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アフリカ干ばつ緊急募金 第59報
マリ:干ばつ危機が深刻化−今日のご飯のあても無い子どもたち

【2012年4月9日 ニューヨーク発】

© UNICEF VIDEO
マリのタコ村の乾燥した大地を通る馬車。この地域では年に1度しか雨が降らず、昨年は降らなかった。

夕食の時間になっても、マリの漁師村タコに暮らすマリアム・ディアナポさんは、お腹を空かせた5人の子どもたちをどうやって食べさせたらいいのか悩んでいました。彼女の家には、わずかボール1杯分のご飯しかないのです。

「今年は、家族を食べさせていくのに本当に苦心しています。ここで漁をして生活していましたが、川の水位が低くなって、魚がほとんどいなくなりました。家の食糧庫はからっぽです。」ディアナポさんは、こう語ります。

サヘル全域では、今、数百万世帯の人々がディアナポさんと同じような厳しい環境を強いられています。この地域で雨が降るのは年に1度だけ。しかし昨年は、その雨が降りませんでした。大地は乾き、水源は干上がり、家畜の牛の数や漁業の収穫も減ってきています。お米の市場価格は、急激に上昇しました。

300万人が危険な状況に

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栄養不良の子どもの治療を受けられるマリのコニオ診療所で、栄養不良の子どもを診てもらうために順番を待つ親子。

マリでは、300万人の人々が、毎日食べるものさえこと欠いている状況です。深刻な急性栄養不良で死に直面している子どもの数は、17万5,000人と推定されていますが、状況がこのまま改善されなかった最悪の場合、この数は22万人にも達する見込みです。栄養不良の治療を実施している保健センターに、子どもを連れてくるディアナポさんのような母親の数は、日に日に増えています。

ディアナポさんの生後10ヶ月の娘のカディアちゃんは、完全に回復するために必要な全ての微量栄養素を含んだ「プランピーナッツ」と呼ばれる、調理しなくても直ぐに口にできる栄養治療食を与えられています。

しかし、保健センターのスタッフは、平年でも間もなく始まる、‘lean season’と呼ばれる収穫高が減り、各家庭の食糧備蓄が底を付く時期が本格的に始まると、センターの対応能力が限界を超えるのではないかと心配しています。

「こうした厳しい状況に置かれている人が、村にはたくさんいらっしゃるので、(これからどんな事態になってしまうのか)とても心配です。今は、収穫はおろか、植え付けの時期も、まだまだ先の話です。さらに6ヵ月以上もこうした厳しい状況に耐えなければならないということになるのです。しかも、人々は既に(飢えに)苦しんでいます。もし今年も、作物を育てて収穫できるほどの雨が降らなかったらどうなるのでしょう?」看護部長のイサカ・トラオレさんはこう話しました。

国連は、2012年中に、命を左右するほどの深刻な栄養不良で治療を必要とする子どもの数は、サヘル地域全体で、100万人以上に上ると推定しています。ユニセフは、サヘル地域全体で子どもたちの治療手段と食糧を確保するため、総額1億2,000万米ドルの支援を国際社会に求めています。また、現在、ユニセフ本部と世界36のユニセフ協会(国内委員会)では、サヘル地域の食糧危機と栄養危機への支援を訴える世界規模のキャンペーンを展開しています。

迅速な支援が急務

マリの状況は、より複雑です。北部の武力紛争により、20万人以上が避難を余儀なくされています。

ユニセフは、パートナーと共に、この地域に迫る危機の影響を緩和するべく、既に数ヵ月間にわたって支援活動を展開してきました。また、医療品を輸送し、子どもたちが保健や水と衛生分野の支援をさらに享受できるよう支援しています。

これ以上の状況の悪化を防ぐためには、支援が迅速に実施されることが極めて重要です。カディアちゃんの容態は、今のところは落ち着いています。しかし、母親のディアナポさんは、これからのことは分からないと思っています。

「もし今年も雨が降らなかったら、本当にどうしたらいいのか分かりません。」(ディアナポさん)