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日本ユニセフ協会

ガザ人道危機 緊急募金

「ガザの人道的状況は崩壊寸前」
訪問終え、ユニセフ事務局次長声明発表

2024年1月18日ガザ/ニューヨーク

ユニセフ(国連児童基金)事務局次長のテッド・チャイバンは3日間のガザ地区訪問を終え、現地の状況について以下の声明を発表しました。

* * *

壊滅状態から崩壊寸前へと状態悪化

友達と遊んでる時に爆撃に巻き込まれ、腹部を負傷しハンユニスのアル・ナセル病院で治療を受けた11歳のサマさん。感染症にかからないよう、術後は隔離された病室で入院している。(ガザ地区、2024年1月17日撮影)

© UNICEF/UNI504813/Ingram
友達と遊んでる時に爆撃に巻き込まれ、腹部を負傷しハンユニスのアル・ナセル病院で治療を受けた11歳のサマさん。感染症にかからないよう、術後は隔離された病室で入院している。(ガザ地区、2024年1月17日撮影)

私は3日間のガザ地区訪問を終えたところです。滞在中、緊急対応について地元の団体や各国際機関と調整し、2カ月前の訪問以降の人道支援活動の状況を把握することができました。しかし何よりも、私がこれまでに見たこともないような恐ろしい状況にあえいでいる子どもやその家族と対面することができました。

前回の訪問以来、状況は壊滅状態から崩壊寸前へと悪化しています。ユニセフは、ガザ地区を、「子どもにとって世界で最も危険な場所」と表現しました。私たちは、「これは子どもに対する戦争だ」と言ってきました。しかし、こうした真実は伝わっていないようです。敵対行為の激化以来、ガザ地区で犠牲となったとされている約2万5,000人のうち、女性と子どもが最大で70%を占めていると報告されています。子どもが犠牲になることは直ちに止めなければなりません。

火曜日に、私はハンユニスのアル・ナセル病院で、サマという11歳の女の子に会いました。彼女と友だちは縄跳びをして遊んでいた時に、砲弾の破片に当たりました。破片は腹部を貫通し、サマは脾臓を摘出する手術を余儀なくされました。病気や感染源だらけの交戦地帯で免疫不全に陥った彼女は、周囲から隔離されながら病院でひとり、療養中です。

サマと会った10分後、13歳のイブラヒムに会いました。イブラヒムは家族と一緒に安全だとされる地区の指定避難所にいたところ、周囲のすべてが崩壊する事態に巻き込まれました。イブラヒムは手にひどい傷を負い、傷はすぐに化膿しました。薬もなく、壊疽が進行し、ついには麻酔なしで腕を切断せざるを得ませんでした。南部のアル・ナセル病院でイブラヒムが救命治療を受けるのに付き添っていた母親のアマニは、ガザ市北部に留まっている他の6人の子どもと夫に連絡が取れるよう助けを求めていました。彼らとは2カ月間音信不通です。

そして私たちがアル・ナセル病院から出発した数時間後に、戦闘が迫り、多くの家族が病院を出て避難した、と聞きました。

190万人以上、避難生活強いられる

ナセル病院の新生児集中治療室(NICU)にいる新生児を見守る、ユニセフ事務局次長のテッド・チャイバン。生まれつき心臓に病気があるが、ガザにはこの病気に対する専門医がおらず、治療も受けられない状態である。(ガザ地区、2024年1月17日撮影)

© UNICEF/UNI504812/Ingram
アル・ナセル病院の新生児集中治療室(NICU)にいる新生児を見守る、ユニセフ事務局次長のテッド・チャイバン。生まれつき心臓に病気があるが、ガザにはこの病気に対する専門医がおらず、治療も受けられない状態である。(ガザ地区、2024年1月17日撮影)

ガザの人口のほぼ85%に当たる190万人以上が避難生活を余儀なくされており、中には何度も退避させられている人もいます。そのうちの100万人以上がラファに逃げ込み、その結果、にわか作りの避難所や避難場所が乱立し、小さな町はほぼその姿をとどめていません。

国境付近にどれほど多くの民間人がいるのか把握は難しく、また彼らの生活環境は非人道的です。水は不足し、劣悪な衛生環境は避けようがありません。今週の寒さと雨で、汚水の川ができました。手に入るわずかな食料では、子どもたち特有の栄養ニーズを満たせません。その結果、何千人もの子どもが栄養不良や病気に陥っています。

下痢症の症例は、2カ月前には敵対行為の激化以前と比べて40%増加していました。先月の中旬までには5歳未満の子どもの間で7万1,000件の症例が報告され、戦闘が始まって以来、4,000%以上も増加しています。

これは、まさにガザの子どもたちを取り巻く環境が驚異的に悪化していることを示しています。このまま状況の悪化が続けば、無差別の戦闘による死者に輪を掛けて、病気や飢餓による死者が増える事態となります。大きな転換が必要です。

支援物資を届けるために

避難所で、水を汲むために水タンクを並べて待つ人たち。(ガザ地区、2024年1月11日撮影)

© UNICEF/UNI501963/ alBaba
避難所で、水を汲むために水タンクを並べて待つ人たち。(ガザ地区、2024年1月11日撮影)

第一に、何千人もの命を奪うだけでなく、生存者に支援物資を届ける妨げにもなっている激しい爆撃を止めることです。より多くのトラックを、より多くの検問所を通じて、はるかに効率的な検査手続きでガザ地区に入れなければなりません。戦闘前は、毎日500台以上のトラックが入っていました。11月に私がガザ地区にいた時には、支援物資を積んだトラックが1日に約60台入っていました。今では、1日平均30台の市販用物資を積んだトラックと並んで、1日130台ほどです。増えた背景は2つ目の検問所の利用が再開されたことによるものですが、それでも全く足りません。私たちは、干上がった大海にストローで滴を落とすような支援しかできていないのです。

また、搬入できる支援物資の種類に対する制限が緩和されるべきです。例えば、給水ポンプ用の発電機や、水道施設を修理するためのパイプなどは、人々の生存に不可欠な水と衛生サービスを回復するために不可欠なものです。

ひとたび支援物資がガザ地区に入ると、今度はそれを配布することが生死を分かつ問題となります。何日も支援なしに過ごしている人々が切実に必要としている物資を受け取れるようにするためには、アクセス制限を解き、信頼性の高い通信手段を確保し、人道支援物資の移動を促進することが不可欠です。そして、市場を再開させ家族が支援物資だけに頼らずに済むように、ガザで商用車の往来を回復させなければなりません。

北部へのアクセス必要

アル・アクサ大学内にある避難所で生活する子どもたち。(ガザ地区、2024年1月11日撮影)

© UNICEF/UNI501959/ alBaba
アル・アクサ大学内にある避難所で生活する子どもたち。(ガザ地区、2024年1月11日撮影)

最後に、北部へのアクセスが必要です。ガザ北部に暮らす推定25万人から30万人の人々は、きれいな水を手に入れることができず、食料もほとんどありません。1月に入ってからの2週間で、ガザ北部の目的地に支援物資が無事に到達したのは、計画された29件のうちわずか7件でした。ユニセフの輸送車両隊は、2024年に入ってからは一度もガザ地区北部に到達できていません。

アクセスさえあれば、その場所で変化をもたらすことができます。私は、ユニセフが支援しているハンユニスの2つの淡水化プラントのうちの1つ、約25万人に水を供給しているプラントを訪れました。私たちが運んだ冬服を着ている子どもや、届いた衛生キットの石けんや衛生用品を使っている家族がいました。

子どもやその家族が毎日亡くなったり負傷したりする事態を終わらせ、切実に必要とされている支援を速やかに届け、ガザで人質となっているイスラエルの子ども2人を安全かつ無条件に解放するための人道的停戦を、これ以上待つことはできません。こんなことが続いていてはならないのです。

 

ユニセフ「ガザ人道危機 緊急募金」 ご協力のお願い

(公財)日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ガザ人道危機 緊急募金」を受付しています。最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ご協力をお願い申し上げます。

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