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財団法人日本ユニセフ協会




ユニセフ

◆スーダン・ダルフール地域緊急支援(5)◆

スーダン・ダルフール緊急募金の受付を開始しました

ダルフール概況

2003年以来、何千という村人がジャンジャウィードと呼ばれる民兵組織に殺害され、略奪に遭い、レイプされ、およそ160万人の住民が国内避難民となっている現在のダルフールの状況を、国連は世界最悪レベルの人道危機とし、警告を発しています。

スーダンでは、11月9日に休戦のための2つの協定がスーダン政府と反政府勢力との間で調印されました。一つはダルフール上空に軍用機飛行禁止空域を設定すること、もう一つは人道的状況を改善することへの合意です。しかしながら、治安回復に向けてこうした前向きな1歩を踏み出したにもかかわらず、依然として紛争は止む気配を見せず、それどころか略奪や衝突はいまだ増加しています。その結果さらに多くの国内避難民を生み出し、人々は人道支援に頼らざるを得ない状況になっています。この紛争の影響を受けた住民はすでに202万人に達し、そのうち160万人が国内避難民となって家を追われています。

いま懸念されているのは、その国内避難民に警察や武装兵士が圧力をかけ強制移動させている点です。国連のアナン事務総長は、強制移動とそれに伴う暴力行為は人権侵害であり、国際法に抵触するとして、スーダン政府に対し強制移動の停止を呼びかける声明を発表しました。

また、11月下旬には休戦協定に違反する武力攻撃が激化し、人道支援物資を避難民へ届ける道が絶たれています。人道支援のために設置された栄養補給センターのおよそ50m先に爆弾が落とされるといった事態に、支援機関は職員を退避させるなど緊張状態が続いています。11月19日、国連安全保障理事会は、隣国ケニアにおいてスーダンの問題解決に向けた異例の協議を開催し、スーダン政府と反政府勢力に和平をせまる決議を採択しました。

増え続ける支援ニーズに応え、さらなる人々の移動や帰還に備えるために、今後さらに支援活動を拡大していかなければなりません。

ユニセフの緊急支援最新情報

1.保健

2.栄養

3.水と公衆衛生

4.教育

5.子どもの保護

6.食糧以外の物資

7.プログラム支援

 

1.保健

プライマリーヘルスケア

2004年10月17、18日に開催したプライマリーヘルスケアに関するワークショップには、保健省、自治体の保健課、国連機関やNGO等の代表者158名以上が出席し、大きな成果を得ました。プライマリーヘルスサービスの対象範囲や、地域間もしくは地域内での格差、サービスの質や基準、モニタリングの方法などに焦点を当てた討議が行われ、全ての活動団体同士の協力体制を強化し、データ収集の改善、モニタリングと運営、最低限のプライマリーヘルス用品が全ての保健施設に行き届くようにすること、そして職員への総合的な研修計画を展開することが提案されました。子どもの保健、母親の保健、疾病調査に関する具体的な提案もされ、技術の追跡調査小委員会で今後さらに検討されます。地域レベルで、今後も同様の参加型研修を連続していくことが決定されました。そして、提案されたことの進行状況を確認するために、6カ月後に追跡調査の会合が開かれることになっています。

保健施設

現在、127以上の保健施設や24の移動保健サービス団体が必要な薬、研修、または他の形でユニセフのサービスを受けており、約121万9000人がプライマリーヘルスケアを利用できるようになりました。ケアの質の改善も見られます。

予防接種拡大計画の促進

追加で行われた促進活動によって、9カ月から15歳の子ども約3万人がはしかの予防接種を受け、ダルフール全体ではしかの予防接種を受けた子どもたちは205万3,000人になりました。その結果、はしかの報告件数は著しく減少しました。しかし、はしかは根絶されたわけではなく、いまだに週1件の頻度で報告されています。今後も南部と西部で同様のキャンペーンを行い、対象である260万人の子どもたちの格差をなくすことを目指しています。

 

2.栄養

ユニセフは現在、栄養補助食、資材、調整業務などを通じて38の治療的栄養プログラムの支援をおこなっています。5月以来このプログラムに登録した子どもの数は8750人を超えました。また、ユニセフは約50の補助食品支給プログラムの支援も行っています。

ダルフール西部の配給センターの大半では、来訪者数が減少傾向を示しました。それに対して、南部と北部では入場者数は一定数かもしくは増加しています。入場者数の減少は、一般食の配給や補助食品の配給によって子どもたちの栄養不良が悪化することを防ぐことができていると解釈することができます。しかし楽観するには早すぎます。国連世界食糧計画の調査でも、子どもの栄養不良率は依然として高い数値を示しています。キャンプの強制移動や戦闘行為による社会的動揺が食糧不足を悪化させ、状況の改善を後退させています。

 

3.水と公衆衛生

給水支援は、緊急的な水供給から給水システムの維持管理と品質管理へと移行しています。ユニセフは給水システムの強化と給水基準のモニタリング、これまで確立したシステムの整備と維持を強化するために活動を続けています。ユニセフは約1000以上の給水システムを支援していますが、ダルフールの人口の約60%はいまだに清潔な水へのアクセスが確保されていません。現在の給水システムの実施と維持は広範囲及びますが、これ以上の給水エリア拡大に関しては課題が多く残されています。

公衆衛生

ユニセフは10月末までに約2万5331基のトイレの建設を支援しました(目標は7万8919基)。この活動によって50万6000人の人たちが恩恵を受けました。しかし内戦の影響を受ける人口が増え続けキャンプ数が増加する中、この数値では十分とはいえません。安全かつ適切な排泄処理設備へのニーズは引き続き増加しています。2004年9月の時点で、約58%もの人たちが未だトイレなどの衛生施設のない生活をしています。またユニセフは人口密度の高いキャンプにおける埋立て処理の方法を調査し、より環境に適した処理法を提供していますが、数多くの地域における同様のニーズにすべて対応するのは難しい状況です。既に設置された施設へのメンテナンスも含め、質を確保しつつ公衆衛生を今後も提供するには追加資金の提供が不可欠です。

 

4.教育

2004年8月末にユニセフは、7万5683人の就学を支援しました。2004年10月末時点では14万913人へ就学支援しています。今後は2004年12月末までに15万3395人、2005年には約30万人への就学サポートを目標値と設定しています。適切な学校設備や教員の確保、研修プログラム、学習資材や学用品の提供にむけた支援が必要です。

ユニセフの教育施設支援も順調に進んでいます。2004年10月末には約883の仮設教室が建設、もしくはテントとして組み立てられました。また、避難民を受け入れたコミュニティでは54教室が改修されました。学校の建設や改修作業は120日プランが終了するまで続けられ合計1688の教室が支援されます。

しかしダルフールにおいて教育の普及を妨げる深刻な足かせとなっているのは、実は有資格教員の不足であるということが明らかになってきました。また、教員に対する給与も十分とは言えず、教員が働く環境が整備されていないことも問題として挙げられます。

2004年9月に実施されたユニセフ支援による教員研修プログラムは大きな成果を生みました。教授法や平和教育に関する研修を実施し、延べ1686人の教員が参加しました。(但し教員の中には複数のコースを受講していた参加者もあり、研修に参加した教員の実数は上記数値より若干少ないものと思われます)教員研修プログラムは教育の質の向上に寄与すると同時に、個々の教員の教育に対する意欲を高める効果があります。

教員研修プログラムが成果を収めているとはいえ、教員数の欠如は依然として深刻な問題です。こうした状況のもと政府教育省は、アブ・シュークキャンプに滞在する393人の教員のうち、274人を出身村に帰省するよう通達しました。しかし、実際には各自の出身地の不安定な治安状況を懸念し、教員の大半が帰省を拒否しています。この問題に対する解決策はいまだに見つかっていません。結果として授業は中断され、同時に教員も危険な状況に置かれています。

 

5.子どもの保護

2004年10月末日現在、3万7948人の子ども達が学校で心のケアに関するプログラムを受け、3万7049人の子ども達が学校外の「子どもの空間」センターで支援を受けています。子どもたちが精神的に強いダメージを受けた体験に対処するために設定されたレクリエーションプログラムが、これら学校のケアプログラムや「子ども空間」センターに用意されています。センターでは、性暴力を含む深刻な人権侵害を受けた子ども達が自分達の意見を話し、心の回復や体験を報告できるよう支援する環境を提供しています。

この9月、10月は特に、性暴力への対策を強化し、対応策の優先順位選定に重点をおきました。ダルフールでは女性や女の子が受けた暴力について自ら主体的に報告できるための安全な環境を整えることが不可欠です。被害者に対するサービスを充実させ、性暴力の被害を最小限に留めることにもっと多くの努力を払う必要があります。こういった活動は、保健サービスやライフスキルの構築と連動させることにより、反発や誹謗中傷を避け、ミュニティ内部に深く浸透させることが肝要です。警察の信頼がないことや国内避難民の移動や帰還に対する圧力から、現時点で性暴力を抑止することは非常に困難な状況に陥っています。

ユニセフはUNDPと協力し、警察官、警備員、NGO、各コミュニティーの主導者等、計517名に対して、ユニセフが設定した子どもの保護に関する指針のオリエンテーションを実施しています。その他の機関も含め同問題に対する法執行当局側からの対策が打ち出されつつありますが、その効果や改善状況を把握すべく更に努力を重ねています。

スーダン政府は、武力紛争や性的虐待、性的搾取に晒されている子どもに関する2つの選択議定書を2004年10月末日に承認しました。同議定書においてスーダン政府は、子ども兵士の除隊、並びに今後の入隊を防止する旨を宣言しています。しかし、政治と治安の極度の緊張が現実であり、子ども兵士の正確な状況把握は容易ではありません。

残念なことにこの期間中にいくつかの不発弾や地雷の事故が報告され、ダルフールでは地雷に対する啓蒙プログラムが今後の課題として挙げられました。ウムバルでの対戦車地雷の事件に続き(2名の国連安全保障理事会の英国人が死亡)、北ダルフールの男子校では手榴弾が爆発し、16人の子どもが負傷しました。男の子達は手榴弾を見つけて学校に持っていき、教室で爆発したと報道されています。ユニセフは、ダルフール北部で地雷や不発兵器に関する危険を伝えるキャンペーンの準備を開始しました。

 

6.食糧以外の物資

ユニセフはシェルターと食糧以外の物資を調達し、ケア・インターナショナルとの連携でダルフールの住民や機関に提供しています。また、ユニセフとケアは州、国家レベルの両方の調整委員会に参加しています。国連合同物流センター(UNJLC)によると、10月中旬から毛布44万2406枚、寝具用マット2万3739枚、蚊帳5万4817張、プラスチックシート22万4101枚が貯蓄され、シェルターのニーズに合わせて国内避難民のコミュニティに配布されました。また、清潔な衛生環境を促進するために、石鹸53万6671キロ、バケツ15万875個、缶25万6165個がすでに配布されたか、もしくは貯えられています。衣服16万7700枚と公衆衛生用品18万3603個を含めた個人用品はすでに配布されたか、もしくは貯蔵されています。

 

7. プログラム支援

過去2カ月で、ユニセフはダルフールでの業務能力を高めるために追加的な対策を講じ、ユニセフ・チャド事務所との連携も強化しました。ダルフール緊急事態ユニセフ特別代表の任命と同時に、ダルフール危機の特別調整グループが設置されました。グループ全ての担当が任命される段階では、約140人の現地職員、国際職員がダルフールでの任務についているはずです。より適切な情報伝達設備を整えることで、ダルフール事務所の運営状況も改善されました。


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◇ 募金のお願い ◇

 日本ユニセフ協会では、スーダンをはじめ人道危機に対するユニセフの支援活動を支援するための募金を下記の口座にて受け付けています。皆様のご協力をお願い申し上げます。