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ユニセフ協会からのお知らせ

インターネットが子どもにもたらす脅威と機会
インターネット上の子どもの安全
—グローバルな挑戦と戦略—

【2012年2月14日 イタリア発】

昨年12月にユニセフ・イノチェンティ研究所が発行した最新の報告書では、今までには考えられなかったほどインターネットが教育や情報へのアクセスの機会を広げている一方で、子どもたちに及ぼされる危険性も増幅したと訴えられています。

本報告書「インターネット上の子どもの安全—グローバルな挑戦と戦略—」が発行された目的は、インターネットを利用する若者たちが直面するリスクへの理解を深め、児童虐待描写物(児童ポルノ)・グルーミング(児童ポルノや性的搾取を目的とする誘い込み)・ネットいじめという三大危険因子から彼らを守るためのフレームワークを提示することです。

「急速に進化するインターネットの世界は、これまで子どもの性的虐待や性的搾取を含む犯罪を生みだしてはいないものの、従来からあるいくつかの犯罪の規模や潜在性を増大させてきました。」ユニセフ研究事務局代表ゴードン・アレクサンダーは、こう指摘しています。「私たちはこの事実を認識し、可能な限り適切な対策を講じながらも、テクノロジーが生み出す新しい環境と将来性を自らの手で開拓していくという子どもの権利を尊重しなければなりません。」

この報告書は、教育や娯楽、社会性の醸成といった側面でインターネットがもたらす無数の利益と、これらにアクセスできる子どもの権利の利点を強調しています。

イギリスの団体・児童搾取対策オンライン保護センター(CEOP: Child Exploitation and Online Protection Centre)との共同研究は、インターネットを利用する子どもたちにとって安全な環境をつくるために、次の4つの課題があると指摘しています。①子どものエンパワーメント(子どもたちに、自らを守る知識や技術を提供すること)、②児童虐待者に刑罰を負わせる(法整備をはじめとする児童虐待者を容認しない社会づくり)、③有害サイトの利用や有害情報へのアクセスを削減する、④被害児童への支援です。

ひとつめの課題である「子どものエンパワーメント」は、この問題に取り組むにあたっての基本となるものです。これは、一般的に子どもたちが両親や教師よりもずっとインターネット技術に精通し、自分たちが直面するリスクに対しておとなとは違った知見を持っていると考えられるためです。

多くの子どもたちは、彼らの有害サイトのブロックの方法やファイアウォールの設定方法を知っており、なにか問題が起きたときには、急速に変化するテクノロジーの理解に疎くインターネット上の自由を抑圧しているおとなではなく、まず友人に助けを求めています。

重要な点として、子どもたちにとって携帯電話は、パソコンを上回る人気を誇るインターネットへの入り口です。しかし、ブロードバンドの高速化や安価なウェブカメラの登場といったテクノロジーの進歩によって、加害者にもまた、別の虐待・搾取の機会を提供してしまうのです。

この報告書では、世界規模の効果的な法整備とその実施は、子どもの保護にとって不可欠な要素でありながら、国家レベルにおいてはいまだ多くの国で実現されていないこと、また法が成立された国であっても「子ども」や「ポルノ」の定義付けといった部分で調和が取れていないことが言及されています。世界のインターネット環境に甚大な影響力を持つG8にあって、日本とロシアだけが、児童虐待描写物(児童ポルノ)の単純所持の刑罰化という、児童ポルノ根絶に効果のある国内法を欠いたままです。さらに、境界のない犯罪の性質によって、加害者の刑事責任逃れという、より困難な課題が生じています。

しかしながら、法整備は問題解決のための答えのひとつであり、親、教師、ソーシャル・ワーカー、警察、インターネット関連事業者の全員に、子どもたちが自身を守るための力をサポートする役割があると、報告書は述べています。

また、インターネット関連事業者は、サーバーからの不適切な画像を取り除き、有害な画像をブロックし、フィルターにかけるための子どもに優しいハードウェアやソフトウェアの提供という大切な役割も担っています。

2011年現在、世界のおよそ16,700のウェブサイトで児童ポルノ(児童虐待の画像・映像)が掲載されています。何百万もの児童ポルノには、何万人もの子どもたちが映しだされています。それらの子どもたちの年齢はますます低くなり、4人中3人は10歳にも達していません。それらの画像・映像は、より写実的かつ暴力的になってきています。

この数字は、課された挑戦の莫大さを物語っていますが、当報告書は実際の運用に役立つようデザインされています。「インターネット上の全てのリスクを取り除くことは不可能でしょう。インターネットスペースはあまりに広大で、進化・拡大を続け、子どもを守りきるためのあらゆる方策をもってしも制御できないほどに創造的です。完全にインターネットを制御することは、インターネットの本質やその多くの恩恵を失わせることになるため、望ましくもありません。ただ、もっとすべきこと、できることがあると考えています。」(アレクサンダーユニセフ研究事務局代表)

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