日本での実践記録
私たちの権利を大切にする学級目標づくり

日本の学校・園で実践いただける「Child Rights Education (CRE): 子どもの権利を大切にする教育」の具体的な取り組みの一つとして、私たち日本ユニセフ協会が提唱している「子どもたちの権利が守られる学級憲章(学級目標)」づくり。

この取り組みは、先生も子どもたちもともに「子どもの権利条約」を通して子どもの権利について学ぶところから始まります。一人ひとりの権利が大切にされる、みんなにとって過ごしやすく学びやすい学級をつくるために、自分たちにできることは何か、また権利を尊重するということはどんなことか、先生と子どもたちがともに考え、「学級憲章(学級目標)」としてまとめていきます。子どもたちが主体的に考え行動する力を養うとともに、自分だけでなく他者の権利にも目を向け、みんなの尊厳が守られる、だれもが安心して過ごし成長できる学級づくりを目指します。

令和4年度には、この取り組みに賛同いただいた西東京市立保谷小学校の先生方が、「子どもたちの権利を大切にする学級目標づくり」を実践してくださいました。全国学級経営研究会の会長を務めておられた校長先生のもと、4・5・6年生から1クラスずつが参加しておこなわれた、「子どもの権利」を軸とした学級目標づくり。その活動のようすをプロセスとともに実践記録としてご紹介します。

「子どもたちの権利が守られた学級目標づくり」の

  1. 1子どもの権利を知ろう

    まず最初に、「子どもの権利条約」の学びを通して、子どもの権利についての理解を深めよう。大切だと思う権利、守られている権利や守られていないと思う権利などの話し合いを通じて、「子どもの権利条約」が定める具体的な権利について知り、自分たちとのつながりを考えよう。

  2. 2大切な権利を選んでみよう

    子どもの権利についての学びをもとに、これからの一年間、一人ひとりの権利が守られるクラスをつくっていくためには「子どもの権利条約」のどの条文が特に大切か、どのようにみんなの権利を守っていくか話し合い、先生も子どもたちも一緒に考えよう。

  3. 3学級目標を書いてみよう

    これまでの話し合いをふりかえりながら、選んだ「子どもの権利条約」の条文をもとに、目指すクラス像を学級目標としてまとめていこう。グループごとに発表したり、アイデアを出し合ったりしながら、みんなで学級目標に入れる言葉を紡いでいこう。

  4. 4学級目標を掲示しよう

    子どもの権利についての学びを通してつくられた学級目標を 模造紙に描き、教室のよく見えるところに掲示しよう。これからの一年間、学級目標をふりかえりながら、みんなの権利が大切にされる学級を目指して努力を重ねていこう。

「学級憲章」は「学級目標」とは違うの?

日本では、多くの学校で、年度のはじまりに「学級目標」 をつくり、それに基づいた行動を呼びかけます。
「学級目標」は、どんな学級で過ごしていきたいか、という児童生徒のイメージや願いから、学級内の話し合いのもとで作られることが多いようです。たとえば、「暴力はいやなものだから暴力のないクラスがよい」など、児童生徒の生活体験から生み出されることが多いのではないでしょうか? また、ときには学級内の和や絆を導くことが目的とされ、それを乱すような行動は、学級目標に反するとしてとがめられるようなことがあるのかもしれません。

ここで私たちが呼びかけている「学級憲章」は、前提として学級の一人一人が、それぞれ大切にされるべき「子どもの権利」をもつ存在である、という認識から出発します。自分はどのような権利をもつ存在なのかを知り、同じ権利を学級の全員がもっていることを認識します。そのうえで、 特に自分たちの学級の中で守られにくい権利、あるいは大切にしたい権利はどんな権利かを話し合い、その権利が 実現される学級像を学級憲章にまとめていく、というプロセスをとります。できあがったものは、もしかすると以前から作ってきた学級目標と似通ったものになるかもしれません。しかし、その背景には「児童生徒の個々の権利を尊重し、一人一人が大切にされる学級をつくる」という明確な拠り所(=「子どもの権利条約」)のある目的が存在します。

もちろんこのような「子どもの権利」をベースにしたプロセスを経て「学級目標」をつくるのであれば、あえて「学級憲章」という言葉を用いる必要はありません。私たちの願いは、日本の学校になじみの深い学級目標づくりを、「子どもの権利」や人権に対する理解、そしてその権利を実現する実践の機会としていただくことです。

こうしたプロセスを経てできあがった「学級憲章」や「学級目標」は、1年間を通じて実践することで大きな意味が生まれます。時には、互いの権利がぶつかり合うこともあるでしょう。そのときに、私たちの学級は何を大切にしようとしてきたのか、どうしたら互いの権利を尊重しながら、 折り合いを見つけることができるのか、対話を繰り返してその局面を乗り越えていく。そんな経験が人権を尊重できる人としての成長につながると考えています。

西東京市立保谷小学校で行われた「子どもたちの権利を大切にする学級目標づくり」の活動のようすは、ぜひこちらからご覧ください。

保谷小学校での活動の様子をまとめた冊子「ユニセフCRE実践記録」はこちらからダウンロードいただけます。