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教員の情熱が、子どもの可能性を広げる

教員の情熱が、子どもの可能性を広げる

©UNICEF Mozambique/2025/Dulce Machava

アントニオ・セレステノ・ベロさん(34歳)は、ソファラ州ムアンザ地区のデルンデ・リーニャ小学校で6年生を教えています。特別な支援が必要な児童を含む50人以上の児童を受け持ちながら、インクルーシブ教育の推進も担当しています。

※障がいの有無にかかわらず、すべての子どもを受け入れる教育

アントニオさんは2012年に、サングジ・ムアナ小学校で教員としての道を歩み始めました。キャリア初期に経験したある出来事が、今でも教育への情熱を支えています。

「ある日、校庭の掃除中に、身体に障がいのある児童がひとり取り残されていることに気づきました。声をかけて一緒に参加してもらうと、彼はとても嬉しそうでした。それ以来、掃除だけでなく、クラスメイトとの遊びや会話にも加わるようになったのです。私は、彼が安心してスポーツなどの活動に参加できるよう、内容を工夫するようになりました」とアントニオさんは当時を振り返ります。

この経験を通じて、アントニオさんは障がいに対する見方を大きく変えました。インクルージョンとは、同情や慈善ではなく、すべての子どもが安心して参加し、仲間として受け入れられる環境を築くための大切な機会なのだと考えるようになったのです。そして、インクルージョンは、障がいのある子どもたちを学校社会の一員として真に認め、平等な権利と尊厳を保障することだと信じています。「インクルージョンは、細部に宿ります」とはアントニオさんの言葉です。

2025年、アントニオさんはユニセフが支援する、「インクルーシブ教育と適応型教授法」に関する研修に参加しました。この研修は、日本の皆さまからのご寄付により、ソファラ州教育局とムアンザ地区の教育当局と協力して実施されたもので、すべての子どもを受け入れられる指導方法と学校運営の質を高めることを目的に、ムアンザ地区の35校から、教員100人と校長35人が参加しました。

アントニオさんにとって、この研修は職業的にも個人的にも大きな転機になりました。「研修を受ける前は、自分が正しいと思って行動していたことが、振り返ってみると視野が狭かったと気づきました。障がいのある子どもたちに対する、目に見えにくい排除や、暴力の兆候に気づく準備が十分ではなかったのです。今では、インクルージョンとは、積極的な参加、違いの尊重、そして公平性の促進であると理解しています」とアントニオさんは語ります。

研修後、アントニオさんと同僚たちは、授業内容の調整や児童同士の協力を促す取り組み、学校環境の整備など、さまざまな改善策を導入しました。こうした努力により、児童の学習意欲や成績にはすでに良い変化が見られています。

「今では、私は自信を持っているだけでなく、自分の役割を深く自覚しています。人生を変えるのは、大きな決断だけではありません。日々の小さな行動が、障がいのある子どもが学校でどう感じるか――受け入れられている、尊重されている、認められている、と感じられるかどうか――に、大きな影響を与えるのです」と話すアントニオさん。すべての子どもの可能性を信じ、誰もが受け入れられる学校づくりのために、同僚の教員たちに継続的な協力を呼びかけています。

そして、アントニオさんは、モザンビーク政府、ソファラ州教育局、ムアンザ地区教育・青少年・技術サービス、ユニセフ、日本ユニセフ協会に対して、支援と研修を通じてこのような変化を実現できたことに、感謝しています。

(2025年8月更新)