西東京市立保谷小学校での実践記録
私たちの権利を大切にする学級目標づくり
1.子どもの権利を知ろう

1時間目

「子どもの権利条約」を通して子どもの権利を知ろう!
どんな権利があるのかな?

めあて

「子どもの権利」について理解を深める。大切だと思う権利、守られている権利や守られていないと思う権利などの話し合いを通じて、「子どもの権利条約」が定める具体的な権利について知り、自分たちとのつながりを考える。

準備したもの

あらかじめ選択した「子どもの権利条約」の条文カード

  • 黒板掲示用1セット(A4サイズ)
  • 児童の手元用カード(児童数分)

Step 1

「子どもの権利条約」を知っていますか?

1時間目の最初に、日本ユニセフ協会のスタッフが8分ほど、「子どもの権利」について話しました。子どもたちに問いを投げかけながら、「子どもの権利条約」について知り、自分たちのもつ権利について考えていきます。

授業は、こんな問いかけから始まりました。

「権利」ってどんなものだと思う?

子どもたちからは自由に思い思いの意見が出てきます。

なるほど。では「子どもの権利」とか「人の権利」というときに、それはどんなものか考えみたいと思います。
まず、みなさんが、元気に育つためにはどんなことが必要か、教えてもらえますか?

「生きるために必要な衣食住のほかにも、いろいろなことを学んだり、お話を聞いてもらったりなども、自分らしく生きていくためには大切なことですよね。子どもたちが、人間らしく、幸せに生きられ、健康に成長していくために必要なものやことを 「子どもの権利」といいます。みんながどんな権利をもっているのかは 「子どもの権利条約」という国際的な約束で決められています。
日本もこの条約に入っているので、ここに書かれている権利は、あなたたち一人一人がもっている権利です。みんながあってほしいと思う権利も書かれているでしょうか?
この権利は生まれながらにみんなにあるもので、だれも奪い取ることはできません。どんな権利をもっているのか、これから学んでいきましょう!」

子どもたちは真剣に、初めて耳にする「子どもの権利条約」という言葉や、自分たちにはどんな権利があるのか、という話に耳を傾けました。そして、子どもらしい素直な反応が、どのクラスからも聞こえてきました。

Step 2

一番大切だなと思う権利を見つけてみよう

つぎに、実際に「子どもの権利条約」の条文カードを見ながら、条約の内容について、子どもたち自身で学んでいきます。具体的な子どもの権利について書かれているのは「子どもの権利条約」の第1~40条ですが、すべてを扱うと時間がかかりすぎるため、今回は先生方が事前に相談して、13個の条文に絞って学びを進めることになりました。

今回の取り組みで使用した13個の条文

  • 第2条 :差別の禁止
  • 第3条 :子どもにもっともよいことを
  • 第6条 :生きる権利・育つ権利
  • 第12条:意見を表す権利
  • 第13条:表現の自由
  • 第16条:プライバシー・名誉の保護
  • 第17条:適切な情報の入手
  • 第19条:あらゆる暴力からの保護
  • 第23条:障がいのある子ども
  • 第24条:健康・医療への権利
  • 第28条:教育を受ける権利
  • 第29条:教育の目的
  • 第31条:休み、遊ぶ権利

13個の条文が書かれたカードが一人ひとりに配られました。初めて目にする「子どもの権利条約」の条文。みんな真剣に目を通しています。

最初は一人でカードを読みながら、まずは自分の大切にしたいと思う権利が書かれたカードを選んでみました。

その後、2人またはグループで話し合いを進めます。

話し合いのあとには、対話の中で出てきた意見を発表して、先生やクラスのみんなと共有しました。
大切だと思う権利も、その理由についても、たくさんの意見が出てきました。

大切だと思う権利
~子どもたちの発表から~

第6条:生きる権利・育つ権利
「命がなければ遊ぶことも勉強もできない」
第2条:差別の禁止
「差別で死んじゃう人もいる」
第24条:健康・医療への権利
「健康で医療を受けられることが大事」
第28条:教育を受ける権利
「勉強すれば人生で選べる道がふえる」
第13条:表現の自由
「言いたいことを言えないと、抱え込んじゃう」
第19条:あらゆる暴力からの保護
「暴力でなくなってしまう子どももいる」
第23条:障がいのある子ども
「障がいのある人もみんなと生活できることが大切」
第12条:意見を表す権利
「意見を言わないと、えらい人の言いなりになっちゃう」
第31条:休み、遊ぶ権利
「休むことでリフレッシュできる。自由がないと檻の中にいるみたい」
全ての条文
「生きていくには全部必要だと思う!」

先生は子どもたちから出た意見を板書にまとめていきます。

5年生のクラス

6年生のクラス

Step 3

守られていると思う権利  
守られていないと思う権利

大切だと思う権利について考えたあとは、13個の条文を見ながら、十分に守られているなと思う権利と、あまり守られていないなと思う権利について考えてみました。

まずは1人でカードを読みながら考え、その後、2人またはグループで話し合いを続けました。

守られていると思う権利

第6条:生きる権利・育つ権利
「生きていて、育ててもらって、幸せだから」
第31条、休み、遊ぶ権利
「休んだり遊んだりしても、理由なしにダメと言われない」
第2条:差別の禁止
「人と違う意見を言っても差別されないから」
第17条:適切な情報の入手
「日本では適切な情報が手に入るから。ほかの国は違うと聞いた」
第13条:表現の自由
「いま、自分のその力(表現する力)が伸びていると思うから」
第12条:意見を表す権利
「言いたいことを言えるから」
第2条:差別の禁止
「ほかの国にくらべて男や女の差がないから」

つぎに、この権利は守られていないんじゃないか、と思う権利について話し合いました。多くの意見が出され、自分に関わることだけでなく、ニュースやおとな、友だちから見聞きしていることなどへ話題が広がります。身近にあることから広く社会の問題まで、特に制限をかけることなく、自由に考えをめぐらせ、意見を交換しあう場となりました。

※ 安心して発言できる環境があるクラスでは、自分の経験を告白するような場面も出てきます。無理に話さなくてもよいことやプライバシーについての説明、その後のフォローなどにご配慮ください。

守られていないと思う権利

第19条:あらゆる暴力からの保護
「暴力をふるう人を見ることもある」
「親から虐待される子もいると聞いたことがある」
第24条:健康・医療への権利
「(コロナで)医療の優先順位って順番をつけるのはよくないと思う」
「ウクライナの子どもたちは守られているのか心配」
第12条: 意見を表す権利
「自分の意見は友だちと違うのに、友だちの意見に合わせて自分の意見を言えない人もいる」
第31条:休み、遊ぶ権利
「テレビでお母さんの代わりに介護をしたり家事をしたりする子がいると聞いた」
第2条:差別の禁止
「いやなあだ名で呼ばれたことがある」
「体形や肌の色で差別されるのはいけない」
「きょうだいで比べられていやだ」
第6条:生きる権利・育つ権利
「育児放棄があるとニュースで聞いた」
第23条:障がいのある子ども
「障がいのあるなしで分けること自体がおかしい。みんな同じはず」
第16条:プライバシー・名誉の保護
「ネットで傷つけられて辛い思いをする人がいると聞いた」

子どもたちから出たたくさんの意見を、先生が黒板にまとめていきます。

5年生のクラス

6年生のクラス

どのクラスも、子どもたちが大変活発に話し合い、幅広い意見が交わされたことに、先生方からも子どもたちへの称賛がありました。「このあとは、クラスの中でのことに焦点をしぼり、特に守られていない権利や、あるいはクラスで特に大切にしていきたいと思う権利、そして、それらの権利をどのように守るかについての話し合いを進め、学級づくりを進めていきましょう」と、先生から次の時間のめあてが伝えられました。

児童の感想
~「学習のふりかえり」から~

1時間目の授業の終わりには、子どもたちが「学習のふりかえり」として、感想を記しました。「子どもの権利条約」を通して学んだこと、自分にも権利があることを知って感じたことなど、子どもたちの素直な感想がたくさん記されています。

子どもの権利についての学びから、子どもたちは生まれながらにもっている自分の価値に気づき、また、まわりの子どもたちの権利や、広く社会の子どもたちを取り巻くさまざまな問題に目を向ける機会にもなることが、子どもたちの感想からも伝わってきます。