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財団法人日本ユニセフ協会




スマトラ沖地震・津波情報

子どもたちの健康を脅かす感染症の脅威

津波の被害を受けた地域では、衛生環境の悪化や安全な飲み水、医薬品の不足などが原因で、300万人から500万人にのぼる人々の命と健康が脅かされています。そのうちの3人に1人は子どもです。

一刻も早く大規模な取り組みを始めなければ、下痢性の感染症や呼吸器系の疾患、蚊によって媒介される感染症が蔓延し、多くの人命が失われる可能性があります。以下のような病気や感染症が、今、津波の難を逃れた被災者の命と健康を脅かしています。

【下痢性疾患】
下痢は、細菌や病原菌、特に排泄物で汚染された水の中に潜む細菌等が口を通じて体内に摂り込まれることによって起こります。子どもたちは下痢にかかると脱水症状や栄養不良になり、命を落としてしまう可能性があります。経口補水塩(ORS)を使って治療することにより、多くの場合、下痢による死を防ぐことができます。命に関わる下痢性疾患には以下の3つがあります。

コレラ
感染力が非常に高く、重い症状を引き起こします。主に幼い子どもが感染し、水のようなひどい下痢や激しい腹痛、嘔吐を繰り返します。適切な治療を施さなければ、急性の脱水症状を引き起こして死に至ります。災害時にコレラが発生した場合、患者の半数までが死亡する可能性があります。コレラが蔓延してしまった場合でも、ORSを使うことによって、8割から9割の患者を治療することができます。

チフス
感染力が非常に強い、細菌性の感染症。主に子どもが感染し、頭痛や高熱、吐き気、食欲の減退などの症状を伴います。チフスには抗生物質による治療が最も有効です。

赤痢
出血を伴う下痢で、さまざまな微生物によって引き起こされます。糞便や尿、汚染された水が元になって蔓延し、血の混じった下痢に加えて、通常激しい腹痛や高熱、直腸部の痛みを伴います。5歳未満の子どもが、赤痢患者の69%、また赤痢によって死亡した人の61%を占めます。

【はしか】
はしかは人から人へ、空気を通じて伝染するウイルス性の感染症です。感染力が非常に強く、体内の免疫システムを弱体化させることによって、子どもたちは下痢や肺炎、栄養不良から引き起こされる合併症の危険にさらされます。症状としては高熱や目の充血、体中の痛み、咳などを伴います。また、赤い発疹が頭部や顔に現れ、背中や胸、手足へと広がっていきます。

はしかそのものに対する治療法はありませんが、一人あたり14円足らずのワクチンで予防することができます。はしかにかかってしまった場合でも、ORSやビタミンA補給剤を使って症状を緩和させることができます。緊急事態においてはしかの流行を防ぐためには、ほぼすべての子どもたちに予防接種を受けさせなければなりません。はしかが流行してしまった場合、患者の4人にひとり以上が命の危険にさらされます。

洪水、そして洪水が去った後に取り残された停滞水は、マラリアやデング熱を媒介する蚊が繁殖する絶好の場となります。一つの場所に大勢の人々が避難して「人口密度」が高まることにより、蚊を通じた病気の広まりも起こりやすくなります。

【マラリア】
マラリアは蚊を通じて広がる重い病気です。マラリアの発生地域では、幼い子どもの死亡原因の第一位をこの病気が占めることもあります。高熱や嘔吐、眠気やけいれん発作などの症状を伴い、感染した場合、一日以内に治療を施さないと死に至る危険性があります。マラリア流行時には、最大で患者の20%までが死亡する可能性があります。

【デング熱】
デング熱は乳幼児や子ども、おとなが感染する重い病気で、インフルエンザに似た症状を引き起こします。マラリアと同様、蚊を通じて伝染しますが、治療法はありません。アジアでは、子どもの入院や死亡の主な理由のひとつがデング熱です。デング熱の流行時には、流行地域の人口の最高90%までが感染し、全患者数のうち20%までが命を失う可能性があります。