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アフリカ干ばつ緊急募金 第61報
チャド:支援規模の拡大に求められる国際社会からの支援

【2012年4月11日 チャド発】

© UNICEF VIDEO
チャドのンジャメナにある診療所では、栄養不良の治療の一環として、すぐに口にできる栄養治療食を子どもたちに与えている。

カディジャさんの息子のノワルちゃん(生後6ヵ月)は、数日間にわたり嘔吐と下痢の症状に苦しんでいました。カディジャさんは、当初、それは、歯が生え始める乳児期に特有の問題だと考えていました。しかし、高熱が収まらず、カディジャさんは、首都ンジャメナの診療所にノワルちゃんを連れて行くことにしました。そこで、重度の栄養不良の状態にあると診断されたのです。

「家で十分な食事が取れないのです。」「夫は、オートバイタクシーの運転手ですが、もうその収入だけでは、家族は食べていくことができません。」と、カディジャさんは説明します。

こうした状況は、カディジャさんに限ったことではありません。何百人ものお母さん方が、このノートルダムダポストル診療所に、子どもたちを連れてきているのです。

「昨日は、62人の深刻な栄養不良の子どもたちを治療しました。」 「今日は70人を越えています。」 このセンターで看護師をしている栄養専門家でもある修道女のマーセリン・エムポさんは、こう話しました。

既に弱っている子どもたちを襲う危機

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チャドは、慢性的な栄養不良状態にある子どもたちの割合が高い国のひとつ。

今回の危機に襲われる以前から、チャドは、慢性的な栄養不良の割合が世界で最も高い国のひとつでした。この地域には、毎年、‘lean’あるいは‘飢え’の時期と呼ばれる、収穫高が減り、各家庭の食糧備蓄が底を付く時期が訪れます。ユニセフの最新の調べでは、5歳未満児の15.7パーセントが、既に深刻な栄養不良に苦しんでいます。

そうした地域にも関わらず、2011年は、雨が降らなかったのです。

この雨不足が、収穫量の減少をもたらし、栄養不良状態の子どもたちの数を劇増させています。こうした状況は、チャドだけでなくサヘル地域全域に及んでいます。

通常、6月から9月にかけてやってくる‘lean’と呼ばれる時機は、今年は、いつもより早く、4月から始まるものと見られています。また、チャド政府は、穀物価格が22-43パーセント上昇すると推定しており、状況はさらに深刻化しています。この食糧価格の高騰は、子どもたちだけでなく、(栄養不良に陥った)こうした子どもたちに治療を施す保健システムにも影響を及ぼしています。

「中度の栄養不良の子どもたちの治療に使うための小麦粉1袋の値段は、昨年は、1万5,000CFAフラン(30米ドル)でした。今年は、この価格が2万4,000CFAフラン(48米ドル)まで上がっています。」「私たちには、こんな値段の小麦粉は手が届きません。地域の人々も同じ状況だということを想像してみてください。」エムポ看護師はこう話しました。

一刻の猶予も許されない状況

昨年のアフリカの角地域における食糧危機の経験から、ユニセフは、世界保健機関(WHO)と共に、より迅速な対応が取れるよう、重度の急性栄養不良状態の測定に関するガイドラインを修正しました。

「WHOをはじめとするパートナー団体と共に、5歳未満の子どもたちの深刻な栄養不良をより早い段階で診断できるようにするための新しい基準を導入しました。この結果、保健センターに子どもたちをより迅速に照会し、症状が深刻化する前に治療を行えるようになりました。」ユニセフの保健・栄養部門のヤロン・ウォルマン医師はこう話しました。

ユニセフは、パートナー団体と協力して、一時も無駄にすることなく支援活動を展開しています。チャドでは、276箇所を超える数の治療用給食センターを支援。追加の支援も本格的に展開し始めています。

「過去数ヵ月にわたり、“迫り来る危機”を注視し続けてきました。チャドの保健省をはじめとするパートナーと共に、栄養不良の子どもたちを確認する調査・監視センターの数を増やすなど、支援の拡充を続けてきました。常に、一歩先を読みながら支援を拡大してきています。しかし、国際社会からの支援なくては、こうした活動も維持・拡充し続けられません。」 ウォルマン医師はこう話しました。

緊急支援活動は着実に展開されていますが、国際社会からの追加の資金援助が切実に求められています。

複雑な問題

「現在の危機は、様々な要因が重なって起こっています。主な要因のひとつは、食糧の確保が不安定であることです。」「しかし、乳幼児の適切な食事の欠如、保健ケアへのアクセスの不足、そして不衛生な衛生施設(トイレ)や衛生習慣の欠如といった他の要因も関係しているのです。」ユニセフ・チャド事務所のロジャー・ドディノウ栄養プログラム担当官はこのように話します。

こうした状況に対応するため、ユニセフは、パートナーと共に、包括的なアプローチを通して、支援を行っています。

「深刻な栄養不良という差し迫ったニーズに直接対応すること。これはもちろん、現在の支援活動の中心であり、私たちの主要な支援のひとつです。」「しかし、私たちの活動は、これに留まっているわけではありません。保健、水と衛生、教育、HIV/エイズ、子どもの保護などの分野で支援も行っています。こうした活動が、子どもたちが関わる様々な“事故”のチャンスを低減させ、子どもの死亡数を削減し、栄養不良の削減に繋がっているのです。」(ロジャー・ドディノウ栄養プログラム担当官)

ユニセフは、今後8ヵ月間で、チャドの12万7,000人の5歳未満の子どもたちが、重度の栄養不良に直面すると予測しています。また、さらに30万人の5歳未満の子どもたちが、中度の栄養不良で苦しむことが懸念されています。

「今この状況に対応しなければ、状況はさらに悪化してしまいます。」「この危機への対応ができなければ、多くの子どもたちが命を失うことになるのです。」(エムポ看護師)