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財団法人日本ユニセフ協会




 

スマトラ沖地震・津波情報

 

スマトラ沖地震・津波の被災地における緊急支援活動
日本人ユニセフ職員による現地報告(ユニセフモルディブ事務所)

東アジア・太平洋地域事務所(EAPRO)
アシスタント・プロジェクト・オフィサー 近藤 智春さん

モルディブでの仕事
image1 私は、緊急援助と復興支援活動のサポートのため、バンコクにあるユニセフ東アジア・太平洋地域事務所より1カ月の予定でユニセフ・モルディブ事務所に派遣されました。主な仕事は、現地の教育担当職員とともに教育分野における緊急支援や、特に、教育庁や他の機関と調整しながら物資調達・支給を行うことです。

モルディブの被害状況
モルディブは、インドとスリランカの南西に位置する島国で、このたびの地震・津波の被害規模はインドネシアやスリランカに比べれば小さいものでしたが、首都マーレ島の約150キロ南に位置するター環礁マディフシ島では、半数近い島民の家が全壊または半壊し、政府が設営したテントで暮らしている家族が75世帯以上もいます(島民全人口1005人)。テントは平坦で何も障害物のないところに設営されたので、昼間は直射日光によりテント内は沸騰するほど暑く、夜も喚起口が少ないテントは大変です。

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ユニセフの支援活動
ユニセフは、緊急支援活動の一環として、できるだけ早く学校を再開させるよう取り組んでいます。ユニセフは、被害にあった学校・教師・生徒たちに対して、教科書の配布やスクール・イン・ア・ボックス(学校キット)・文房具・鞄・制服等の支給、また臨時教室の設営、机や椅子などの教室に必要な備品の調達をしています。中・長期的な支援としては、地震・津波の発生前に試験的に実施されていた「子どもに優しい学習環境」の設立を全国的に拡大する予定です。

学校再開に向けた活動は、ここモルディブでも着々と進んでおり、1月25日にモルディブの全学校が開校しました。 ユニセフチームは教育省大臣と大統領のお嬢様と共に、マディフシにある学校の開校式に参加してきました。マディフシの学校は、ユニセフの「子どもに優しい学習環境プロジェクト(Child Friendly Learning Environments Project)」のパイロット校の一つです。地震と津波の被害を受けた校舎の補強をし、タイルを張るなどの作業が終わり、保管されていた教材を教室に広げて授業が行われました。その光景を見て、教頭はスピーチの中で「この教室は島の希望となりました。この教室がこれから島全体がどのように復興していけるかを示してくれています。」と述べていました。

私自身も「子どもにやさしい学校(Child Friendly School)」をいくつか見学しました。その中で、モルディブ事務所の同僚であるアイーシャ・ディディ教育事業担当官は、授業を楽しく、「学べる」質を高めるためのアイディアを駆使したプロジェクトを実施していました。もちろん、多種多様な教材や道具があるからこそできる事もありますが、天井や壁の色を変えて装飾を施し、教室を明るくすることで、学校だけでなく、島全体の雰囲気が変わることも期待されています。子どもたちが学校で勉強し、友達と仲良く遊ぶことにより、モルディブの人たちに希望を与えられることを望んでいます。

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津波被災地の子どもたちをどう守るか?
ユニセフは子どもたちを搾取から保護する必要性を訴えています。

【ロンドン発、2005年1月8日】
ユニセフは、本日1月8日、子どもの搾取・虐待・人身売買といった犯罪の魔の手から、津波の被災地にいる子どもたちを守る対策が今すぐに必要であると訴えました。その中で、被災地の孤児やその他の弱い立場にある子どもたちの保護に不可欠な対策措置の概要を説明しています。

「必要とされる子どもの保護活動が順調に進められているのは喜ばしいことです」ユニセフ事務局長、キャロル・ベラミーは述べました。「しかし、もっとペースを上げて子どもたちの保護に取り組まなくてはいけません」「この混乱に乗じて子どもたちを食い物にしようとしている悪徳業者たちがすでに動き始めているのです」

津波の被災者のうちで最も弱い立場にいるのは、親をなくし、家族と離ればなれになってしまった子どもたちです。正確な数値はまだ分かりませんが、死者や避難民の数から推測しただけでも何千もの子どもたちが親を失い、家族も行方不明です。調査は現在も進められており、早ければ来週にもこの問題の深刻さが明らかにされます。

ユニセフは、立場の弱い子どもたちを搾取から守るための早急に必要な5つの対策措置を挙げています。

  1. 住む家を失った子どもたちの登録:

  2. どの子どもが身寄りがなく、孤児になってしまった可能性があるかということと、彼らの正確な所在を把握することが、子どもを守る最初の大事なステップであるとユニセフは考えています。

    インド・スリランカ・インドネシアなど、津波被害が最も大きかった国では子どもの身分登録が行われています。今回の大惨事の中心地であるアチェでは、5つの子どものための登録センターが避難キャンプ地に開設し、さらに15の登録センターが来週中に開設される予定です。

  3. 安全な保護施設の提供:

  4. 保護者とはぐれた、もしくは保護者を失ったと判断された子どもたちは、彼らを守る責任がある大人たちの一時的な保護下に置かれなくてはいけません。避難所では、保護者のいない子どものための保護施設を特別に設置することができます。あるいは、家族や保護者が見つかるまでコミュニティを基盤とした子どもの家で保護されることも可能です。こういった選択肢が各被災地で考慮されていますが、さらに考える余地があります。

  5. 親類縁者の所在追跡:

  6. 子どもの名前・住所・所属するコミュニティ・生年月日を登録し、それをもとに地方や政府当局がNGO団体と協力して、災害で引き裂かれた家族の追跡調査と生き残った家族同士の引き合わせを行います。さらにこの登録票は、関係当局がおばやおじ・祖父母・年上のきょうだいといった遠い親戚縁者の捜索をする際にも利用できます。

  7. 警察や関係各局に注意を喚起:

  8. ユニセフは、警察・国境警備隊・教師・ヘルスワーカーやその他の一般の人々に、子どもが搾取される恐れがあると注意を呼びかけること、そして、子どもを守るために彼らの協力を求めることが大事であると考えています。一般に向けた組織的な意識改革のプロセスは被災地で始まっています。スリランカでは、政府とユニセフを含めた協力団体がこの問題をメディアに提起し、全ての人が保護者のいない子どもたちに気を配る必要があることを知ってもらう活動をしています。インドネシアでは、警察と湾岸警備隊に対して特別な警戒を命じています。

  9. 特別の国家対策(子どもの海外渡航禁止など):

  10. 津波被災地における子どもの人身売買が特に心配されているインドネシアでは、16歳未満の子どもが親と同伴でない場合、アチェから国外へ出ることを一時的に禁止する措置をとっています。インドネシア政府はさらに、全ての子どもの身分確認と家族の追跡調査が完了するまで、アチェの子どもたちとの養子縁組を一時的に禁止しています。

ユニセフは、危機状況における国際基準と照らし合わせ、子どもをできるだけ血縁の近い家族やコミュニティで保護する活動をしています。血縁関係から子どもを完全に断ち切るよりも、遠い親類縁者と住むことのほうが一般的に良い解決法であると考えられています。

「家族とコミュニティには、子どもたちを監視し保護する働きがあります」ベラミー事務局長は述べています。「多くの家族がばらばらに引き裂かれ、多くのコミュニティが完全に消滅しまった今、私たちは別の方法で子どもたちを守るために協力し合わなくてはいけません。すべての大人たちが津波の被害にあった子どもたちにとって一番良いことは何かを考えて行動するべきです」

ユニセフは、子どもの人身売買・性的搾取・過酷な児童労働は、決して新たに発生した問題ではないことを強調しました。しかし、12月26日に起きた津波によって秩序や体制が崩壊し、最も弱い子どもたちに対する破廉恥で卑劣な搾取の問題が拡大しつつあるとユニセフは警告しています。ベラミー事務局長は、違法な人身売買は巨大ビジネスであり、麻薬や武器の不法取引と同様、金銭と強い利害関係が絡んでいることを指摘しています。

「われわれは子どもの搾取を企む犯罪を阻止するため、子どもの保護に全力で取り組まなくてはなりません」ベラミー事務局長は述べています。「各国と政府関係者はこの犯罪の脅威に迅速に対応し、必死になって子どもを守ろうとしています。われわれも彼らと協力して子どもを保護しなくてはいけません」

 

ユニセフ、感染症対策を展開

地震・津波発生から1週間以上を経た各地で、感染症の発生・拡大が危惧される中、ユニセフは、各国でコレラやはしか等の感染症対策をはじめています。

インド南部のタミールナドゥ州・ケララ州では、飲料水やシェルターの支援等の緊急支援活動に平行し、今後1週間に、タミールナドゥ州で10万人、ケララ州で1万5,000人の子どもに、はしかのワクチンと感染症への抵抗力を向上させるビタミンAの投与を実施します。また、インドネシアをはじめとする他の被災国でも、同様の救援活動を開始または準備しています。

一方、コレラ等の下痢性疾患に対応する為、被災した全ての国・地域で、給水活動や固形・粉末の浄水剤の提供、衛生環境の整備(水の汚染を防ぐための簡易トイレの設置や石鹸などの配布等)を実施している他、下痢性疾患の応急処置・治療用の経口補水塩を避難所などに配布しています。また、特にコレラの発生が危惧される地域に対しては、「コレラキット」と呼ばれる患者治療用の医療セットを準備しています。

ユニセフは、1月3日、当面の救援活動費用として8,159万米ドル(約84億円)が必要になると発表。
国際社会から一層の支援を求めている。

内訳:

インドネシア30,912,000米ドル(約31億8000万円)
スリランカ25,032,000米ドル(約25億8000万円)
モルディブ16,436,000米ドル(約16億9000万円)
タイ2,716,000米ドル(約2億8000万円)
その他の地域6,496,000米ドル(約6億7000万円)
注:今回発表された費用には、地震発生以来、被災各地の救援活動に既に充てられている費用も含まれ、今後、現地状況が更に明らかになるに従い金額は逐次更新される。

 

スマトラ沖地震・津波情報

子ども400人が「保護」と称され連れ去られる

ユニセフ、捜索と対策に奔走

インドネシアでは、身元や保護者の有無の確認が行われないまま、被災地アチェから、数多くの子どもが「保護」の名のもとに連れ出されはじめています。同国社会福祉省などによると、これまでに400人近くがアチェからジャカルタに連れてこられ、「里親」を申し出た人々や「親戚」を名乗る人々などに「引き取られ」たりモスクなどで保護されていると報告されていますが、殆どの子どもの所在がわからず、実質的に「行方不明」状態にあります。また、現地では、子どもが人身売買目的で連れ出されているとの報道もされています。
ユニセフは、孤児の養子縁組については、子どもの世話をする意思と能力がある保護者や親戚、あるいはコミュニティ・メンバーが誰一人としていないことが確定した場合に限るという活動原則を持ち、紛争や今回の場合のような緊急事態においても、同様の原則を堅持し、少なくとも2年間という期間を家族の追跡調査のために費やしています。これまでの膨大な経験から、緊急事態の中で家族と離れ離れになったとしても、そうした子どもたちは必ずしも孤児ではないということが明らかになっているからです。 また紛争や自然災害などの緊急事態のさなかにいる子どもたちは、暴利をむさぼる悪辣な犯罪者による搾取の被害に遭いやすい、ということも経験上明らかになっています。そうした破廉恥な犯罪者は、往々にして養子縁組の斡旋業者を装っています。

インドネシアを始め被災各国で、ユニセフは、現地政府やNGOなどと共同して、被災地で保護者から離れ離れになっている子どもの発見・登録やサポートセンターの開設を始めています。

ユニセフは、1月3日、当面の救援活動費用として8,159万米ドル(約84億円)が必要になると発表。
国際社会から一層の支援を求めている。

内訳:

インドネシア30,912,000米ドル(約31億8000万円)
スリランカ25,032,000米ドル(約25億8000万円)
モルディブ16,436,000米ドル(約16億9000万円)
タイ2,716,000米ドル(約2億8000万円)
その他の地域6,496,000米ドル(約6億7000万円)
注:今回発表された費用には、地震発生以来、被災各地の救援活動に既に充てられている費用も含まれ、今後、現地状況が更に明らかになるに従い金額は逐次更新される。

 
 

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◇ 募金のお願い ◇

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