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日本ユニセフ協会

ウクライナ緊急募金

ウクライナ緊急支援
キーウ出身のユニセフ広報官
避難する家族の痛みに寄り添い、世界に伝える

2022年12月16日ルーマニア/ウクライナ

今年2月、ウクライナで戦闘が激化し、今なお緊迫した状況は続いています。支援を必要としている子どもの数は、ウクライナ国内で330万人、避難先の難民受け入れ国で約390万人となり、計720万人にのぼっています。家族との平穏な日常や、友達との学校生活が奪われ、不安な毎日を過ごす中で、心身ともに影響を受けています。

キーウ出身のユニセフ広報官

ルーマニア・シゲトゥの、ウクライナ国境地点で、活動をするユニセフ広報官のリア・ユロバさん(ルーマニア、2021年3月21日撮影)

©UNICEF/UN0627628/Nicodim
ルーマニア・シゲトゥの、ウクライナ国境地点で活動をする、ユニセフ広報官のユリア・ユロバさん(ルーマニア、2022年3月21日撮影)

ユニセフは、子どもたちと家族のための緊急支援活動を、ウクライナ国内および周辺国で継続しています。その活動を担う一人が、ウクライナの首都キーウ出身でユニセフ広報官のユリア・ユロバさんです。2月にウクライナで戦闘が激化したとき、ユリアさんは勤務地のスイスで暮らしていましたが、いても立ってもいられず、ウクライナ緊急支援への派遣の希望を出しました。そして2週間後、ルーマニアとウクライナとの国境沿いに派遣されたのです。

ユリアさんは、ウクライナとルーマニアとの国境で、避難してきた子どもたちと家族に寄り添い、彼らが経験してきた悲惨な状況を世界に伝える、という強い使命感を持って活動しています。3本の映像とストーリーを通じて、ウクライナ緊急支援活動に携わるユリアさんの思いをお伝えします。

 

【動画Part.1】ウクライナの子どもと母親たちの経験を世界に伝える、ユリア・ユロバさん

 

ウクライナから避難してきた子どもたちや家族のためのユニセフの支援拠点「ブルードット」で、ユニセフのユリア・ユロバ広報官と話しながら絵を描く、6歳のエヴァちゃん。(ルーマニア、2021年3月13日撮影)

©UNICEF/UN0624672/Holerga
ウクライナから避難してきた子どもたちや家族のためのユニセフの支援拠点「ブルードット」で、ユリアさんと話しながら絵を描く、6歳のエヴァちゃん。(ルーマニア、2022年3月13日撮影)

ウクライナと国境を接する、ルーマニア北部のシゲトゥに、「ブルードット」と呼ばれる、ウクライナの子どもたちと家族のための、ユニセフの支援拠点があります。

今年3月、ユニセフ広報官のユリア・ユロバさんは、この支援拠点に派遣されました。ウクライナから避難してきた子どもたちを笑顔で迎え入れる一方、人々が避難してくる緊迫した状況を世界に伝えるため、インタビューをおこなったり、メディア中継をつないだりと、昼夜問わず広報活動に奔走しています。シゲトゥは、ルーマニアの主要な交通路の一つで、同国で初めてブルードットが設置された場所です。

ユリアさんがスイスからウクライナ国境沿いに派遣されることを聞いたユリアさんの父親は、ユリアさんにこう言ったといいます。

「やるべきことをやりなさい。一番役に立つ場所に行きなさい。でも国境を越えて戻らないように…。自分を危険にさらすようなことはしないと約束してほしい」

ユリアさんは「そう父と約束しました」と振り返ります。

国境での活動、ウクライナへの思い

「国境での活動は、ウクライナ出身の私にとって、とてもつらいこともあります」とユリアさんは言います。「ウクライナから避難してきた母親と子どもたちの、苦しみや絶望を目の当たりするからです。自分の国が直面していることを理解しているからこそ、時にとても感情的になり、平静を保つのが難しいです」と正直に打ち明けます。

「けれど同時に、私はユニセフのスタッフとして、ユニセフが現場で子どもたちや家族に支援を届けている様子を目の当たりにして、誇りを感じています。私たちが提供している支援は、本当に必要とされている支援なのです」とユリアさんは力強く語ります。

ユリアさんが、紛争の現場で働くのは今回が初めてではありません。2014年に紛争が勃発したウクライナ東部で、爆撃の危険がある前線近くにも派遣されていました。その8年後、状況がより深刻で危機が大規模になってしまったことを、ユリアさんは「悲劇のデジャヴ」と言います。

ブルードットで、支援と安心を

ユニセフの広報官として、ユリアさんは様々なインタビューに対応したり、世界中のメディアと中継をつないだりと、せわしなく動き回っていますが、時間が許す限り、また時には何よりも優先して子どもたちと向き合います。遊びたがっている子どもたちとシャボン玉を吹いたり、幼い兄弟が鼻をかむのを助けてあげたり、子どもたちのことを注意深く観察し、何かできることはないかと気にかけています。

ウクライナから国境を越えてきて、ブルードットにある「子どもにやさしい空間」に来た幼い子どもたちは、様々な反応を示します。殻に閉じこもってしまう子ども、涙を流す子ども、目を見開く子どもいます。そしてほとんどの子どもたちは、最初は言葉を発しようとしません。

ユリアさんは、不安な中にある子どもと母親たちを、専用のテントに迎え入れ、子どもたちには「テーブルに座って一緒に絵を描こう」とやさしく語りかけます。すると子どもたちは、最初は恥ずかしそうに、でもだんだん慣れて来ると、自己紹介をしてくれます。そして、一緒にぬり絵を始めると、他の子どもたちも加わってきます。やがてテントの中は、子どもたちがそれぞれ自分の描いた絵について話す、おしゃべりの声で包まれます。

そしてユリアさんは、ブルードットを訪れた母親にも声をかけて、話を聞きます。国境を越えてきて、険しい表情を浮かべ、疲れている母親たちの重荷を少しでも軽くできるよう、母親たちが自分たちの身に起こったことを話すのをじっと聞きます。

【動画Part.2】「ウクライナの子どもたちの心の支えになりたい」ユリア・ユロバさん

「子どもたちとお母さんたちの話に耳を傾け、抱きしめ、なぐさめようとしています。この先も続く旅を前に、ここブルードットで少しでも気持ちが落ち着けるように…」(ユリアさん)

また、訪れている子どもが誕生日だと知ると、すぐに同僚に伝えて、即席でケーキを用意し、一緒に誕生日を祝います。困難な中であっても、子どもたちに少しでも良い記憶が残ってほしいと願っています。

ブルードットに立ち寄った家族が出発するとき、ユリアさんは同僚に声をかけて、みんなで荷物を運ぶのを手伝い、見送ります。ウクライナから避難してきた家族の持ち物は、スーツケースの場合もあれば、リュックサックだけの場合もあります。ある家族は、着の身着のままで避難してきて何も持っていませんでした。

家族が乗り込んだワゴンのドアが閉まると、ユリアさんは車の反対側に回り込み、車が走り去るまで子どもたちに手を振っています。子どもたちの姿が見えなくなると、ユリアさんの顔から笑顔は消え、安堵と悲しみが入り混じった表情になります。

つらい感情は見せず、常に前向きに

秋になり、ユリアさんの30年来の幼なじみの親友が、妹と幼い子どもたちと連れてウクライナ国外に避難するため、国境地点のシゲトゥを通過することになりました。とぎれとぎれしかつながらない携帯電話で、ユリアさんは親友と何日間も連絡を取り合い、数日後、親友がようやく国境を越えてやってくることができました。

ハグをした瞬間、二人の眼からたちまち涙がこぼれました。紛争下、国境という場所での悲しい再会となりました。でも、ユリアさんはすぐに気を取り直して、親友や子どもたちをブルードットに招き入れて、必要な手続きを手助けします。

「彼女たちが、このブルードットから出発するまでの短い間、少しでもぬくもりを感じてもらえたら。私にできることは、ハグをして愛情を伝えることです」とユリアは切実に語ります。

親友が無事に出発するのを見送った後、ユリアさんはようやく、誰にも気兼ねすることなく、号泣することができました。これまで無意識のうちに我慢していた、張り詰めていた感情を開放することを、自分自身に許した瞬間でした。

【動画Part.3】戦争が終わり、平和なウクライナからライブ配信することを夢見て

ユリアさんは、ウクライナ緊急支援の現場に入ってから、起きている時間はすべて働く時間にあてているといっても過言ではないほど、奔走してきました。自分の家族や友達、知り合いが被災し、自分の国で起きている危機に対応するというのは、より感情的となりやすく苦しい一方で、休んではいられないという思いで信じられないほどの力が湧いてくる、とユリアさんは言います。

夢は、ウクライナから・・・

2022年10月、状況が少し安定して、ユリアさんはウクライナのキーウに戻ってくることができました。ずっと会えていなかった家族と再会し、祖父や愛犬と一緒に、以前のような平和な時間を過ごしました。

しかしその次の日、キーウやその他の複数の都市に、激しい爆撃がありました。危機は今も続いているのです。

ウクライナのキエフにあるスピルノ・チャイルド・スポットで母親と話すユリアさん(ウクライナ、2022年10月12日撮影)

© UNICEF/UN0721374/Latayko
ウクライナのキーウにあるスピルノ・チャイルド・スポットで母親と話すユリアさん(ウクライナ、2022年10月12日撮影)

それでもユリアさんは、ウクライナの人たちが、希望を失わず、平和になる日まで励まし合っている姿に励まされています。そしてこれまでに支援をした子どもたちのことを思い浮かべながら、「あの子どもたち一人ひとりが、私の心の一部になっていると思う」と言います。「私たちと一緒にブルードットで遊んだ、あのささやかで温かな時間を覚えていてくれたらいいなと思います」。

そして、ユリアさんには夢があります。

ウクライナにユニセフが設置している「スピルノ・チャイルド・スポット」(子どもたちに心のケアや学習支援を提供する支援拠点)から、これまでウクライナの人たちを支えてくださった世界中の方々に向けて、ライブ配信を行うことです。

そのライブ配信は、次の言葉で始めたいのだと、ユリアさんは笑顔で語ります。

『戦争は終わりました。平和なウクライナから、おはようございます』

その日が訪れるまで、ユリアさんは、自分が必要とされる場所で、活動を続けたいと考えています。子どもたちと家族に寄り添い、彼らが経験してきた悲惨な状況を世界に伝えながら…。


ユニセフ「ウクライナ緊急募金」

ウクライナの子どもたちと家族へのユニセフ人道支援のための、ユニセフ「ウクライナ緊急募金」へ、皆さまから多くのあたたかいご支援をいただいております。改めまして、深く感謝申し上げます。

暖かい衣類、靴、毛布、おもちゃが入った、ユニセフの子ども用冬物キットを受け取った母親のカテリーナさんが、生後10カ月のボーダンちゃんに着せています。(ウクライナ、2022年10月9日撮影)

© UNICEF/UN0720470/Vostrikov
暖かい衣類、靴、毛布、おもちゃが入った、ユニセフの子ども用冬服キットを受け取った母親のカテリーナさんが、生後10カ月のボーダンちゃんに着せています。(ウクライナ、2022年10月9日撮影)

紛争激化から10カ月、今なお、収束は見えていません。厳しい冬に加え、インフラ施設が爆撃されるなどで引き起こされたエネルギー危機および社会経済危機によって、子どもたちと家族の生活は壊滅的な打撃も与えています。

困難な状況が続く中、ユニセフは、ウクライナ国内および難民を受け入れている周辺各国で、避難場所や衣服、食料、医薬品の提供、教育や心のケア支援など、子どもたちや困窮する家族のための幅広い支援を継続して届けています。

2月の戦闘激化以来これまでに、ユニセフがウクライナ緊急支援として行った活動の一例は以下の通りです。

ウクライナ危機にある子どもたちや家族のためのユニセフの活動は、皆さまからのご支援に支えられております。引き続き、ご関心とご協力をお寄せいただけますよう、お願い申し上げます。