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日本ユニセフ協会

人道危機緊急募金情報

レバノン
危機がもたらす剥奪、喪失、親への失望 ユニセフ報告書

2022年8月25日ベイルート(レバノン)

3年間におよぶレバノンの壊滅的な危機は、子どもたちを貧困に陥れ、健康、福祉、教育に影響を与え、彼らの希望を打ち砕き、家族関係を崩壊させました。

ユニセフ(国連児童基金)の報告書によると、健康、教育、保護、遊び、レクリエーションといった子どもの基本的権利の実現に向けた進展の多くが、経済危機と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響により損なわれています。

急激な物価上昇と失業の広がりにより、何千もの家庭が多次元的貧困(さまざまな困窮を考慮に入れた概念)に陥り、子どもたちの基本的ニーズを満たす能力に深刻な影響を及ぼしています。

移住が唯一の希望

家族の生計を助けるために、夏休みの間、働くことを決めた13歳のバハーさん。(レバノン、2022年8月13日撮影)

© UNICEF/UN0693130/UNICEF Lebanon
家族の生計を助けるために、働くことを決めた13歳のバハーさん。(レバノン、2022年8月13日撮影)

本報告書は、子どもの貧困に関するユニセフの調査と、子どもに焦点を当てた迅速な評価(CFRA)に基づいており、子どもたちが、危機が自分たちの生活や国に与えている影響を強く感じていることを示しています。多くの子どもたちが、レバノンでのより良い未来を夢見ることはなくなり、移住を唯一の希望と考えるようになりました。

いくつもの剥奪状態、経済危機の過酷な影響に長期間さらされ、そして希望を失っていることが重なり、子どもたちのメンタルヘルスに深刻な影響を与えていますが、ほとんどの場合、必要なケアを受けられないでいます。同時に、子どもたちは基本的なニーズを満たせない親に失望し、親への信頼を失い、そのことが家庭内の緊張を高めています。レバノンでは、子どもが働きに出ることが増え、おとなが失業することで、従来の親子関係が崩壊しつつあるのです。

緊張の高まりは、コミュニティ同士やコミュニティ内の格差の広がりによってさらに助長され、家庭や学校などでの暴力の増加につながっています。そのため、多くの通りや地域が安全でなくなり、子どもたちの遊ぶ権利がさらに制限されることになります。最も影響を受けているのは女の子で、嫌がらせを恐れて家から出ることを制限されることが増えています。

子どもの未来を守る改革必要

路上に座る2歳のユーセフちゃん。(レバノン、2021年10月撮影)

© UNICEF/UN0553713/Choufany
路上に座る2歳のユーセフちゃん。(レバノン、2021年10月撮影)

「危機は、子どもたちの生活のあらゆる側面に影響を及ぼしています。子どもたちは十分な食料もなく、保健ケアを適切に受けられないまま成長し、場合によっては家族を支えるために働かなければなりません」と、ユニセフ・レバノン代表のエドゥアルド・ベイグベデルは述べました。「子どもたちの未来を守るために、重大な改革が必要です。政府は、緊急の社会的保護策を実施し、すべての子どもが質の高い教育を受けられるようにし、プライマリ・ヘルス・ケアと子どもの保護サービスを強化する必要があります」

ユニセフは、移動式診療所を通じて、15,800人の子どもを含む52,000人に総合的な保健・栄養サービスを提供してきました。加えて、4,800人の5歳未満の子どもたちが、中度または重度の急性栄養不良の治療を受けています。

CFRAの調査結果では、以下のことがわかりました。

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