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財団法人日本ユニセフ協会




ミャンマー サイクロン被害第24報
「子どもに優しい空間」で日常を取り戻す子どもたち

【2008年9月5日 ミャンマー・ボガレ発】

チェット・タン・チャン村の子どもたちのためにできた「子どもに優しい空間」
© UNICEF Myanmar/2008/Stechert
チェット・タン・チャン村の子どもたちのためにできた「子どもに優しい空間」。ユニセフが支援している。

ミャンマーのデルタ地帯にあるボガレ。その町からさらにボートに乗ることおよそ30分のところにチェット・タン・チャン村があります。村まで行き着くのも一苦労。ぬかるんだ道を歩き、バランスを崩しそうになるくらいぐらぐらする木の橋を渡り、木の幹から足を踏み外さないように気をつけてやっとたどりつける村です。

遠くの方から、ギターの演奏と共に子どもたちが歌っているのが聞こえます。「♪清潔にするために手を洗いましょう♪」と、子どもたちはリズムに合わせて歌います。「指一本一本洗いましょう♪」

歌声は、高床式の家屋から聞こえてきます。現在は、ユニセフが支援する「子どもに優しい空間」として使われています。サイクロンで被災した子どもたちのために安全な環境を提供するために設置されたものです。

「毎日およそ100人の子どもたちがやってきます」と、「子どもに優しい空間」で活動するトラシア・ハムウさんは言います。ユニセフのパートナーである「ヤンゴン・カイン・バプティスト女性協会」のスタッフです。村の2人のボランティアと共にここで活動しています。

心の悩みを克服する

5月にサイクロン「ナルギス」に襲われたミャンマー。ユニセフは、エーヤワディ管区とヤンゴン管区に101の「子どもに優しい空間」を設置しました。

ヤンゴン・カイン・バプティスト女性協会は、チェット・タン・チャン村で子どもたちのための心理社会的な支援を行っており、子どもたちの心の悩みを克服する手助けをするために安全に遊べる空間を提供しているのです。

子どものケアのためにこの「子どもに優しい空間」を利用している親の数は増えています。親の中には、走ったりキャッチボールをして遊んだりしている子どもたちの様子を見守り、笑っている人も見られます。

朝早く、ユニセフ支援のかばんを背負った学齢期の子どもたちが、「子どもに優しい空間」の窓を覗き込みます。朝早いというのに、すでに20人以上の子どもたちが、遊んだり、歌ったりしています。これから学校に行く子どもたちも、授業が終わってからここでの午後の活動に参加するはずです。

サイクロン後の活動

研修を受けたボランティアの人々は、ここで子どもたちにお絵かき、歌、ゲームなどのグループ活動を指導します。一方、ユニセフは、栄養補給のためのビスケットを子どもたちに配ったり、適切な衛生や子どもの権利などの大事なメッセージを子どもたちに伝えたりするためにこの場所を利用します。

歌、踊り、お絵かきを通じて自分の心のうちを表現することで子どもたちは「普通の生活」を取り戻しつつあります。
© UNICEF/2008/ Stechert
歌、踊り、お絵かきを通じて自分の心のうちを表現することで子どもたちは「普通の生活」を取り戻しつつあります。(顔に塗っているのは日焼けどめ用の粉「タナーカ」)

ここ数週間の間に、子どもたちはずいぶん元気を取り戻しました。ここでの活動のおかげです。「以前よりずっとよく遊ぶようになりましたし、何より笑うようになりました」と、ひとりの親は話していました。

「子どもに優しい空間」は、子どもたちが日常を取り戻すための場所です。子どもたちは、ここで生活を楽しむ方法を学び、友だちと遊んだり、絵を描いたり、歌を歌ったりして、自分の感情を表現する方法などを知るのです。

「この仕事の一番のやりがいは、子どもたちを幸せにできること」とハムウさん。「サイクロンに襲われた直後、子どもたちはふさぎ込み、脅えていました。でも、今の子どもたちを見てください」と、遊んでいる子どもたちを指差して話しました。

心理社会面での支援

心理社会的な支援は、全世帯がサイクロン「ナルギス」の影響を受けたチェット・タン・チャン村ではなくてはならない支援です。約102人が命を落とし、うち38名が子どもたちでした。

「8世帯がサイクロンにさらわれ命を落としました」と、この村の母親。2歳の子どもをひざに抱えています。サイクロンに襲われたとき、彼女は、片方の手で木にしがみつき、もう片方の腕で、子どもが風と波に持って行かれないよう抱きしめていたと言います。この形のまま一晩。水が引いて、地面を歩いても平気とわかってからやっと木から手を離し、崩れた我が家に戻ったのだそうです。

「着ているもの以外はすべて失いました。でも・・・生き残ることはできました」と彼女。

この村の全ての人々が同じような悲しい経験をしています。

「子どもに優しい空間」で働くスタッフとボランティアの人々は、コミュニティ支援グループの設立にも関わっています。子どもの保護を担当してもらうためです。

「サイクロン・ナルギスに襲われる前、私たちは子どもの権利について、本当には理解していませんでした。子どもたちの保護についてはあまり考えが及ばなかったのです」とチェット・タン・チャン村の支援グループ7人のうちのひとりが言います。「私たちは、たくさんのことを学んでいます。ユニセフの全ての支援に対し、とても感謝しています。『子どもに優しい空間』の運営を続けたいと思いますし、できる限り子どもたちを守って行きたいと思います。」