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公益財団法人日本ユニセフ協会
 

エボラ出血熱緊急募金 第14報
シエラレオネ:
エボラ出血熱から回復、143人に
健康を取り戻した人々の喜びの声

【2014年8月7日 シエラレオネ発】

エボラの症状について住民にポスターを見せながら説明をする保健員。(シエラレオネ)
© UNICEF/NYHQ2014-1065/Romero Torrecilla
エボラの症状について住民にポスターを見せながら説明をする保健員。

西アフリカでの感染拡大が続くエボラ出血熱。ギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネの4カ国で、これまでに1,848名の感染を確認、死者は1,013名に上ります(8月9日時点:ジュネーブ時間8月11日発表)。8月7日〜9日の3日間で新たに計69名が感染(確認、推定、疑いを含む)し、52名が死亡しました。各国別では、ギニア(感染11名、死亡6名)、リベリア(感染45名、死亡29名)、ナイジェリア(感染0名、死亡0名)、シエラレオネ(感染13名、死亡17名)となっています。

WHO(世界保健機関)は、8月12日、人体への安全性が検証されていない治療法や医薬品の使用を認めるか否かを協議。供給できる医薬品の量が限られている点も含め、安全性や副作用、治療の選択肢や治療を受ける人の優先度などを協議した結果、条件付きでの使用を認めました。

また、エボラ出血熱は早期の診断と隔離、感染者との接触した人の状況確認、厳しい感染コントロールによって、封じ込めが可能であるとの点も強調しています。

各国別の感染者の内訳は以下の通りです(2014年8月9日時点)。

ギニア 感染者506名(確認362名、推定133名、疑い11名) うち死者373名
リベリア 感染者599名(確認158名、推定306名、疑い135名) うち死者323名
ナイジェリア 感染者13名(確認0名、推定10名、疑い3名) うち死者2名
シエラレオネ 感染者730名(確認656名、推定37名、疑い37名) うち死者315名
※統計数は、症例の再分類やラボのデータ、症例の統合などによって、都度変動しています。

ユニセフは、感染と感染拡大を防ぐため、一般市民に向けた教育・広報活動、予防や治療に必要な医療品等の提供、医療従事者への研修・育成などを行っています。

* * *

シエラレオネではエボラの感染拡大が続いています。多くの感染者が報告されている地域の病院を訪れたユニセフ・シエラレオネ事務所コンサルタントのジョー・ダンロップが、エボラから回復した住民の声や、現地の様子を報告しています。

143人がエボラから回復

先週、エボラ出血熱の感染が最も多く報告されている地域のひとつである、シエラレオネ東部州ケネマ地区を訪れました。到着したときすでに、エボラはこの地に広がっており、すぐに収束にむかうことは不可能に感じました。多くのレストランの出入口には手を消毒するための塩素バケツが置かれ、建物の壁にはエボラに関する情報が載ったポスターが貼られています。音が途切れ途切れ聞こえるラジオからは、エボラに関する情報が流れていました。道端で会話をする住民たちの会話では、エボラに関する話題で持ちきりです。今では握手の代わりに、軽く肘と肘を合わせて挨拶をしています。

エボラの感染が拡大するこの地で、患者と過ごした数日間は、一生忘れることができない悲しい経験でした。しかし、勇気づけられるような出来事もありました。エボラから回復し、健康を取り戻した人が何人もいたのです。

ギニアやリベリアなどの西アフリカ諸国のなかでも、シエラレオネでは新たにエボラに感染した患者の数が最も多い国です。一方、回復する人の数も前例がないほどの増加をみせています。シエラレオネ全土でエボラに感染した約500人のうち、現在143人が健康を取り戻しています。

ケネマ病院のエボラ・ユニットは45人の患者で満員状態です。患者の人数は日に日に増加していますが、エボラから回復するケースも日常的に耳にするようになりました。毎日午後3時。病院のエボラ治療センターから、回復した患者が退院する時間です。悲劇が繰り広げられるこの場所で、安堵と喜びが満ちるときです。

絶望的な状態から回復した7歳の男の子

エボラ治療センターから退院したバンディー・ジェワッドくん(7歳)。(シエラレオネ)
© UNICEF Sierra Leone/2014/Dunlop
エボラ治療センターから退院したバンディー・ジェワッドくん(7歳)。

7歳のバンディー・ジェワッドくんは、絶望的な状況から回復した子どもとして、希望の象徴になっています。ケネマから40キロ近く離れた場所にある、シエラレオネでも最も感染者が多く報告されている地域のひとつ、ダルという村でエボラに感染しました。そして1カ月以上、ケネマの治療センターで入院をしていました。

看護師は、バンディーくんが運び込まれたときの深刻な病状を思い起こします。「幼いバンディーくんは、非常に深刻な状態でした。私たち看護師を含め、ほとんどの人が生き延びることは不可能だと思っていました」と、ケネマのエボラ治療センターで働くシスター・ナンシーが語ります。

しかし、数週間前に回復の兆しをみせたバンディーくんは、その後少しずつ体力を回復していきました。エボラの検査で身体から完全にエボラウイルスが無くなったと証明され、バンディーくんは家に帰ることができました。

「幼いバンディーくんが、悲惨な状況が続いていたエボラ・ユニットに笑顔をもたらしたのです。バンディーくんの回復した姿を見ることができて、とても嬉しく思います」と、治療にあたっていたボランティアのイギリス人看護師が話します。

エボラ・ユニットからの退院にあたり、家までの交通費(約10ドル)、新しい清潔な服、エボラに感染する危険性がなく、健康を取り戻したという証明書を受け取ります。そして写真撮影が行われ、スタッフが退院をお祝いします。

バンディーくんは立ち入り制限が課されているエボラ・ユニットから退院する際にもらった小さなトラックのおもちゃを、満面の笑みで自慢げに看護師たちに見せていました。「バンディーくんの嬉しそうな顔を見てください。子どもにとっては退院のお祝いにはおもちゃが一番なのでしょうね」と、シスター・ナンシーが笑顔で語ります。

完治した証明書

ケネマのエボラ治療センターから退院した患者の写真を見せるシスター・ナンシー。(シエラレオネ)
© UNICEF Sierra Leone/2014/Dunlop
ケネマのエボラ治療センターから退院した患者の写真を見せるシスター・ナンシー。

35歳のイサタ・コネーさんも、エボラ・ユニットから退院した患者のひとりです。イサタさんは目に涙を浮かばせながら誇らしげに証明書を看護師たちに見せ、「今日という日を迎えることができて、本当に幸せです。生き延びる力をくれた神様に感謝します」と話しました。

感染者の多くは、日常的に症状が重い患者と接触をしている保健員たちでした。ケネマ治療センターでは、6人の看護師が命を失いました。エボラから回復をしたスタッフのひとり、ファマタ・セサイさんは、11歳の娘のタタさんと一緒に病院から退院したところでした。ファマタさんは3週間、タタさんは2週間、エボラ・ユニットで治療を行っていました。「私は今、世界で一番幸せです」

「深刻な状態だと、自分自身でも理解していました。鼻血や吐血が止まりませんでした。この悲惨な病の完治は、容易ではありません。しかし幸運なことに、私も娘も、健康を取り戻すことができたのです」(ファマタさん)

エボラから回復し退院する人々を取材するため、病院には何社もの現地メディアが待機しています。ファマタさんは両手を高く上げて、「私も娘も元気になりました。神様、治療にあたってくれた看護師のみなさんありがとう」と語りました。

コミュニティを動かす力に

エボラに関する迷信や誤解を解き、エボラと闘うための協力をコミュニティから得るため、エボラから回復した人たちは重要な役割を果たします。シエラレオネのなかには、依然として、エボラの感染拡大を現実として受け入れられない住民もいます。エボラから回復しコミュニティに戻った人たちの多くが偏見を恐れて口をつぐむなか、エボラとの闘病体験を自ら語る人たちもいます。こうした証言は、エボラが深刻な病であり、コミュニティが一丸となって闘うことが必要不可欠であることを、住民に理解してもらうためにも重要なのです。

ユニセフは保健衛生省や保健分野のパートナー団体と協力し、医療品や物資の提供、それに、住民にエボラに関する正しい知識を伝えるための社会啓発活動を通じて、エボラの感染を阻止するための支援を行っています。予防方法やエボラの症状、医療サポートに関する情報がエボラの感染拡大を阻止するために極めて重要です。

エボラ出血熱は50〜90%という高い致死率の病気です。予防可能なワクチンはなく、効果的な治療法も確立されていません。発症した感染者の体液への直接的な接触か、エボラウイルスに感染したオオコウモリやサル、アンテロープ(ウシ科の動物)、ヤマアラシなどの動物との接触によって感染します。治療を早く行うことで、回復する可能性はより高まります。

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