公益財団法人日本ユニセフ協会
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ソマリア干ばつ緊急募金 第6報
ユニセフ広報官からの報告
ダダーブまでの過酷な旅

【2011年7月25日 ケニア・ダダーブ発】

干ばつによる深刻な影響を受けているアフリカの角地域を視察に訪れたユニセフのクリストファー・タイディ広報官による報告です。

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© UNICEF Kenya/2011/Tidey
ケニア・ダダーブにある病院で、栄養不良の治療を受ける子どもとその母親。

100キロ近くにおよぶソマリアの国境からダダーブにある避難民キャンプまでの砂埃の道のりは、一見すると誰もいない乾燥地帯が広がり、まるで別世界を旅しているようです。四輪駆動車は、道に横たわっている動物の屍を避け、揺れ動きながら進んでいきます。こうした動物たちの骨は、照りつける太陽で真っ白。葉のない木々や低木が、干ばつと死に直面している場所にきたことを告げていました。

間もなく、人々が目に入ってきました。女性の華やかな衣装と背中におぶられている赤ちゃんの小さな影が見えました。付き添う人や杖がないために、恐る恐るゆっくりと歩いている年配の男性と女性たち。弟や妹に寄り添いながら他の家族に遅れないようについていく子どもたちもいます。

頬のこけた顔に浮かぶ疲れきった表情が、食べ物と飲料水を求めて数百キロ以上も歩いてきた困難な長旅を物語っています。全ての人々が、この不毛地帯を歩き、救援を求めてやってきているのです。しかしながら、その多くの人々の望みは、いまだに果たされていません。

何も食べるものがない

ソマリアの干ばつと飢餓により、多くのソマリアの人々が、支援を求めて避難を余儀なくされています。何千人もの人々が、幸運にも長旅を生き延びて、毎日ダダーブにある避難キャンプに辿りついています。こうした人々は疲弊し、飢餓状態に陥りながらもやってきているのです。そしてその大部分の人々は、この長旅の途中で、家族のうちの何人かを失っています。

避難民の中でも特に子どもたちの厳しい状況が、干ばつによる犠牲者の数を左右しています。現在、ソマリア南部の2地域で、飢餓状態にあることが宣言され、アフリカの角地域の半乾燥地域と乾燥地域では、栄養不良の割合が危険域に達しています。約78万人の子どもたちが命の危険にさらされ、緊急支援が必要な状態です。エチオピア、ケニア、ソマリアの計223万人の子どもたちが、急性栄養不良に陥っているものと推定されています。

ダダーブにあるハガデラ病院で、4人の子どもを持つ父親のアブディレさんに会いました。アブディレさんの子どもの1人、アデンちゃん(3歳)は、深刻な栄養不良で治療を受けています。

「干ばつの影響で作物も家畜も失い、食料は何もありませんでした。」「ソマリアからダダーブまで、25日間、歩き続けました。妻は、その途中で亡くなりました。ですから今、1人で4人の子どもの面倒を見なければなりません。」

集中的なケア

© UNICEF Kenya/2011/Tidey
ケニア・ダダーブにあるハガデラ避難民キャンプにある病院で、子どもを背中に抱えながら順番を待つ母親たち。

アブディレさんと子どもたちが、ハガデラ避難所に辿り着いたとき、アデンちゃんは、非常に危険な状態でした。何かを飲み込む力さえなく、すぐに緊急治療を行うために避難キャンプの病院へ運ばれました。これは、6日前の出来事です。

アデンちゃんと父親のそばに座っていると、アデンちゃんに力が戻りつつあることが分かります。アデンちゃんは、ユニセフが提供している治療用の食事を取り、元気を取り戻しつつあり、現在、支えがなくても頭を起こすことができるようになりました。しかしながら、アデンちゃんのこの回復は非常に不安定なものです。アデンちゃんの場合、医師たちが注意深く、最大限に配慮して治療を行う必要があります。やせ細ったアデンちゃんの体重は5キロ。皮膚感染症や呼吸器感染症に苦しんでいるのです。

「6日前、アデンちゃんを見たとき、生きる力も残っていないのではないかと心配していました。でも、こうしてアデンちゃんが回復している様子を見ることができて嬉しいです。」「深刻な栄養不良に苦しむ子どもたちに会った後、病院を離れるときはいつも、もう一度この子たちと会えるようにと祈っています。」ユニセフのパトリック・コドジア栄養担当官はこのように話しました。

食糧不足

© UNICEF Kenya/2011/Tidey
栄養不良によりケニア・ダダーブにある病院に入院し、現在、自分で食べることができるようになったモハメッドちゃん。

ダダーブにある病院で行われている栄養不良の子どもたちに対する治療の最初の目標は、子どもたちが自分で食べられるようになることです。アデンちゃんの隣のベッドに座っているモハメッドちゃん(3歳)は、今日、この目標を達成しました。私は、この様子を見て本当に感動しました。

残念ながら、この危機が終焉に向かいそうな場所はどこにもありません。このアフリカの食糧危機は、過去20年間で最悪。現在、世界最悪の状況です。アデンちゃんやモハメッドちゃんをはじめとするソマリアからの苦難の旅を生き延びた子どもたちがいる一方、その他の数千人もの子どもたちが、ダダーブへの旅の途中で命を落としているものと見られています。