を受け、店舗や井戸、排水溝、道路、農耕地などが破壊されました。ユニセフは、被災家族に300のテント、防水プラスティックシート1,084束のほか、経口補水塩、毛布、子ども用の靴や靴下、バケツなどの緊急支援物資を提供しました。

●子どもの兵士の武装解除と保護
子どもの兵士たちを武装解除し、もとのコミュニティに帰すための活動が、地方自治体やNGOなどとの協力の下、進行中です。北東部、東部、中央高原地域では、これまでに、今わかっている5,000人の子どもの兵士のうち2,600人が武装解除されました。ユニセフは、そうした子どもたちの地域社会への再統合プログラムを技術面、資金面の双方で支援しています。このプログラムは、子どもの兵士を含む4,100人の紛争の被害を受けた子どもたちに対する学校外教育、生活に必要な技術トレーニング、社会心理的支援や、500家族への生計支援などと組み合わせて実施されています。

●女子教育の推進
2002〜2003年に実施したバック・トゥ・スクールキャンペーンの結果、7歳〜13歳の子どもの就学率は54%(男子67%、女子37%)に上がりました。しかし学校が遠い、設備が不十分、男女別学にできないなどといった要因が、まだ子どもたちの就学を妨げています。ユニセフは、2005年末までにさらに100万人の女の子が学校に通えるよう、教育省に対し下記の支援をしています。

  • バック・トゥ・スクールキャンペーンの継続
  • 教員へのトレーニング
  • 就学年齢を過ぎた女子のための学習プログラム
  • 地域社会を基盤とした学校の支援
  • 教員研修センターの修復

●子どもの人身売買
2004年8月までに、270人のアフガニスタンの子どもがサウジアラビアから強制送還されました。この子どもたちは人身売買の犠牲になったと見られ、移送センターでユニセフの支援による暫定的なケアを受けています。
商業的性的搾取に対する注意を喚起するパイロット・プロジェクトが、バダクスハン州の500人の子どもを対象に行われています。子どもの人身売買防止委員会が設立され、7月には国内行動計画も仕上げられました。今年の終わりには、全国的なキャンペーンも予定されています。9月初旬には、人身売買の危険の高い3つの地域で人身売買の現状調査が始まりました。調査結果は、今後の人身売買防止のための戦略や活動資材づくりに役立てられます。

●ポリオ予防接種
今年に入って3件のポリオの症例が見つかり、ポリオ根絶に向けた国をあげた努力は続いています。ユニセフは、アフガニスタン保健省やWHOと協力し、4,000人の保健員を動員してポリオ予防接種を進めています。3月と4月には全国ポリオ予防接種キャンペーンを5歳未満児を対象に実施し、660万人の子どもが予防接種を受けました。さらに接種率の低い地域に対しては、追加のキャンペーンを行いました。

●妊産婦と新生児の破傷風からの保護
2004年、ユニセフは保健省に対し、女性と赤ちゃんを破傷風から守るための全国破傷風根絶キャンペーンを400万人の女性を対象に展開しました。3月から5月にかけてすでに2回キャンペーンを実施し、62%以上の322万人に予防接種を行うことが出来ました。予防接種の実施に際するプロセスには、教員、保健員、地域の人々も参加しました。2005年はじめには、3度目のキャンペーンが予定されています。

●宗教指導者へのトレーニング
アフガニスタンの宗教指導者たちは、これまでもバック・トゥ・スクールキャンペーンや保健事業に積極的に協力をしてくれました。ユニセフは、アフガニスタンの子どもや女性にとってより良い社会を実現するために、社会のリーダーでありカウンセラーであるこうした宗教指導者たちとの協力関係をさらに強化することを目指しています。
ユニセフは、75,000人の宗教指導者たちに対し女子教育や予防接種、妊産婦ケア、ヨード添加塩、子どもの保護の意義についての研修を行うための支援を宗教省に行いました。これまでに、研修マニュアルが二つの地方言語で作られ、カブールでは20名のリーダー的指導者への2日間に渡るワークショップが、東部地区では50名の宗教指導者を対象に3日間のワークショップが開催されました。9月には、西部と北部の地域で、25,000人の宗教指導者への研修が始まりました。治安と資金の問題で、残りの研修は2005年に実施される予定になっています。

●ヨード添加塩の普及
ヨード欠乏症を防ぐため、ユニセフはヨード添加塩の普及を進めており、2004年末までに、計画されている9ヶ所のヨード添加工場の85%が完成する予定です。現在は7ヶ所の工場が稼動しています。この7工場で製造されるヨード添加塩は1時間当たり5トンで、必要量を満たすだけのヨード添加塩を作ることができています。同時に、アフガニスタン国民の間にヨード添加塩の需要を高めるためのキャンペーンも実施されています。

●妊産婦ケア
世界での最悪の状態にあるアフガニスタンの妊産婦死亡率を減らすため、ユニセフは、32州すべてに緊急出産ケア施設を整備することを約束しています。これまでに、27州で施設が稼動を始め、主要な都市5カ所に中央センターを設置しました。この中央センターでは、緊急出産ケアに関する研修がすでに何度も行われています。また、国民の中に妊産婦ケアの大切さを広め、妊産婦へのサービスの需要を増やすため、保健省との協力で全国的な母性保護プログラムの戦略が策定されました。質の高い妊産婦ケアを維持していく上で、治安の悪い地域からの協力パートナー(NGO)の撤退が心配されています。ユニセフは、こうしたNGOの撤退によるサービスの地域格差を埋めるための代替案を現在保健省と協議しています。

●地雷教育
ユニセフは、地雷危険教育に関して、人材養成、教授法の開発、技術的支援などによる支援を続けています。これまでに、30万人以上の帰還者が、地雷教育を受けました。また10以上の地雷教育チームが、元子どもの兵士の武装解除プログラムの一環として研修を受けました。500名以上の地域ボランティアに対する研修も、コミュニティを基盤にした地雷教育プログラムの中で行われました。2004年末には、マスメディアを利用したプログラムも計画されています。また、地雷被害者に関する調査も、こうした活動の一貫として進められています。

●少年司法
5月に少年法の草案が関係機関によって合意され、まもなく省庁による承認審議にかけられます。アフガニスタンの法律と子どもの権利条約との比較研究も完成し、印刷の準備中です。この研究によって、両者の間にある格差が確認され、新しい少年法において改正されることになっています。同様に慣習法との研究もなされました。また、ユニセフは能力開発プログラムの一貫として、すべての地域で行政職員に対する子どもの権利条約についての研修を支援しました。さらに、2003年からはカブールの少年リハビリテーションセンターを支援し、投獄以外の方法を検討したり少年犯を大人の犯罪者から切り離すことなどを進めています。

●親に養育されない子どものケア
2003年に実施された施設に暮らす子どもの状況調査によると、80%以上が親が生存しており、厳しい状況の家庭への対処手段として施設収容が利用されていることが明らかになりました。その結果、アフガニスタン政府は、家庭への支援を中心におこない、施設以外のアプローチを導入することを決めました。ユニセフは、社会保護システムの強化や政府の能力開発において労働・社会省に対し技術的支援を行ってきました。7月には、カブールの孤児院に暮らす200人の子どもたちを家庭に戻すパイロット・プロジェクトが実施されました。

●出生登録
予防接種キャンペーンによって構築された全国ネットワークを利用して、2004年3〜5月にかけて妊産婦破傷風予防キャンペーンに加えて、5歳未満の子どもたちの出生登録キャンペーンを実施しました。19州からの報告によると、1,774,583人の子ども(対象の87%)が登録されました。ユニセフはまた、出生登録システムを活性化するための資機材の支援を内務省に対して行っています。

●HIV/エイズ予防
ユニセフは、HIV/エイズの予防に関して、全国HIV/エイズコントロールプログラムを支援し、保健省、宗教省、教育省および女性省と協力して活動しています。これまでの成果としては、1,500人の保健員や宗教指導者たちへのHIVについての研修、若者のグループとの活動、学校カリキュラムへのHIV教育導入などを実施しました。