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公益財団法人日本ユニセフ協会

東アジア・太平洋地域の子どもへの暴力・虐待
経済的損失は年間2,090億ドル
地域GDPの2%

【2015年6月2日、バンコク(タイ)発】

ユニセフ(国連児童基金)は、子どもに対する暴力や虐待による経済的損失が、東アジア・太平洋地域の国々で年間2,090億ドル(地域全体のGDPの2%)に上るとの試算を発表(「東アジア・太平洋地域における子どもへの暴力による経済的損失の試算」)。これは、専門家チームに委託した調査により明らかになったもので、同地域に関してこの種の試算が行われるのは初めてです。

暴力や虐待による経済的損失

「私たちはみな、子どもに対する暴力は道徳的に間違っており、止めなければならないことを知っています。加えて今回の調査は、子どもへの暴力に関して対策をとらないことが、国や地域社会に、深刻な経済的損失をもたらしていることを明らかにしました」と、ユニセフ・東アジア太平洋地域事務所ダニエル・トゥール代表は述べています。「政府は、子どもへの暴力について早急に行動をとらなければなりません。それは、子どもたち自身のためであり、また、将来の世代の幸福のためでもあります」

子どもへの暴力・虐待による経済的損失の試算(形態別)
子どもへの暴力・虐待による経済的損失の試算
(形態別)
子どもへの暴力・虐待による経済的損失の試算 対GDP比(所得グループ別・形態別)
子どもへの暴力・虐待による経済的損失の試算
対GDP比(所得グループ別・形態別)

今回の調査は、これまでに公表された子どもへの暴力・虐待の現状についての報告書に続くものです。暴力・虐待の5つの形態について、精神的健康、身体的健康、生活・行動面への影響等を分析した結果、地域全体の経済的損失はそれぞれ、精神的虐待が659億ドル、性的虐待399億ドル、身体的虐待396億ドル、ネグレクト324億ドル、家庭内での暴力の目撃が310億ドル、と試算されました。

ユニセフは、また、子どもへの暴力・虐待は、すでに負荷がかかっている保健医療制度にさらに負担がかかる、暴力や犯罪性が増加するなどの、社会・経済的な影響も及ぼすとしています。さらに、暴力や虐待は、社会に貢献できる人材へと成長する機会を子どもたちから奪い、その子どもたちがもたらしたであろう地域社会への潜在的貢献を失わせる可能性もあるのです。

調査結果の抜粋

母親から受けた暴力の傷を見せる17歳の女の子。(フィリピン)
© UNICEF/NYHQ2011-2378/Pirozzi
母親から受けた暴力の傷を見せる17歳の女の子。(フィリピン)

暴力の広がり

  • 子どもへの暴力・虐待は、東アジア・太平洋地域において、国の所得レベルに関わらず起きている。14%〜37%の子どもが、少なくともひとつの形態の暴力・虐待を経験している。
  • 高所得国では、女性の42%が精神的虐待を経験し、男性の32%が家庭内暴力を目撃している。

健康への影響

  • 低所得国の男性の精神疾患のうち、25%が子ども時代の身体的虐待と関連。同様に、低中所得国の女性の精神疾患の31%が子ども時代の性的虐待と、高所得国の女性では19%が子ども時代の精神的虐待と関連している。

経済的損失

  • 子どもへの暴力・虐待による経済的損失は、高中所得国でGDPの3.45%と最も大きく(うち最大の1.26%が精神的虐待によるもの)、高所得国では1.45%(うち最大の0.42%が精神的虐待によるもの)であった。

子どもを暴力や虐待から守るために

家族から虐待を受けていた8歳の女の子。(マレーシア)
© UNICEF/NYHQ2014-3574/Pirozzi
家族から虐待を受けていた8歳の女の子。(マレーシア)

今回の調査と並行して、カンボジアでは、ユニセフの支援により、全国的な子どもに対する暴力についての調査が初めて実施されました。「ユニセフは、子どもに対する暴力を予防し、被害にあった子どものためのサービスが向上するよう、カンボジア政府の取り組みを支援しています」と、ユニセフ・カンボジア事務所ラナ・フラワー代表は述べています。「この調査によって、カンボジアにおける子どもへの暴力の規模が明らかになり、変化を起こすべきだと力強く訴えることができるようになったのです」

東アジア・太平洋地域のすべての政府は、子どもの権利条約を批准し、それにより、子どもを暴力や虐待から守ることにコミットしています。その約束を果たすためには、社会的サービスへのより大きな資金配分など、さらなる努力が必要です。

「すべての子どもは、自身の身体的・精神的成長を阻害し、彼らの社会や経済の成長をも阻害する暴力から自由に生きる権利があります」トゥール代表は言います。「子どもに対する暴力は、見えない場所でおきることが多いですが、人々が一緒になって、それが受け入れられないものだと大きな声で主張すれば、防ぐことができるものなのです」

* * *

参考情報

■本調査概要について

「東アジア・太平洋地域における子どもへの暴力による経済的損失の試算」(“Research Overview: Estimating the Economic Burden of Violence against Children in East Asia and the Pacific”)(英文/2015年6月、ユニセフ東アジア・太平洋地域事務所)
分析は国の所得グルーブ別に行われ、日本は「高所得国」に含まれています(国別のデータはありません)。

■これまでに公表された子どもへの暴力・虐待の現状についての報告書

“Child Maltreatment: Prevalence, incidence and consequences in the East Asia and the Pacific Region”(英文/2012年、ユニセフ東アジア・太平洋地域事務所)
今回の試算のもとになっている報告書です。東アジア・太平洋地域における子どもへの暴力・虐待に関して、2000年から2010年に公表された論文を体系的にレビューし、子どもへの暴力・虐待の広がりと、その様々な影響について分析しています。

“Violence against Children in East Asia and the Pacific: A Regional Review and Synthesis of Findings”(英文/2014年、ユニセフ東アジア・太平洋地域事務所)
上記報告書をもとに、2013年に公表された論文まで含めてアップデートしたものです。

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