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日本ユニセフ協会

ウクライナ緊急募金

ウクライナ
地下鉄で避難生活を送る子どもと家族
ユニセフ、子どもたちのための空間を設置

2022年3月31日ハルキウ(ウクライナ)

ウクライナでの戦争が長期化する中、子どもたちは心身ともに深刻な影響を受けています。これまでに430万人の子どもが、自宅からの避難を余儀なくされました。

ユニセフは、支援を必要としている子どもたちと家族のために、ウクライナ国内と周辺国において、緊急支援物資の輸送、子どもや妊産婦への栄養支援、衛生用品や移動式トイレの提供、心のケア支援、子どもの保護などを行っています。

地下鉄の構内に避難する人々

激戦が続く東部ハルキウ(ハリコフ)では、地下鉄の構内が、地上の戦闘から避難してきた数千の人々が暮らすシェルターとなっています。ユニセフはそこで、子どもたちが遊んだり学んだりできる場所を設置し、子どもたちの心のケア支援を行っています。

ソーニャちゃん(10歳)の髪をとかす、母親のリュドミーラさん。ハルキウの地下鉄の車両で避難生活を送っている。

リュドミーラ・ヴォロシェンコさん(41歳)は、数千人が暮らすハルキウの地下鉄構内にある車両の中で、10歳になる娘ソーニャちゃんの髪を丁寧にとかしています。

「今日、お母さんと一緒に自宅に帰って、髪を洗って、必要なものを持って地下に戻って来ました。怖かったです」と、母親の腕に抱かれながら、ソーニャちゃんが語ります。

ウクライナでの紛争の激化により、学校は閉鎖され、子どもたちは日常生活を奪われています。

リュドミーラさんは「子どもたちと一緒に地下にずっと留まっているのは、とても大変なことです。子どもたちは外でローラースケートや自転車に乗りたがっています。友達にも会えず、寂しそうです」と話します。

子どもたちのための空間

©Khrystyna Pashkina
子どもたちのための空間で、子どもたちと一緒に体操をするボランティアのユリアさん。

ユニセフが支援する、地下鉄構内の子どもたちのための空間は、ボランティアの人々によって運営され、教師の資格や心理学などの専門知識を持った人々が活動しています。

ユリア・クルーラさん(41歳)は、ボランティアのひとりです。紛争が激化する前はフラワーデザイナーとして働いていました。また10年間の教師経験があることから、今回、ボランティアとして子どもたちと関わる活動に参加することに決めました。

「子どもたちは重度のストレスにより、不眠や、コントロールできない怒りに悩まされています。中には、心の病を抱える子もいます。

子どもたちの精神状態をすこしでも良くするために、この空間では、体操や深呼吸などで一緒に体を動かしています。少しの間でも戦争のことを考えずに、日常を感じてもらうためです」とユリアさんは話します。

ユニセフは、子どもたちの空間で用いるための、ノートや文房具、粘土、絵の具なども提供しています。

教育も日常も奪われる子どもたち

「29ある地下鉄の駅では、赤ちゃんから15歳の子どもまで、約1,500人が暮らしています。子どものための遊び場や空間を設置し、文房具やおもちゃを手に入れるための資金を提供したり、ボランティアの活動を支援してくれたりしたのはユニセフでした」と語るのは、ハルキウの地下鉄の駅にある避難所で、子どもたちのための空間の運営に携わり、子どもたちのためにさまざまなアクティビティを提供しているマリーナ・レディジェンスカさん(48歳)です。

©Khrystyna Pashkina
ユニセフ支援の学用品を使って学習する子どもたち。

過去1カ月の間で、我慢できずに外に出てしまった子どももいましたが、多くの子どもたちは外に出ることを怖がっていたと、マリーナさんは言います。「重要な問題は、社会的な繋がりが絶たれてしまっていることと、学校が閉鎖されて子どもたちが教育を受けられていないことです」

©Khrystyna Pashkina
子どもたちの空間で、数学の授業を受けるバディムさん(14歳)

バディムさん(14歳)は、通っていた学校が爆撃され、窓ガラスも全部割れたといいます。今は、母親と一緒に地下鉄で暮らしています。

「寒い時もあるけど、大丈夫です」とバディムさんは話します。「ここでの授業は、学校とは違います。学校の授業だと30人も生徒がいて、先生の説明を理解できる子もできない子もいます。ここだと、先生が個別に解説してくれるし、質問をすることだって怖くありません」

子どもたちの空間では、教師や心理士だけでなく、スポーツやダンスの指導者など、様々な専門性をもったボランティアの人々が、経験を活かして活動しています。

「さまざまな形で子どもたちの教育に関わってきた人々が、今ここで、子どもや若者のためにボランティアとして活動しています」とマリーナさんは誇らしげに語ります。

子どもたちと若者に、長期的な支援を

©Khrystyna Pashkina
地下鉄駅構内の階段に、アートの授業で子どもたちが描いた絵を飾るボランティア。

ソーニャちゃんのような子どもたちにとって、ここでの授業は、この後の人生にも影響を与えていくでしょう。けれども、子どもたちが失った大切なものに代わることはできません。それは、帰る家です。

「1日に2つの授業があります。算数か国語のどちらかと、音楽です。ここでたくさんの友達ができました。でも、家に帰って、安心して過ごせる日を、今も夢みています」とソーニャちゃんは語ります。

戦争が激化してから1カ月以上が経過し、ウクライナで暮らす数百万人、特に子どもや厳しい状況に置かれている人々が深刻な被害を受けています。これまでに430万人の子どもが自宅からの避難を余儀なくされ、安全と保護を切実に必要としています。

爆撃や空爆が激化する中、ユニセフ・ウクライナ事務所は、戦争の影響を受けている人々の精神面の問題に対処し、心理社会的支援を促進するため、ウクライナ国内のNGOや青年団体と連携しています。

これまで4,500人以上の子どもや若者が、ハルキウの地下鉄の駅で、こうした活動に参加しています。ユニセフとパートナーは、約500人のボランティア、教育・心理学の専門家とともに、避難を余儀なくされている子どもや若者、その家族を支援していきます。

ユニセフ青少年支援担当官のリリヤ・リュボムドロワは「ユニセフの目標は、水や食料、衛生など、子どもたちの基本的なニーズに応えるだけでなく、教育機会や心理社会的支援を提供することです。特に子どもたちにとって、困難な状況への対処法を身につけ、回復する力を持ち、トラウマに対応することは非常に重要です。とても長い道のりですが、今も、そして戦争が終わってからも、子どもたちが回復しようとする力を支えることが、鍵となるのです」と述べました。

 

■ユニセフ「ウクライナ緊急募金」ご協力のお願い

8年にわたって続く東部地域の紛争や、昨今の武力行為の激化の影響を受けるウクライナの子どもたちのために、ユニセフは緊急支援を行っています。その活動を支えるため、日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ウクライナ緊急募金」を受け付けております。

水や電気を絶たれたり教育の機会を奪われたり、避難を余儀なくされるなど、紛争による直接的・間接的な影響を受ける子どもたちをはじめ、最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。

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