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日本ユニセフ協会

お知らせ

ユニセフ「日本型CFCI実践自治体」紹介
Vol.01 北海道安平町
~子どもたちが主人公のまちを目指して~

2022年2月1日発

これから5回に渡り、自治体のご担当者へインタビュー形式でユニセフ「日本型CFCI実践自治体」をご紹介します。
第1回目は北海道安平町です。安平町でCFCIを担当されている、教育委員会事務局学校教育グループの三上泰明さんにお話をうかがいました。

安平町にとっての「子どもにやさしいまちづくり事業(CFCI)」とは

Q. なぜ安平町ではCFCIに取り組もうとされたのですか?

安平町教育委員会事務局学校教育グループ 三上泰明さん(左)写真提供:安平町

安平町の総合計画との親和性が高かったということと、CFCIに取り組むことで新しい視点を入れることができると考えたからです。安平町はもともと総合計画(2017-2026) において、優先するべき政策分野として「子育て・教育分野」を掲げていました。主なキーワードは、『遊び』と『義務教育学校』です。これが土台となって『あびら教育プラン』『義務教育学校』の建設といった、具体的な事業が進められています。

一方で、これまで特に子どもに直接意見を聴く、というところにはあまり意識が向いてなかったなと思います。今回、CFCIに取り組ませていただく中で、非常に新しい視点を与えられています。例えば、平成30年北海道胆振東部地震により被災した早来中学校を、小中一貫の義務教育学校として再建する計画を進める中で、「制服のデザインについて子どもの意見を聴こう」、「学校名を決めるのに子どもの意見を聴こう」など、子どもたちの意見を聴く機会を設け、そこで出された意見を実際に取り入れています。子どもは、おとなが思いつかないような発想をぶつけてくるので、とてもおもしろく、町にとっても意義が大きいと考えています。子どもにとっても意見が取り入れられることによる成功体験というか、やってやったぞ感というか、自己効力感を高められるものにもなるんじゃないかと思います。こうした事から始め、もっと子どもの声を聴くようにし、”みんなのまちづくり”に活かせればと考えます。

Q. 安平町の持続可能性を図るためにCFCI以外の取り組みはありますか?それはCFCIとどう関係しますか?

自治体の総合計画は、一般論として総花的な内容とならざるを得ないのですが、その中で安平町は、『子育て・教育』を最重要課題と捉えて移住定住施策を展開しています。つまり、メインターゲットを『子育て世代(子と親がいる家庭)』としていることから、CFCIとは切っても切れない関係にあると考えています。実際、「遊び」をキーワードにした特色のある教育を重視する中で、町外から安平町の子ども園に通ってくる例もあり、安平町に住みたいという声も増えています。人口減少を食い止めることはCFCIの直接的な目的ではありませんが、副次的に安平町に住む人が増えたらいいなとは思います。だからこそ、CFCIの理念を庁内に浸透させ、庁内横断的取り組みに発展させることが大切だと思います。

Q. 安平町ではCFCIの主管部署が教育委員会ですが、学校現場ではどのような取り組みをされていますか?

学校現場に子どもの人権教育を取り入れることは重要だと考えています。教育基本法の基本的な目的の中で、児童の自立を謳っていていますが、自立していくためには当然権利擁護が土台になってくるべきところではないかなと思います。一方で、カリキュラムに組み込むというところまではなかなか難しい部分はあります。現状の取り組みとしては、指導主事の職員が毎月発行する通信の中に、折に触れてCFCIについて盛り込んでいます。まずは、CFCIという言葉や基本的な考え方を知ってもらうために少しずついろんなところで伝えていくことが大切ではないかと思っています。

他方、教育大綱(町長が策定することとされた教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱。安平町では、安平町生涯学習計画をもって安平町教育大綱に代えることが了承されている)の中に、各自治体における教育施策を盛り込んでいくのですが、安平町の場合は、そこに「こどもにやさしいまち」という言葉を入れ、「子どもの主体性の尊重」、「子どもの社会参画」等の書きぶりも入れています。今後、そこに紐づく具体のプログラム作りができて、それを現場が受け取れるようになれば実現できるかもしれないとも思います。

 

CFCIの難しさと成果

Q. CFCIは子どもの権利を地方自治体が訴求する取り組みです。この点に関し難しさはないですか?

子どもの権利を『尊厳確保(基本的人権)』・『成長する権利』・『発達する権利』と、これらの土台となる『意見表明権』と大きく4つの権利体系に分類できるとすると、例えば教育委員会が単体でこれらの権利を保障しようとすると無理があります。つまり、どこかの一部署のみが子どもの権利を訴求することは困難です。そのため、庁内のあらゆる部署が子どもの権利を念頭におく仕組みが重要と考えています。

そうは言っても、庁内横断的取り組みに発展させることは、現在も大きな課題であると認識しています。縦割りに関しては、安平町も例外ではありません。そこで、少しでも多くの部署がCFCIを意識していただくため、毎年研修*を行っていますし、ことあるごとに「CFCI」というワードを口にするように心がけています。また、マスメディア等に取り上げていただくことで、庁外(一般市民等)から向けられる目が刺激となって、庁内のCFCIに対する熱がじわじわと温まってくることを期待しています。
*研修動画(ススメ→アビラ。Vol.1

義務教育学校建設現場を見学する小学生  写真提供:安平町

Q. 日本型CFCIでは安平町役場の事業評価を住民に開示することになっていますが、抵抗はなかったですか?

開示すること自体に抵抗はありません。逆に、開示した内容に対しどうしたら強い関心をもっていただくかが、これからの大きな課題であると認識しています。

 Q. 安平町でCFCIに取り組まれて3年程になりますが、成果はありましたか?

庁内研修を実施していることもあってか、「子どもに意見を聴くこと」という認識が職員間でマインドセットされつつある、つまり、共通言語化されてきていると感じています。「子ども議会」のような特別な子ども参画の枠組みはなく、今のところ計画もないのですが、安平町では、事業ベースで子どもの意見を聞くことを意識していて、事が起こることを目の当たりにしてもらうことが大事だと思っています。実際、義務教育学校に関わる議論ももちろんですが、他部署と折衝を要する廃道を検討する議論でも、「子どもに意見を聴こう」という動きに異論が出ませんでした。これが具体的な成果の一つだと思います。

また、安平町のオリジナリティとしてのCFCIがマチのPR(シティプロモーション)の一環にもなっているものと考えています。昨年の12月17日の覚書締結に際し、取材を受け記事になりましたが、企業からの問合せもあり、認知に大きな効果を生んだと考えています。またちょうど昨年、胆振管内の社協主事会で、CFCIについて話を聞かせてほしいという依頼があり、お話する機会がありました。関心を寄せている地域も増えていると感じています。

 

今後の展望と取り組みを検討している自治体へのメッセージ

Q. CFCIの今後に取り組みたい計画について、短期的なものと長期的なものを教えてください。

個別事業実施の視点における短期的なものとしては『義務教育学校』の建設、長期的なものとしては『あびら教育プラン』による非認知能力の向上支援を捉えています。

全庁的取組みへの発展の視点では、現状最重要視している意見表明権のみならず、遊ぶ権利を通じて尊厳確保・成長の権利・発達の権利へと力点を拡大させていきたいと考えています。この点については、研修以外には定例的に他部署との意見交換をする場はないものの、必要に応じて話をするようにしています。チェックリスト(CFCIの基準)の達成度の評価の中で二重丸が付いていない項目について、一つひとつ、関連する部署と話しながら、巻き込んでいきたいと思います。研修については毎年やってきましたが、これまでは単発の全体に向けての研修だったものですから、来年度以降は参加者を絞って、連続講座のような、より理解を深められるような研修を行って、CFCIを安平町の組織の中の文化として根付かせていけるといいなと思っています。

また、現在、総合計画(2017~2026)の中には、CFCIについて直接的な文言は盛り込めていませんが、次の改訂の時には入れられるように調整していきたいと思っています。

Q. 安平町の経験からこれから取り組もうとする他の自治体に伝えたいことはありますか?

インタビューはオンラインで答えていただきました (c)日本ユニセフ協会

CFCIはいわば「理念」です。特定の事業の実施・履行がCFCIということではありません。チェックリストを用いたPDCAの回し方、とりわけ評価手法の確立に関しては、全自治体に適応できる汎用的なものはなく、理念を各自治体で実際の事業に落としこんでいかなければなりません。いかに全庁的な取組みに発展させ、子どもの諸権利をあらゆる部署の立場から擁護することが重要です。

しかし、考え方によってはCFCIに取り組むことは”簡単なこと”です。CFCIの実践基準に即し、自治体の自発性、自主性が重んじられる中でPDCAの回し方を構築することができるのですから。自分たちの状況にあったやり方をしていけばいい。とてもおもしろみとやりがいのある事業です。ともに頑張りましょう!

安平町CFCI関連ページ>> CFCI | 安平で安心子育て | 北海道安平町

 


安平町基本情報(2021年12月末現在)

人口 7,394人(うち、18歳未満人口910人)

世帯:3,951戸

面積:237.13k㎡

 

 

 

第2回目は北海道ニセコ町です。

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