2023年6月20日ヘルソン(ウクライナ)発
ウクライナ南部ヘルソン州のダム決壊に伴い発生した洪水は、すでに多くのことを経験してきた子どもたちにさらなる困難をもたらしています。多くの家屋が洪水によって破壊され、安全な水や電気へのアクセスにも重大な影響が生じています。
二度目の避難を強いられた家族
ウクライナ南部ヘルソン州に住む9歳のポリーナは、幼いながらこれまでに2度、家からの避難を強いられました。
最初の避難は、2022年にウクライナで本格的な戦闘が始まったとき。ヘルソンで暮らしていたポリーナの家族は、町から逃げ出さなければならなくなりました。そして今月上旬、ダム決壊によって発生した壊滅的な洪水で、再び避難を余儀なくされました。
オデーサ行きの列車に乗るためにミコライウ駅にやってきたポリーナと家族は、ユニセフの支援拠点スピルノ・チャイルドスポットに立ち寄りました。ポリーナは絵を描くことに熱中し、母親のインナさん(33歳)はこれからの避難生活に必要な支援物資を受け取りました。
インナさんは、生後4カ月の娘カテリーナをベビーカーで優しく揺らしながら、「ポリーナと私は、去年も、スーツケース2個だけをもって、別の町に避難しました」と振り返ります。「そして支援を受けながら、新しい生活を一から始めました。そしてまた厳しい状況に直面していますが、その中で唯一安心したことは、再び、助けてもらえるということです。」
インナさんと家族は、戦闘後に避難していた西部リヴィウに1年近く住んでいましたが、つい最近、再びヘルソンに戻ってきていました。爆撃が激しくなりませんように、と願いながら。
「ポリーナと私がリヴィウに避難したとき、ユニセフからの支援で、冬服が届きました。リヴィウで避難生活をしている間に、次女が生まれました。そして今、洪水の被害に見舞われ、私たちは再び家から避難し、助けを求めなければなりません」。
一家が住んでいたヘルソンのアパートは、現在、一部が浸水しています。電気、水道、ガス、すべてが止まっています。そんな状況の中で、赤ちゃんを連れて暮らすことはできない、と母親のインナさんは言います。「水は引きつつありますが、爆撃は続いていますから。」
被災した家族のためのユニセフの支援
ダム決壊による洪水被害の対応として、ユニセフは、他の機関やウクライナ政府と連携し、子どもたちと家族に人道支援を提供しています。安全な水や衛生用品、浄水タブレット等の提供のほか、ヘルソン、ミコライウ、オデーサなどの鉄道駅において、家族への支援拠点となるスピルノ・チャイルドスポットを設置し、子どもの心のケアなどを行っています。
ミコライウに派遣されているユニセフ支援チームに所属するボランティアの一人、オレシャさんは、インナさんが衛生用品の入った箱を開けるのを手伝っています。支援チームには、心理学の専門家、ソーシャルワーカー、弁護士、教師などが参加しています。
「私たちのチームは毎日、ミコライウとオデーサの鉄道の駅で活動しています」とオレシャさんは説明します。
「避難してきた家族のために、経済的支援の申請手続きをサポートし、さまざまな相談にのり、懐中電灯や水、赤ちゃんの衛生用品を入れたリュックなど旅先で役立つ支援物資を手渡します。洪水の発生で、人々は非常に混乱しており、助けを必要としています。」
そして、戦争と洪水の経験は、幼いポリーナの心境にも大きな影響を与えています。
「洪水で死んでしまったたくさんの動物たちのことを思うと、悲しくなりました。昔は、モデルになることが夢だったけど、今はボランティアになると決めてるの。困っている動物たちを助けたいんです」とポリーナは静かに言います。