メニューをスキップ
財団法人日本ユニセフ協会
スライドショー

UNITE FOR CHILDREN UNITE AGAINST AIDS

ハイチ:欠くことが許されない医療支援

【2011年6月17日 ハイチ・ポルトープランス発】

© UNICEF video
コロディンさん(仮名、16歳)は、妊娠6ヵ月でHIV陽性。現在、ハイチの首都ポルトープランスの避難キャンプで、叔母と共に暮らしている。

クロディン(仮名)さんにとって、人生は複雑なものになりつつあります。妊娠6ヵ月でHIV陽性のコロディンさんは、現在、叔母と一緒に、避難キャンプに設置されたむき出しの地面の上に張られたテントでの生活を余儀なくされています。クロディンさんは、お腹の赤ちゃんの父親である恋人からHIVに感染。数ヶ月前、その恋人の元を離れました。

「銃を携帯して、犯罪を繰り返していました。殺人までしていたんです。だから、彼と別れました。」「母は、私が彼と一緒にいることを望んでいませんでした。」(クロディンさん)

クロディンさんは、身元が特定できないようにしてもらえれば、自身の体験を話してもかまわないといいます。クロディンさんのように、ハイチに暮らす多くのHIV陽性の人々が、差別や偏見を恐れています。クロディンさんの父親は、2010年1月にハイチで起こった大地震により命を落としました。また、自宅も倒壊。クロディンさんは、震災後、一度も学校に戻っていません。

こうした状況の中でも、明るい出来事もありました。ユニセフが支援している診療所で行った健診で、HIVの感染が早期に発見されたことです。「マルチサン地域診療所」と呼ばれているこの診療所は、地元のNGO、ハイチ家族開発基金(Haitian Family Development)の支援で運営されている、13ある施設のひとつです。

欠くことが許されない医療支援
© UNICEF video
ユニセフが支援しているハイチのポルトープランスの診療所では、無料で母親と子どもたちに、HIVに感染している妊婦のケアを含む保健サービスが提供されている。

2000年に開設されたマルチサン地域診療所は、妊産婦と子どもの保健に主眼を置いた保健サービスを提供しています。「この診療所は、私にHIVのための薬を無料でくれました。お陰で、私は元気でいられます。それに食事も配給してくれるんです」と、クロディンさんは話します。

この診療所は、2005年からユニセフの支援を受け、妊娠中、出産時、出産後のケアと家族計画の相談が実施されています。また、施設内には研究所と薬局も併設されています。ユニセフの支援によって、出産前ケアやカウンセリング、梅毒やHIVの検査を含むサービスが女性たちに提供されます。一方、栄養面でのサポートは、WFP(世界食糧計画)から提供されます。

ユニセフをはじめとする支援団体は、HIV/エイズが、いかなる緊急支援の現場でも取り組まなくてはならない問題の一つであると認識しています。そのような状況の中でも、乳児と子どもたちの新たなHIV感染の根絶を含むHIV/エイズのケア・サービスを維持することが重要なのです。2010年1月の震災発生以来、こうした女性たちへのサービスの提供も、ユニセフ・ハイチ事務所の最優先事項の一つです。

「ユニセフは、女性と子どもたちを支援し、特にHIV母子感染を防ぐため、ケアや治療を受けるためのアクセスを改善させ、こうした人々の苦しみを緩和するべく、パートナーと共に活動しています。」ユニセフのHIV/エイズ専門家のユッソウフ・スワドゴはこのように話します。

クロディンさんが治療を受けているこの診療所では、毎月500人もの妊婦に治療を行っています。この中には、HIV陽性ではない人も含まれています。この診療所で提供しているサービスは、全て無料です。

ユニセフは、妊産婦と乳幼児のHIVのケア・サービスを改善させるべく、医療従事者の技術を高めるための研修を実施するなどの形でも、この診療所の活動を支援しています。また、ユニセフの支援により、2010年から約60人のHIVと共に生きる妊婦が、抗レトロウィルス薬治療を受けました。

この地域診療所の外では、クロディンさんのような女性は、HIV/エイズに対する差別や偏見をはじめとする多くの困難に見舞われています。クロディンさんは、自分がHIVに感染していることを誰にも打ち明けていません。

全ての人が適切なケアを受けられるように

避難キャンプでの生活は、さらに問題を複雑にします。様々な危険が増加するだけでなく、こうした状況下で最も弱い立場にあるのは、女性と子どもたちなのです。

「もし私たちが何もしなければ、女性と子たちが、公平にケアや治療を受けることはできないでしょう。」「だからこそ、ユニセフは、パートナーと共に、避難キャンプでこうしたサービスを提供し、震災後の状況を少しでも改善させるべく活動しているのです。」

クロディンさんをはじめとする女性たちは、今後数年間は、困難な状況に置かれ続けることになると思われます。こうした女性とその子どもたちの健康と保健を守ることが、今取り組まなければならない緊急の課題のひとつなのです。

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る