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日本ユニセフ協会
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世界の子どもたち

難民危機
ボートでギリシャに渡る子どもたち②
家族再会への苦難の旅

【2015年10月  レスボス島(ギリシャ)発】

2015年9月時点で、アフガニスタンやソマリア、南スーダン、スーダン、シリアの5カ国では、少なくとも450万人の子どもたちが紛争や情勢不安によって住居を追われ、2015年に入ってから50万人以上が地中海からヨーロッパへと渡っています。そして、この難民や移民の5人に1人が子どもたちです。

陸路や海路で移動を続ける難民の子どもたちには、紛争や避難による身体的、精神的な負担がのしかかっています。

家族と共にギリシャのレスボス島に辿り着いた子どもたちが、先の見えない長い旅の絶望や希望を語ります。

* * *

7歳の女の子、マラクちゃん

シリア難民のマラクちゃん。

© UNICEF/NYHQ2015-2506/Romenzi

レスボス島の難民一時受け入れ所で笑顔を見せるマラクちゃん(7歳)。

シリアの自宅から遥か遠く離れたレスボス島で、マラクちゃん(7歳)が白猫と遊びながら時間を過ごしていました。母親と共にトルコからの危険なボートの旅を終えてから1カ月間、欧州にやって来たシリア難民申請者が身を寄せる建物が、マラクちゃんの新しい家になっています。

8万5,000人ほどの住民が暮らしていたギリシャの美しい島、レスボス島の人口は、中東で何年にもわたって広がる難民危機の高まりを受け、急増しています。

「お母さんのことが心配」

マラクちゃんははじめ、「レスボス島への旅は簡単だったよ」と話していました。しかし、しばらくするとゴムボートでの旅の記憶が蘇り、マラクちゃんはお母さんと一緒に耐え抜いた旅の話を始めました。マラクちゃんは身体をこわばらせ、暗い声で話し始めました。そして、目を合わせるのを避けるかのように、まっすぐ下を向いていました。マラクちゃんは、定員が20人のボートに50人ほどの人が乗って出発したといいます。寒くて怖い旅でした。

「ボートは私の膝ぐらいまで水に浸かっていました。私は男の人の膝の上に座っていましたが、お母さんは背中を痛めているのでとても心配でした」と、マラクちゃんが自分の膝を指さしながら、静かに話しました。そして、記憶が正しかったことを確認したかのように小さくうなずくと、「ボートが途中で沈んでしまうかと思いました。私も海に沈んで、そのまま死んでしまうのだと思いました。お母さんのことが心配でした。お母さんは、私のことをとても心配していました」と話を続けました。

家族との再会

マラクちゃんの一番上のお兄さんは、既にドイツに入っています。家族の再会を望み、母親はギリシャに渡ることを決めたのです。

マラクちゃんと母親がギリシャに辿り着いた後、父親と残りの2人の姉妹が合流する予定でした。しかし、父親たちはレスボス島に辿り着くまで、7度も行く手を阻まれました。難民の手荷物を狙う、武装した強盗にボートが襲われたこともありました。ギリシャ政府の支援を得て、後に家族は再会を果たすことができました。

避難生活のもたらす負担

マラクちゃんが語るヨーロッパまでの旅は、シリアから始まり、トルコを通ってドイツに辿り着くというものです。そしてすべて移動は飛行機だと話します。レスボス島もゴムボートも、彼女の物語からは消えてなくなっています。

つらい出来事を忘れようとする決断は、マラクちゃんが新しい現実に適応しようとしている表れでもあります。

移動中はどこで寝泊まりしていたのかと尋ねると、マラクちゃんはただ笑い、「忘れてしまった」と言いました。きっとマラクちゃんも、ほとんどの難民と同じように、警察からもらった毛布で寒さをしのぎ、路上で眠っていたことでしょう。マラクちゃんは、4、5台のタクシーを止め、乗せてもらうように頼んだことを覚えています。でも、マラクちゃんを乗せてくれるタクシーは1台もいませんでした。ギリシャやレスボス島の公共交通機関はすべて、難民を乗せることが法律で禁止されているということは、幼いマラクちゃんには理解できないのかもしれません。

ドイツでの生活の望みやシリアでの生活の記憶を語るマラクちゃん。そのほとんどが、マラクちゃんの“日常”の、学校や友達の話です。しかしマラクちゃんのこの島での生活には、学校も友達も存在しないのです。

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ユニセフは欧州に向かって移動を続ける子どもたちが、どのような場所であろうとも適切な保護が受けられるようにするため、欧州連合の国々と密接に協力し、海上や陸地での捜索や救助活動の実施、必要不可欠なサービスへの適切なリソースの配分、子どもたちの最善の利益を考えた難民手続きを行うことを訴えています。また、子どもたちの拘束は最後の手段とすること、そして可能な限り短い期間とすることも求めています。

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