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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

世界母乳育児週間スタート
母乳育児で簡単に幼い命を救えます

【2006年8月1日、ニューヨーク発】

2006年8月1日、世界母乳育児週間(8月1日から7日)初日、ユニセフ(国連児童基金)は、開発途上国で母乳だけで育てられた子どもは、人工乳や混合乳で育てられた子どもよりも、1歳まで生き延びる確率が約3倍も高いことを発表しました。

アン・ベネマン ユニセフ事務局長は訴えます。「世界母乳育児週間は母乳育児という簡単な方法が子どもたちの命を救うことを、広く社会へ訴えることができるとても良い機会です。開発途上国では母乳だけで赤ちゃんを育てる割合が増加してきてはいますが、それでもまだ、生後6カ月未満の約63パーセントの赤ちゃんは十分な母乳をあたえられていません。その結果、何百万もの赤ちゃんは、母乳育児で得られたはずの多くの恩恵を受けないまま、人生をスタートしているのです」

ユニセフと、世界母乳育児行動連盟(WABA)、世界保健機構(WHO)をはじめ、多くのパートナーの働きかけにより、世界母乳育児週間のキャンペーンは120カ国以上で取り組まれています。このキャンペーンでは、生後6カ月の間母乳だけを与えることが、赤ちゃんの健康にとって、大変大きなメリットあることを訴えています。まず、乳児に絶対的に必要な栄養が与えられること。ほかに、肺炎などの致命的な病気の感染予防などができる免疫力を、そして赤ちゃんの健全な成長と発達を促すことができます。世界母乳育児週間とは、「少なくとも生後6カ月は母乳だけで子どもをそだてましょう」という母乳育児の必要性について国際的な関心を呼び起こす一週間なのです。

生後6カ月間の完全母乳育児を続けた後、適切な補完食(離乳食)を食べさせながら、母乳育児を2年以上続けることが、子どもの成長にとって最も適切な方法です。ユニセフでは、赤ちゃんがベストな状態で人生をスタートできるように、子育てが初めての母親向けに乳幼児の栄養管理について正しい方法を知ってもらうための活動を世界中で行っています。

たとえば、ユニセフはアフリカのガンビアで母乳育児を保護、推進、支援する体制が整っている「赤ちゃんにやさしい地域」づくりをサポートし、地域の男性と女性が共に、母子の適切な栄養のメリットについて学べるようなプログラムを提供するなどの活動をしています。

緊急事態では、安全な水がなくなり、子どもたちは下痢などの生命を脅かす危険に身をさらすことになりますが、そこでの母乳育児は乳幼児のライフセーバーとなるのです。5月に地震の震源地となったインドネシアのジョクジャカルタではユニセフは乳幼児のために母乳育児が続けられることを勧めるイニシアティブをとっています。今では、100人の地元の女性が母乳育児相談員として研修を受け、病気にかかりやすい乳児と母親を訪ねてまわっています。

2006年の世界母乳育児週間は“母乳代用品の販売流通に関する国際規準”(WHOコード)が世界保健総会で採択されて25年目の年にあたりますが、今日までに60以上の国々が、WHOコードの全文あるいは一部を法制化しています。

このコードは母乳代用品(人工乳)、ほ乳瓶や人工乳首などの調乳用品に関する宣伝、過剰な販売促進活動を禁じ、母乳育児を守り、推進するためのものです。WHOコードが1981年に世界保健総会で採択されてから確実な成果はあるものの、まだ課題を残しています。国によってはWHOコードの違反行為を監視しきれていないところもあります。

「栄養不良が5歳未満児死亡の原因の半分をしめ、WHOコードの不履行が最悪の状態をまねています。これが途上国の現実なのです」

母乳育児と、乳幼児に良い栄養を与えることは、2015年までに国連のミレニアム開発目標の実現、その中でも乳幼児死亡率を3分の2まで削減することや極度の貧困と飢餓の撲滅に関する目標の実現のために重要な鍵となります。

ユニセフは、政府、地域社会、パートナーと連携して、乳児の栄養や母子保健に関する法の支援、妊婦や出産後の母親と子どものケアの改善、地域社会レベルで新しく母親になる女性への支援などをつうじて母乳育児を推進しています。また、緊急事態下では、栄養不良が乳幼児死亡につながりやすいため、特に被災した母親に母乳育児を支援することもユニセフの重要な優先事項のひとつです。

「母乳育児成功のための10か条」

  1. 母乳育児についての基本方針を文書にし、関係するすべての保健医療スタッフに周知徹底しましょう
  2. この方針を実践する為に必要な技能を、すべての関係する保健医療スタッフにトレーニングしましょう
  3. 妊娠した女性すべてに母乳育児の利点とその方法に関する情報を提供しましょう
  4. 産後30分以内に母乳育児が開始できるよう、母親を援助しましょう
  5. 母親に母乳育児のやり方を教え、母と子が離れることが避けられない場合でも母乳分泌を維持できるような方法を教えましょう
  6. 医学的に必要でない限り、新生児には母乳以外の栄養や水分を与えないようにしましょう
  7. 母親と赤ちゃんが一緒にいられるように、終日、母子同室を実施しましょう
  8. 赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけの授乳を勧めましょう
  9. 母乳で育てられている赤ちゃんに人工乳首やおしゃぶりを与えないようにしましょう
  10. 母乳育児を支援するグループ作りを後援し、産科施設の退院時に母親に紹介しましょう

WHO・ユニセフは、「母乳育児を成功させるための10か条」を長期にわたって尊守し、実践する産科施設を「赤ちゃんにやさしい病院」として認定することになりました。日本国内では2005年度までに40施設が認定されています。今年新たに認定される病院の認定式は、今月5日、6日に東京で開催される「母乳育児シンポジウムで」行われます。

赤ちゃんにやさしい病院についてのお問い合わせ先:

日本母乳の会 Japan Breast Feeding Association
oppai@bonyuweb.com
〒165-0026 東京都中野区新井3-9-4
TEL 03-5318-7383/FAX 03-5318-7384
(問い合わせはできるだけFAXでお願いします)

補足1:
厚生労働省の調査(平成17年)によると、日本における母乳育児率は、生後1カ月の段階で母乳のみを与えている母親は全体の45%、生後3カ月になると38%にしか及ばず、出産、保育に関わる医療関係者や社会の更なる取組みが必要とされています。

補足2:
1)“母乳代用品の販売流通に関する国際規準”は1981年のWHO総会で採択されたもので、日本も1994年に賛成をしています。この国際規準では、WHO総会に参加する各国がその内容をそれぞれの国の法律の中で整備することが求められていますが、日本ではその一部しか法制化されておらず、業者の自主規制に任せているのが現状です。

補足3:
2)1989年3月 WHO・ユニセフは、「『母乳育児の保護、促進、そして支援』をするために、産科施設は特別な役割を持っている」という共同声明を発表しました。世界のすべての国のすべての産科施設に対して「母乳育児成功のための10カ条」を守ることを呼びかけました。母乳育児成功のためのこの基準は、WHOとユニセフによって、世界のすべての病院に広く紹介されています。

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