公益財団法人日本ユニセフ協会
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アフリカ干ばつ緊急募金 第53報
ニジェール:“鍵”となる水と衛生支援

【2012年3月22日 ニジェール発】

© UNICEF Niger/2012/Quarmyne
ティラベリ地域のマンガイゼ避難キャンプに、ユニセフの支援で設置された給水所から水を汲む人々。

広大なサヘルの砂漠地帯に位置するマンガイゼ避難所での生活を強いられている人々にとって、安全な飲料水へのアクセスは、命にかかわる問題です。マリ北部で続く武力紛争により、安全を求めて隣国のニジェールに避難を余儀なくされた避難民と、マリから帰国したニジェール人の総数は、3万5,000人以上に上っています。

こうした状況は、しかしながら、サヘル地域を脅かしている緊急事態のほんの一例にすぎません。ブルキナファソ、チャド、モーリタリア、カメルーン、マリ、モーリタリア、二ジェール、セネガルで、推定1,000万もの人々が、食糧危機や栄養危機にさらされているのです。ニジェールだけでも、600万人以上が食糧不足に直面し、39万4,000人近くの5歳未満児が深刻な栄養不良に陥っています。マリからの'長旅'によって、益々多くの避難を余儀なくされている子どもたちが衰弱し、栄養不良になったり様々な病気に罹ったりと、非常に厳しい状況に追い込まれています。

こうした状況の中、ユニセフは、パートナー団体と協力しながら、安全な飲料水を定期的に提供しています。これは、避難を余儀なくされている人々を水を媒介とする疾患から守り、さらには栄養不良の脅威からも守るために不可欠な支援なのです。

水と衛生の確保の重要性

© UNICEF Niger/2012/Mebrahtu
マリから避難を余儀なくされたマリアマさんと4人の子どもたち。6日間ロバを引きながら、ニジェールのマンガイゼ避難キャンプまで歩いて避難してきた。

マリアマさんは、夫と4人の子どもたちと一緒に2ヵ月以上もこの避難キャンプで生活しています。昨年の不作により最も大きな影響を受けた地域のひとつ、ティラベリ地域にあるこのマンガイゼ避難キャンプにやって来た当初、マリアマさんは、近隣の村々の井戸から水を汲んでこなければなりませんでした。避難民の流入が続く中、食料や飲料水のみならず、トイレをはじめとする衛生環境の確保・維持、保健医療、子どもの保護などの分野で最低限必要とされる支援のニーズも急増しています。

井戸の水汲みは、伝統的に女の子と女性の"仕事"とされる場合が多いのですが、水汲みに時間を取られてしまうために、(栄養危機が広がる現在の状況の中で)子ども達の命を左右しかねない母乳育児や(支援物資として配付されている)栄養補助食を手に入れたりするための時間を割くことすら難しい状況も見受けられます。

© UNICEF Niger/2012/Therrien
水汲みにきた女の子。彼女も、マリの紛争を逃れ、ニジェールに避難してきた。

さらに深刻な問題は、井戸の水質です。マラマさんの一番下の男の子は、避難キャンプに暮らす多くの子どもたちと同様、井戸の水を飲んで下痢性疾患に苦しみました。下痢性疾患は、世界の5歳未満児の死亡原因の第2位を占めています。

こうした状況を改善するために、ユニセフは、支援活動の最優先課題の一つとして、安全な飲料水の配付に力を入れているのです。 ユニセフは、また、深刻な栄養不良状態にある子どもたちの発見と治療体制(センター)の強化を進めています。また、治療用給食センターへの清潔な飲料水の供給量と衛生施設(トイレ)数の拡充を図っています。

「清潔な飲料水へのアクセスと十分な栄養の摂取の機会を確保することは、栄養問題への取り組みにおいて非常に重要な意味を持っています。」「保健(治療)センターやコミュニティの中に、適切な衛生施設(トイレ)を設置したり衛生的な習慣を普及したりすることは、この取り組みの"鍵"となっているだけでなく、最も費用対効果の高い支援の形でもあるのです。」ユニセフのエリック・アライン・アテグボ栄養担当部長はこう話しました。

拡大する飲料水ニーズへの対応

© UNICEF Niger/2012/Quarmyne
マンガイゼの避難キャンプで、ユニセフが支援した水源から水を汲む人々。手前に見えるのは、「Water Bludder」と呼ばれる巨大な水枕のような仮設貯水タンク。

他のサハラ以南のアフリカ諸国と同様、二ジェールにとって、2015年までに安全な飲料水と基礎的な衛生施設(トイレ)を継続的に利用できない人の割合を半減するというミレニアム開発目標の達成は、非常に難しい状況です。既に国民の半数は、改善された水源を利用していますが、農村部の状況は、改善が進んでいません。

多くの人々が食糧危機、栄養危機、そして避難生活を強いられている緊急事態に対応するべく、ユニセフは、ニジェール政府や地元のコミュニティと協力して、5つの地方で、改善された水源と持続可能な水源管理システムを設置する活動も展開しています。こうした取り組みの中では、コミュニティに設置される水源管理委員会に女性の参加を促すなど、コミュニティを基盤とした水源管理モデル作りも行い、持続可能な水源維持管理を確保するだけでなく、女性の地位向上にも貢献しています。

ユニセフは、二ジェールの水と衛生環境を改善するための資金として、110万米ドルの支援を国際社会に求めています。